第22話 最後の魔法

 1節 練習の成果



「もうよく使うような基本の魔法は全て覚えたから、今日の練習で合成属性ごうせいぞくせいの魔法を覚えたら練習は終わりにしよう」


「合成属性?」


「ああ。2種類以上の属性を組み合わせる属性だ。今回は風と水を使う氷を教える」


「よろしくお願いします」



 斜めにかけているベルトから、赤い炎の宝石を取り外し、青色の水属性と黄色の風属性の2つをめ込む。



 これでこのベルトは全て埋まりました。



 装着すると、今までとは違う感覚が全身に流れ込んだ。



 いつものように鏡で確認すると、左目が氷色、右目が青色のオッドアイとなっている。どちらも青系の色だが、はっきり違う色になっているのでしっかりオッドアイだとわかる。



「最後に覚える魔法は“アイススラッシュ”だ。これは今までの魔法と違って、攻撃魔法ではあるんだが、発動すると利き手に氷の剣が出現し、それで攻撃できるようになるというような魔法だ。使っている時は身体能力は大きく上がるが、その分体力の消耗は他より早いから気をつけろ」


「わかりました」


「……“アイススラッシュ”!」



 詠唱すると、右手に刃渡り80センチくらいの長い剣が出現した。見た目的には重そうだが全くそうは感じない。自由に振り回せる。



 ついでに見た目がめちゃくちゃカッコいい。剣身には綺麗な紋様が彫られていて、つばの近くには雪の結晶の形をした氷色の宝石が嵌められている。おまけに刃先は薄い氷で、奥が少し透けている。厨二心をくすぐられるデザインだ。



「か、カッコいい……」


「剣そのものの名前は“イーゼンスヴェート”だ」



 名前もカッコいいとか強すぎる。



「試しにスライムを召喚するから斬ってみろ」


「え!?はい……」



 すると私の数メートル先にウォータースライムが召喚された。



「ええい!」



 私は剣をふるい、冷気が降る氷の剣をスライムに命中させました。すると、スライムは切られた場所からたちまち凍っていき、パリンと砕けて消滅した。



「え、これすごいです」


「だろ?次は大きめのやつを複数種類出すから30分以内に全部倒せ」


「はい!」



 そう言い召喚されたのは、全て直径1.2メートルくらいのスライムで、氷、炎、水がそれぞれ4体ずつ召喚されました。




 2節 時雨VSスライム



 召喚されたのは氷、炎、水が4体ずつで合計12体。頑張ればいけなくもないと思います。まず、比較的倒しやすそうな炎スライムから。火に対して氷なので、有効だと思われます。



 魔法により上がったスタミナと瞬足を駆使し、一気に敵の近くへ詰めていきます。そして、氷点下の氷の剣で斬りつけます。



 すると、斬りつけた場所からものすごい白煙と蒸気の音が噴き出てきました。



 そして、魔法の氷の剣イーゼンスヴェートはまるで猪の巣の最奥にいたあの装甲猪の時のように、跳ね返されてしまいました。




 途中までは確かに斬れていました。でも、途中から跳ね返されて飛んでいってしまった。剣が手から離れることはないらしく、そのせいで私自身も2メートルほど飛ばされてしまいました。



「うぅ……」



 スライムがじりじりと近寄ってくる。すぐさま立ち上がり、さっきより魔力を込めて、全力でもう一度斬りかかる。



「スラッシュ!」



 敵は真っ二つに裂け、新たに小さな2つのスライムへと変わった。



「嘘!?」



 私はもう一度小さくなったスライムの片方に、他のスライムの攻撃を上がった身体能力でかわしながら斬りつける。



 すると今度は完全にいなくなった。どうやら3回斬りつけないと完全に倒すことはできないようだ。



 10分くらいかけて、息が上がりながら炎スライムを全て倒すことができた。



 次は水スライムだ。



「ええい!」



 今度は、斬りつけたところからどんどん凍っていき、分裂した2つのうち一つが氷スライムへ変わった。思いの外炎スライムよりは苦労しなかった。



 4体全て斬ったところで、小さくなった水スライムを片付ける。



「問題はこいつら……」



 氷スライムです。



 こいつらは氷属性なので、氷属性であるイーゼンスヴェートとはおそらく相性が悪いです。



 おまけに今はかなり体力を消耗しています。



 炎スライムの火の玉や、水スライムの水の刃などが20〜30秒に1回くらい飛んでくるのでそれを避けたり、走って敵の懐へ飛び込んだりするためです。



 とりあえず、一度斬り掛かってみる。



 魔力を強く込めると、つばにある氷の魔宝石が強く光り出す。その状態で、氷のスライムへ。






 キィン!!






 3節 ???




 バキッ




「え……?嘘だ……」



 一瞬何が起こったか理解できなかったが、数メートル先に落ちている氷の折れた剣を見て理解しました。



 氷の剣は、刀身の中央から先がまるでお菓子のようにあっさり折れてしまった。



 一応スライムの体にもヒビは入っているようですが、完全に貫通する前に折れてしまった。



 剣を見ると、切れた先はそれはそれで鋭く尖っていて、そこらへんの石くらいなら簡単に傷つけることができそうです。





 ……………………




「おのれえええぇぇぇぇえ!!」





 今まで出したことのないような大声を上げて、全力でヒビを入れたところへ剣を突き刺す。



 すると、コアに直撃したようで、一瞬でスライムは無くなってしまった。





「あはは……あははははは!!!」





 は俺の出せる最後の力を全て使い、固い氷のスライムを、力の限り折れた氷ノ魔剣イーゼンスヴェートで突き刺しまくった。



 どのスライムもあっという間に壊れていき、最後の1体を倒した。



 その頃にはもう、剣はボロボロとかのレベルを超えていた。



 剣身は元の3分の1ほどにまで折れ、残った剣身と氷の宝石も、装甲から引き抜く際に削れた綺麗な装飾は見る影も無くなっていた。



 もはや、その剣は故兵ゆえへいの持つ剣と比べ同等以下だった。



「アハハ………………久々に遊べたな……」



「……!なんでこんなタイミングで“あいつ”が……うっ!?」



 私は全てのスライムを倒した後、剣を放りその場に一番星を見つめながら倒れた。

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