第21話 この街ですること
1節 魔法見学から離れて
「どーする?」
「どうすると言われても」
「んー特になあ」
僕たち4人は、一旦時雨の練習の見学から離れて、何をするか考えていた。正直、クラーマーさんに勧められたから来たというだけで、特に何をしたくてこの街に来た、ということは無いからだ。とりあえず、ビレノートにいた時と同じように、色々なクエストをこなしてお金稼ぎをしながらこの世界を少しずつ知っていくことにしよう。
クエストの種類は本当に様々だ。
○属性の宝石をどれだけ集めてこいとか、こんな薬草を集めて欲しいといった採取するようなものや、この場所に集まっているモンスターを倒す協力者を募るといった戦闘クエストとかが多いが、店の手伝いをしてほしいとかみたいな街でやるクエストなんかもたくさんある。そんな、クエストを4人でこなし、時雨は魔法の特訓を受け、という生活は、いつの間にか1週間が過ぎていた。
2節 この街の暮らし
「もう大分慣れてきたなあ」
「だねぇ」
「いつぐらいまで留まる?この街に」
「どーしよっかねぇ」
正直、2週間くらい滞在してもいいような気もする。ランドルフさんがどれくらい魔法を教えたいのかわからないが、とりあえずはお金稼ぎをしていこう。何をするにもお金が足りないのだ。
武器を買いたい、食材を買いたい、宿に泊まりたい、そして何より、燃料を買いたい。燃料がないとあの車は動かなくなってしまう。燃料が無くて動く車があるのかと聞かれると微妙だが。
そんなことを話しながら、また次のクエストを受けて準備をする。
剣と鞘を背中に装備し、地図を持つ。地図を開くと、今まで通ってきた所が空白ではなく森や平原など環境を示すものや、地名が見れるようにになっている。ゲームの地図埋めのように行った場所が地図になるようだ。
あ、回復薬とかのいわゆる“ポーション”も買っておかないとだ。
時雨の教わっている魔法で治せると言っても限度があるし、何回も回復魔法を使っていては疲労してしまう。ああ、またお金を使う物が増えた。
「なんで異世界でも金に困らされないといけないんだ……」(朝凪
「しょうがないだろ物の売り買いには金が要るんだから」(矢矧
「働きたくない……」(朝凪
「わかる〜」(睦月
「それなぁ〜」(如月
「揃いも揃ってニートしようとしてやがる」(矢矧
「働かないで食う飯は美味いか?」(矢矧
「美味い!」(朝凪
「はぎちゃんとあさっちはなんでテンプレしてんの……」(如月
「いーじゃん別に」(朝凪
「ハイハイ行きますよー」(如月
「ちょっとぉ!?」(朝凪
「ほれ朝凪。早く行くぞ」(矢矧
「オイ当事者」(朝凪
「朝凪早くー」(睦月
「お前ら……」(朝凪
本当にあいつらとの会話は疲れる。いろんな意味で。でも嫌いかと言われたらそうでもないし、わざわざ関係を断ち切ろうとするほど仲が悪いわけではない。
ただただ本当に相手をするのが疲れる。
先輩との会話も、会って3ヶ月くらいしか経ってない後輩との会話すらも疲れる。
全体的に人付き合いが苦手なのかもしれない。
3節 魔法は個別の属性へ
今日からは、無属性ではない、ちゃんとした属性の魔法を練習し始める。ファイアボールなら火属性、サンダーなら雷属性、というように切り替えていくそうです。
それらの魔法は無属性よりも格段に難易度が上がるので、今まで習ったいくつかの魔法は全て1日で1種類の魔法というように覚えていくとのことで、その代わり攻撃力、防御力、回復力ともに全てより強力になるのでしっかり覚えます。
ベルトに嵌める宝石を、暗い灰色の無属性から紫色の雷属性へ付け替える。暗い色のものではなく、アメジストのような白混じりの明るい紫色です。そして、ランドルフさんに渡された手鏡を見ると、今まで灰色だった左目が紫色へ変わり、左目が紫で右目が赤のオッドアイへ変化しました。
やっぱりオッドアイというのはかっこいいです。
我ながら嫌っているはずの自分の容姿に少し魅入っていました。
それぞれ別の魔法を使うとなるとやはり前までの無属性に比べると格段に難しい。
力を手に
まるで、体の中で荒波が揺れているようだ。汗も出るし、肉体的にも精神的にも疲れる。
魔法服を着てなおこれなので、着なかったらどうなるかは想像もしたくない。練習が終わる頃には、もう完全に疲れ切って立っているのがやっとぐらいだ。
ランドルフさんの指導は、思っていた以上に辛い。それでも、魔法をもっと扱えるようになりたい。その想いで、私は練習を続ける。部活に似たような所もあるかもしれない。
4節 仕事と練習の後は夜ご飯
「おーみんなお疲れー」(朝凪
「お疲れ様。今日も色々と忙しかったね」(如月
「だね。時雨なんかそこのベンチに座ってからもうずっと寝たきりだよ」(睦月
「健康な人を病人みたいに言うなや」(朝凪
「でも本当に疲れたっぽい感じでさ、ベンチに座る前からフラフラしてたんだよ。しかも灰と赤じゃなくて紫と赤のオッドアイになってたし」(睦月
「まじかよすげぇなほんと」(朝凪
「とりあえずさ、宿屋には矢矧が運び込んどいて」(朝凪
「いやなんで俺?」(矢矧
「そりゃあ幼馴染だからだよ。幼馴染属性は強いぞ?」(朝凪
「わかるぞ朝凪。ラブコメにおいて幼馴染属性は最強」(睦月
「いや、ここはラブコメの世界じゃないし時雨と恋愛するつもりもないんだが?」(矢矧
「え〜矢矧と時雨の甘々恋模様見てみたかった〜」(睦月
「睦月に全面的に同意するわ。矢矧と時雨の恋愛見たい」(朝凪
「
『まあまあまあまあ』(睦月・朝凪
「とりあえずほら、時雨をお姫様抱っこしてさ、ね?」(睦月
「うわ睦月それ最高」(朝凪
「うるせぇなこいつら。とりあえず時雨運んだらそっちに合流するわ」(矢矧
「へーい」(朝凪
「
僕ら3人はいつも泊まっている宿の食堂的な所へ向かう。5人座れる席を取って、荷物を置いたら荷物番を交代で回しながらメニューを適当に選んでいく。場所の雰囲気的にはショッピングモールのフードコート的な感じだ。店は1つだが。ここの宿はビレノート最大の宿で、老若男女様々な大勢の人がいる。
3人選び終わったあたりで矢矧が戻ってきたので矢矧も料理を選んで、4人で先に食べ始めた。
そして全員食べ終わる頃、美味しいものに飢えた顔をした時雨が悲しげな様子で僕
らの席へやってきた。
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