第30話 最強の殺し屋クロは、特訓する

 「ほらーみなさん集まってくださいー!」


 教員の声が教室に響き渡る、今日は課外授業の説明だ。


 「では皆さんその以上の点から――」

 「何か気分のらねぇ~」


 レイは机に突っ伏して寝ていた。授業も終わり夜一人で寮の定食をスプーンでつつきながら何か不安でもぞもぞしていた。それは明らかにいつものレイではない様子だった。


 そして課外授業当日。


 「では皆さん船に乗って水上戦闘の教練に入ります」

 「ハジマッタ……」


 レイはエリスとミシェラの班でほかのメンバーは、フィスラントとフェリンとスミそして一人だけルイスだ。まぁ~いつものペアだしあいつは一人でも余裕だろう――うわぁ!。


 「やばい、船の上やばい、船の上やばい、やばい、やばい、やばい、うわ!」


 船が波で大きく揺れるそしてレイは一番頑丈そうな柱に抱き着く。やばいこれは……。


 「よぉ~エリス達!」

 「お、お前は!!」

 「ルイスさんではありませんか」


 ルイスは堂々と船の戦闘で腰に手を当て指を指している。


 「いまレイが戦い無理そうだから今のうち潰してやる!! みんな船に飛び移れ!!」

 『はい!!!』


 ルイスもその仲間たちも一斉に船に飛び移るそしてその振動でレイは足元を狂わせて水に落ちる。


 「ごぼごぼごぼごぼごぼごぼ……」


 レイは酸素を水の中でぶくぶくと吐きながら水の上に頭を出そうと頑張っているがそれはどんどん水の奥底に体が持っていかれていた。


 「ごぼごぼごぼごぼごぼ」


 もう無理かもしれないと思ったその時、たまたまレイを見たルイスが大声でレイがおぼれていることを周りに広がるように言った。そしてそれを見たエリスが躊躇なくすぐに池に飛び込んだ。


 「レイ助けに行く!!!」


 レイの体はその布面積が少ない女の人の体に密着させながら徐々に水面に体をあげて行った。


 で今、緑が綺麗に生い茂る芝生に正座をさせられているレイの姿がある。


 「だからレイはなんで泳げないことを黙っていたの!!」

 「はい……」

 「泳げないなら早く教えなさいよ!」

 「はい……」

 「あなたが言わなかったからみんなの郊外演習は終わりだよ!」

 「はい……」


 レイは全くその通りの事を言われて「はい」と言うしかなかった。


 「まぁ、その辺で勘弁したらどうなんだ?」

 「あなたは黙ってなさい!!」

 「はい……」


 仲裁に入ったルイスもエリスの睨みで「はい」と言うしかなかった。


 「でもエリスさんも誰よりも早く湖に飛び込んだよね?」

 「それは……」

 「エリスはレイの事がとても心配だったのでしょ?」

 「そ、それは……。もうそんなことは今どうでもいいのよ!!」

 「それって……」


 エリスは睨む。


 「レイ本当は泳げないんでしょ!」

 「いや、俺、俺、俺は……別に泳げないわけではないよ」

 「うそいえ!」

 「別に嘘じゃない! 泳ぐ必要が無いだけ!!」

 「ほんとのこと言って!」


 その責め質問にレイはとうとう泣き出してその場から去った。


 「あらら、エリスさんレイさんを泣かした」

 「え、私が悪いの?」


 エリス達はレイが泣いて逃げたのであろう場所へ向かった。そしてその夜レイは一人でいつもの定食を持って席で食べようとすると後ろからエリスが現れた。


 レイはそれを避けるように定食を持ってその場から立ち去る。エリスはレイの肩を捕まえるとレイは「俺に構わないで」としか言わない。


 「ちょっとレイ! まだいじけてるの?」

 「だってお前あれだろ、俺が泳げない事を馬鹿にするだろ?」

 「しないわよ」

 「する」

 「しない」

 「する」

 「はぁ~、じゃあ分かった私が、いや私たちがレイに泳ぎを教えるよ!」

 「いやだ」

 「ねぇ~みんなレイに泳ぎ教えるよね!」

 「いいよ! 私たちが手とり足とり全部教えてあ・げ・る」

 「別いいし」

 「またいじけて!」

 「おれいじけてない」

 「あのねレイ、私たちはできない事を笑うことはしないわよ」

 「そうだよレイさん。レイさんにもできないことあって私安心しました」


 ミシェラはレイに「安心した」の一言を伝えた。でも俺はその言葉を避けた絶対馬鹿にされるし、俺はそう見えてる……。


 「べつ泳げなくても困らんし」

 「水中任務の時はどうするのよ」

 「その時困るもん」

 「分かったわ、ミシェラとほかのみんな、レイが泳げるようになるまで一切の交流を禁止とする」

 「こればっかりは仕方ないね」

 「そうだな」


 そのエリスが言い放った突如の接触禁止令はかなり堪える。学園生活の運命が変わる。たった一人との接触禁止はまだ耐えれるがみんなが接触禁止になるとかなりキツイ。


 「わかったよ俺泳げるようになるよ」

 「ほんと?!?!?」

 「うん」


 みんなとしゃべりたい俺の心が今回の特訓に参加する事を決めた。でも俺は本当に泳ぎが苦手だ、どうしよう。これで泳げなければ一生会話してもらえない……。


 「『俺、泳げなければ一生会話してもらえないでしょ?』とか思っているんでしょ?」

 「なんでわかった? でも俺本当に苦手だよ?」

 「いいわよそんなの! 別に真剣に練習してくれてなお泳げなくてもここにいる皆は会話してくれるわよ」

 「そうなの?」

 『全然いいよ!!』


 そうして始まった泳ぎの特訓であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る