第31話 最強の殺し屋クロは、議会に参加する

 今日は表ギルドと裏ギルドの国際会議が開催される。今回は少しバチバチになりそうな予感がする。それは先日俺が殺したリゼルの件で討論が行われるかもしれない。結構だるい。


 「ねぇ~そうだね。最近結構物騒だよね」

 「ミシェラも気を付けなさいよ」

 「エリスさんもね」

 「みんな!! おつかれっち!! なんかいい話題があったよ!!」

 『なになに??』


 いつもの調子で元気よく近づいてきたフェリンはその話題を皆に教えた。


 「そうそうなの! あのクロ様が表ギルドの強者を殺した件で今回議会が行われるらしいよ。しかもその観覧チケットゲットしました!!」

 「まじかよ」

 「すご」

 「行きたい」


 そんな声がみんなからフェリンに向けて発せられる。そしてみんなは議会に向かうことになり、きれいに整列して椅子に座っている。


 一時すると奥から表ギルドの連中が出てきた。


 「では今回の議長をします。マルクスと言います。そして今登場した方々は表ギルド統括である【グリシオ】様です。そしてもう一人は表ギルド最強の人物【リュウ】様です」


 「よろしく」

 「よろしくお願いします」


 そして明らかに雰囲気が違うリュウよりもまた数倍ヤバイオーラを纏った人物が奥から出てきた。


 「そしてこちらは裏ギルド統括である【カシル】様です。そしてもう一人は裏ギルド最強の組織、六色光最強の存在の【クロ】様です」


 クロの登場で裏ギルドサイドの観覧席に座るものは全員ざわついた。クロ(レイ)はその様子を議会場から見ていたけど何も感じてはいなかった。今回はクロとしてこの議会に参加しているため素性を明かすことはできない。


 「では今回、裏ギルドのルール違反をしたであろうサード学園島の天武神アカデミアの表ギルドの関係性を話し合う」


 議長のマルクスのその合図で各々話始める。


 「まずこの世に殺し屋を作ってはいけない!」

 「理由は?」

 「まず犯罪者がいれば我ら表ギルドが対処すべきだ!」

 「でも表ギルドの相手は我ら裏ギルドだろ?」


 カシルはまっとうな事を言っている。だがその意見も表ギルドは反論してくる。


 「それは今、裏ギルドの存在があるから我らに仕事が来ないだけだ!」

 「そうですね、我らサイドとしてもかなり裏ギルドが目障りなんですね」


 隣にいる明らかに雰囲気が違う男リュウが話に割り込んでくる。だがうちのグリシオもかなりの場数を踏んでいるためその鋭い言葉は効かなかった。


 「それは表ギルドの実績や戦力が足りてないだけでしょう」


 表ギルドサイドの者はたった一人除いて全員がその煽りに反応した。周りからは裏が仕事を取るからなど仕事を渡してくれないだとか醜い言い訳が頭の奥に響く。そしたら意外な人物の一言でその言い訳が止まる。


 「うるさいぞ」


 まさかのリュウがこの言い訳の嵐を止める。表ギルドサイドの人間は全ての口が止まった。確かに相当実力が無いとこんなに従う事が出来ないため、この男はかなり強い。


 「確かにこの議論は裏ギルドに優勢が行くだが、それで我らの実力を見抜いたつもりでいるなよクロ!!」


 突然叫ぶリュウは、指を指してこちらに顔を向けた。それと同時にクロは重力魔術を使った。クロ(レイ)は表サイドの観覧席に顔を向けて一人一人目を合わせる。


 「俺は別に喧嘩をするために来たわけではないが向かうなら俺もいくぞ」


 誰もが分かった、クロの瞳が急に赤色になるのをみんなは見ていた。その瞬間観覧席にいた表サイドの連中は地面に苦しそうに倒れる。


 「俺は基本魔術は使わない。ただこれは依頼ではない、いくら証拠を残そうが関係ない。そうだろ密偵兵!」


 観覧席にいた一部の人間は重力魔術で一気に壁にぶつけられた。それは全身が陥没するほどに威力は強くゴゴゴゴゴと大きな音を立てて地面や壁にどんどん埋もれていく。


 何が起きたかそれを見ていたエリス達もあまり理解をしていなかった。そんなエリスにミシェラは優しく耳打ちで教えてあげた。


 「エリスさんエリスさん。私見えたのですけどあのリュウと言う人物が暗器を隠しもちクロ様に投げつけてそれをクロ様は見抜いてすぐさま重力魔術を使いその暗器を落とし、そのあとに表ギルドの密偵がいることを見抜きその者達も拘束したと言うことです」

 「あ……。なるほどね」


 理解していないだろう。だがミシェラが言った通りだ、この子はかなり動体視力が良いらしいな。


 「では議会の邪魔をした密偵兵とリュウを殺す。良いでしょカシル?」

 「許可しよう」

 「では死ね」


 一人ずつ体を壊していくクロは裏から見れば正義の鉄槌はたまた表から見たら悪魔の所業に過ぎなかった。そして最後のおかずであるリュウを見て不気味な笑みをこぼして攻撃を仕掛ける。


 ドォーン!と大きな音が鳴り響くとまさかのリュウはクロの発勁を受け止めていた。これにはクロもびっくりだがもう一撃残っている。


 「連撃発勁」


 これは流石のリュウも堪えたのだろう、リュウは壁に吹き飛びすぐさま立ち上がった。


 「分かりましたよ、我らは一回この場を引きます。なので楽しみにしていますよ。ふふふふふ」


 黒い煙に包まれて消えて行ったリュウとその統括はもうこの場にはいなかった。そして夜の女子会にて朝までクロの話題で持ちきりであったのさ。

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