十話 初めて、エルフが、スゴいと思った日


「同じだろうが。ゴムじゃ、戦ってるときに、切れて終わりだ。

 それに、コッチじゃ、作れないんだろ?」


「ないことは、ないけど。

 こんな、繊維みたいで、キレイなの、見たことないよ」


「じゃあ、却下だな」


 少し安心しているエリスの顔に、胸を、なで下ろすが。


「じゃあ、胸を支えているコレは?」


 ブラジャーカップの下乳を、支えている部分を、見せつけてくる。


「なぁ? もう、いい加減、下着から離れないか?」


「え~。ココに入ってるの、丈夫だよ?」


 型崩れさせない、日本企業、努力の成果だろう。


「そりゃ、ワイヤー入ってるからな」


 ちなみに、入っているモノと、入っていないモノがある。


「じゃあ、ワイヤーって言うの、使ったら良いじゃん」


 全然、良くないのである。



 こと、大自然に囲まれている。

 エルフさん達が、暮らしている、ココでは。


「金属加工、デキるのか?」


 細く、丈夫な繊維状の金属。


 最初から、そんな形の金属は、ありはしない。


 かなり、精度の高い、金属加工が求められてしまう。


「隣の領のドワーフの領分だね。お金が、かかっちゃう」


 強い剣を作るより、お高い、ことだろう。


「エルフが作れなきゃ、意味ないだろ」


「じゃあ、コレは? 私を縛ってもらう用に__」


 机の上に、赤い紐と、木製のムチが登場した。


「急に、ニッチな趣味を、押しつけんな!」


「え~。ヒモも、ムチも、エルフに作らせたら、一級品だよ!」


「自ら、キズつきに行って、どうする気だ!」


「痛いのはイヤだけど、愛情があるんでしょ?」


「ナニ、言ってんだ? マジで。もう、SMからも、離れろ!」


「でも、エルフロープは、昔から有名だよ?

 ほどけない結び方なら、みんな、お手の物なんだから」


「自ら、首を絞めていくスタイル、スゲェな、エルフ!」


「死ぬわけじゃないし?」


「笑えないからな?

 それにな、木をロープで繋いだら、自立できないだろうに」



 エリスは、ソコで、初めて言いよどむ。


「自立させる、必要って、あるの?」


「…え?」


「あ~、迷った~。人のこと、バカにしすぎ~」


「ロープで繋いだら、糸人形みたいになって。

 動かすだけに、ならないだろう」


「積み木みたいに、バランスとって、立てるでしょ? コレ。

 分かるよ、良く書けてるから」


 エリスが、言っていることは、正しいのだろう。


 だが、ソレは。


「川の石を、角で、積み上げていくような、もんだぞ?」


 自立が可能なら、物理的に、積み上げることは可能だ。


 だが、デキるなら。


 芸として、カネが稼げるレベルだ。


 そもそも、誰もがデキるような、難易度の積み木では、ない。


 トランプを、角で、縦に5段。


 積み立てられる、手元がなければ、不可能だ。


「デキるよ、それぐらい。子供だって、デキちゃうレベル」


「はぁ?」


「エルフが、ゴーレムの魔法が得意なのは、感覚的に動かし方が、分かるからだよ?」


 当然のことを、当然に話すエリスに。

 嘘を、ついている様子がない。


 エルフの手先の器用さを、なめるな。

 そういう、気概さえ感じる。


「物理的に、積み上げることが、デキるモノは。

 ナンでも、積み上げられる?」


「橒戸君が言ったのって、よく見る、子供の遊びだよ?」


「ハーフエルフでも?」


「人の血が強く出ても、魔法の扱いと、手先の器用さは、一緒だよ。

 二世だと、どっちかに、よっちゃうけど」


 おそらく、ココが。

 エルフが弱くても、立場を得られている理由なのだろう。


 ドワーフが、いるのなら。

 獣人、竜人なんて種族も、いるのかもしれない。


 身体能力が高いか、スキルをもつ種族と、純血エルフの子供は。

 親の特性、両方を、受け継ぐと言うことだ。


 身体能力の高く、魔法も使える。

 魔法騎士を量産しようと思えば、いくらでもデキてしまう。


 この部分を、生き残るカードに、しているからこそ。


 子作り問題が。

 死活問題と直結するように、統治されていると、考えるべきだ。


「この形を、ロープで繋いで、動かすと。

 負担は、どんなもんなんだ?」


「普通にゴーレムの魔法を使うより、すごく簡単だよ」


 エリスは、再度、ノートに書かれた絵を指さし。


「木製で、私達が背中に乗っているなら、手足を動かすのと一緒だよ」


 エリスは、自信満々に言い切った。


 エルフという名前は、ダテではない。


 イメージ通り、彼女たちは。


「初めて、エルフをスゴいと思ったぞ」


「私達、お肉も食べるからね」


「そうなのか?」


「森と共存してるのは、そうだけど。

 橒戸君の世界で言う、里山と、変わらないよ」


「木は伐採するし、山の幸、動物も、か」


「生きるために、とって食べる。

 でも、オカネのために、闇雲には取らない。

 森を食べ尽くさず、森と生きていく。

 ソレが、私達、エルフだもん」


「エロエルフの印象が、強すぎた。なんか、ごめんな」


「エロエルフは、誤解じゃないけど、そう言われると、嬉しいかな。

 橒戸君、聞きたいんだけどさ?」


「なんだよ?」


「ガード緩くて、バカっぽいと、男の人は、襲ってくれるんだよね?」


「いろんな意味で、失礼だからな、オマエ」


 一言で、多方面を、敵にまわす発言である。

 彼女たちには、自分を、自分で、傷つけに行かないとダメな、呪いにでも。

 かかっているのだろうか?


「エルフは、肉食系? だから、男の人を食べちゃうよ?」


「だから、隔離されてるって気づけ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る