第10話

「ちょっと、待って」


私は、急いで後を追いかける。


「おい、待つのにゃ!」


猫様も、私を追いかけて来る。


―――少し先。


「神社?」


道の先には、一軒の神社があった。


「そうね、でも、神聖な気は感じないわ。

感じるのは、ひとつの邪悪な気」

「誰だ?」

「っ!」


突然に強風が吹いた。


「天狗?」


空から、黒く大きな羽に、手には、先の鋭い羽団扇を持った、中学生位の男の子が、降りてきた。


「アイツにゃ!昔と、変わらない面をしてるにゃ」

「あの子が」


私は、刀の柄に手を掛ける。


「アンタね!そこの、猫に濡れ衣を着せたのは」

「どうだったかな?何せ、昔の事だからな!」


天狗は、そう言いながら、羽団扇を振り下ろした。


「きゃっ!」

「シロネ!」


私は、シロネを体で受け止めた。


「大丈夫?」

「えぇ、大丈夫だから、降ろして頂戴」

「うん」


私は、シロネを地面に降ろす。


「にゃ!」


次に、猫様が天狗に、飛びかかった。


「ふっ、遅い」


天狗は、軽々と猫様を避け、再び羽団扇を扇ぐ。


「にゃーん!」

「猫様ー!」


猫様は、風に飛ばされて、彼方に飛んで行ってしまった。


「次は、お前か?」

「そうだけど」


私は、鞘から刀を抜き構える。


「小娘が、直ぐに終わらせてやる。来い!」

「やああああぁー!」


私は刀を上に、振翳しながら、天狗に向かって走る。


「はっ!」


天狗は、さっきより、羽団扇を強く振る。


「っ!何!?」


風は、さっきの、広い範囲に送る感じとは違い、今回のは、圧縮した風や空気を一点に集中させる感じの風だ。

その風が、私の肩を掠めた。

肩の部分の布が切れてしまっている。

それに、軽く出血している。

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