14.水面は揺れる
今回魔女討伐の任務に割り当てられたのはわたしとベラさんともう一人、わたしの知らない隊員だった。
その人はベラさんの研ぎ澄まされた冷静さからくるそれとはまた違った落ち着いた雰囲気を纏っていた。
「あなたは初めてね。自己紹介は移動しながらするの。『
魔法が発動されると同時に地面から水の塊が現れ、見る間に獣の形へと変化していった。
「乗って、振り落とされないように」
「はい!」
「頼むわ」
わたし達が跨ると水でできているはずの獣は本物以上に素早く力強い足取りで駆け出した。
「私はオリゾナ・ターラ。固有魔法は"水操"。水を自由に変形させて使役できるの」
「わたしはアプリア・ブランカです。固有魔法は"鎖縛"。鎖を使うことであらゆる事象を縛ることができます」
「強力な魔法ね。私達が組まされた意図としては私が火を水で防ぎ、あなたとベラエスタで攻撃と拘束を狙うといったとこかしら。そしてとどめを刺すの」
とどめを……刺す。わたし達の手で、魔法で、殺す。
覚悟を決めたつもりで出てきたけれど、心の揺らぎが完全に止まったわけじゃない。
「あの、本当にヴルカさんを殺さなきゃいけないんですよね……」
「アズリア、もう個人的な感情を挟んどるような場合やない」
「すっ、すみませ」
「いいの」
謝ろうとしたわたしをオリゾナさんが制した。
「ベラエスタ、こういうときだからこそ情を完全に捨ててはいけないと思うの。情を消して攻撃を行うのは魔女と同じ。つらくとも、それを背負って私達は執行しなければならないの」
オリゾナさんの言葉を心の内で反芻する。そうだ、背負わなきゃいけないんだ。
「そう……そうやね、ウチも目を逸らしたかったんかもしれん。ウチが悪かった」
「いいの。私だってヴルカを手にかけたくはないの。………私もヴルカと組んだことがあった。そのときに聞いたの。ヴルカが非番のときでも被害者の経過観察のために各地を回ったり連絡を取ったりしてるって。とても立派な人だと思うの」
知らなかった。けど、なんだか知っているような気がした。
その温かさが、ヴルカさんだ。
「オリゾナさん」
「ん」
「ヴルカさんを止めてあげましょう。絶対に」
「………そうね」
決して揺るぎないわけではないけれど、今度は自分で、決意を湧かせた。
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