無花果の花

小余綾香

無花果の花

「しあわせよ。貴女がいるから」老母笑む 核崩壊の熱に焼かれる


幼き子「女房気取りする」意味を知らぬ幼き子の知るギルト


父の機嫌とるがおのれの役割と駆けでてわらい女房気取り


荒れるまま父は玄関くぐり入る「貴女がかわいくないから」の罪


ほんとうはわたしがけさなきゃいけないの いかり わたしをよけがちだから


手をつなぎ夜道を歩く親子四人 赤子に近い日々を知ってる


義父たすけ切り捨てられた婿だった父はE線 弾き手を選ぶ


あのアイス あの道 ぶらんこ膝の上 みんな知ってる、目が忘れない


婿を切る非情の人に視力なく彼は彼であらねばならなく


手柄たて祖母に呼ばれた六歳児、カネは ほんとはごほうびじゃない


がんばろう がんばらなくちゃ G線であらねば。歌うパートはアルト


低音はかわいくないね わかってる 赤い血液なぜ疎まれる


姑の孫と呼ばれた子の旬に「私の子だから」無花果の花


「本当はいい子」がなぐる「きたない子」無花果あまさ偏るさだめ


助けたよ 名もなき援助、金、介護……きたない方の無花果の実が


良いはずの実が食えないと母の知るとき果を落とす「平等」の斧


病床に電話一本。文を編む 子には渡さぬ、親の遺言いごん


きたない実こやしにさかる本当は良い実と花の保元の乱


欲しかったチカラは主観、忘却で 花が使えるアブダカダブラ


おかあさま、わらって 宝物だったキキララのメモたどたどしい呪

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無花果の花 小余綾香 @koyurugi

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