第2話 クビと見返し

「ゴミの行くつく先って何ですか!?」

私は突然意味の分からない事を言われ、聞き返す。

「そうだよね分からないよね。一つずつ説明するね。」

椿さんはホワイトボードに何かを書き出す。

「夢野出版って知ってる?ヤーちゃん。」

「は、はい有名な出版会社ですよね?」

『夢の先に』などを出版した有名な会社だと記憶している。

「うちはねそこの下部会社なの。」

「なら凄いじゃないですか!?」

「表向きはね。」

「へ?」

「実態はそんな良いものじゃないの。ここは夢野出版のダミー会社なんだ。」

「ダミー会社?」

聞いたことがない言葉で私は困惑する。

「聞いたこと無い?結構ニュースとかで言ってると思うんだけど、分かりやすく言うと税金対策で会社を設立するんだよ。」

「そうなんですか。私あんまりニュースとか見なくて。」

「本当なら何もしない会社なんだけど夢野出版は税務署からの追及とかを避けるため一応本を出してるの。夢野出版から破棄された小説達でね。」

「破棄..された?」

それってまさか。

「そう。私達の出版社に回ってくるのは上が使えないと判断した小説だけ。」

「そ、それじゃあ榊原恵さんの作品も捨てられた物だったんですか!?」

私が尊敬していた作家は上から放棄されてきたもの?その事実に私は信じきれず問いかける。

「いや、あれは前の編集長が無理してとってきた小説。」

私は安心した。

尊敬していた小説は失格の烙印を押されては居なかったのだと

「でもそのせいで編集長はくび。」

「へ!?それで先輩は編集長はいないって...」

「そう、それまでは皆なんとかやろうと頑張ってたけど、今は誰も頑張ろうって人は居なくなった。」

「そんなのってあんまりです!なんで面白い作品を死に物狂いで探してきたのにクビにならなきゃならないんですか!?」

「そんなの私が聞きたいよ!」

椿さんは怒り机を力任せに叩く。

「ごめん、驚かせちゃったね。」

「いえ大丈夫です。編集長好きだったんですね。」

「そうだね。凄い人だったよ。上から流れてくる奴だけじゃなく、このままじゃ駄目だって自分で足掻いて榊原先生の作品を一本だけっていう条件でこぎつけた努力の人だよ。」

椿さんは過去を思い出し、窓から外をみる。

「見返しましょう!!」

「え?」

「だから私達で夢野出版を見返すんです!」

「でもどうせクビになるだけじゃ..」

「なら辞めさせるのが勿体無いぐらい凄い作品を作ってやめてやりましょう!」

「アハハハ!」

「やっぱり無理ですかね。」

私は椿さんに笑われブルーになる。

「いや、逆だよそれだよ!見返してやろうじゃん私達で!」

「はい!」

そこから私達の見返すための物語が始まったんです。

「はぁ、本当ですか?持ってません?」

猪瀬さんが私に疑いの目を向けてくる。

「本当ですって。」

「でもあのメイドさんが編集さんで、編集長がその出版社の先輩なんて信じられませんよ。」

「それなら信じなくてもいいですよ~」

私は頬を膨らます。

「信じます!信じますからそんなに不機嫌にならないでくださいよ!」

あの時の私へ。

自分の担当にその話をするって言っても信じられないでしょうかね?

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矢崎の変人な過去? 猫カイト @Neko822

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