第26話 修行


家の門をくぐり、少し歩くとロベリア通りへと出る。


ヤムル王国の王都は、王城を中心として東西南北にそれぞれ、ローズ通り、ガーベラ通り、ロベリア通り、そしてフリージア通りという大通りが延びている。


これらの名前は、ヤムル王国建国者である『勇者パーティー』の1人、ヤムルの4人の妻の名からきているとされている。


どれも大通りの名にふさわしい広くて活気のある通りで、多くの店が立ち並び、通行人や馬車でいつも賑わっている。

そしてまるで大木の枝のように、大通りから無数の道が王都中に延びている。


アクセルは今日もロベリア通りを王城方向へ、国立魔法学院を目指して歩く。


合格発表の日から今日までの2週間、アクセルは毎日学校へ通っていた。


自分の秘密を知るS級冒険者、『疾風』のシリウスのもとで修行をするためだ。


『異能』を強化するためには、魔獣や魔族を倒すしかない。


つまり、『魂の眼』を強化するためには、アクセルは魔獣との実戦を経験するしかないということだ。


本来であれば、1、2年生の間は戦いの基本を体に叩き込み、3年生になって初めて魔獣との実戦練習に移ることになっている。


しかしシリウスは、アクセルの『勇者』としての能力である『魂の眼』の成長の重要性と、彼の今の実力から、魔獣との実戦を見据えた訓練を早いうちから始めることにした。


そしてアクセルが入学したら、3年生と一緒に実戦練習に参加させようと考えたのだ。


シリウスとの訓練は今までに経験したことがないほど厳しいものだった。


「いいか、魔獣との戦いは常に生きるか死ぬかだ。奴らも俺たちを殺すために死ぬ気でかかってくる。

もっと魔力の動きに敏感になれ!!そんな動きじゃすぐに死ぬぞ!」


常に俺がギリギリかわせるかどうかのタイミングで、シリウスが死角から突きや蹴りを放ってくる。


一瞬でも気を抜いたら吹き飛ばされてしまう。


「ガハッ…」


左脇腹にシリウスの肘がめり込む。

俺はそのまま地面に倒れ込んだ。


シリウスは俺が何度も攻撃をくらう前提でだいぶ手を抜いて戦ってくれているのだろうが、それでも一撃一撃が俺にとっては重すぎるくらいだ。


「大丈夫か」


「…大丈夫です、まだやれます!」


シリウスの攻撃を何度もくらい、その度に地面に叩きつけられた俺の修練服はすでにボロボロだ。


「おまえはまだまだ相手の動きを目で追いかけている。魔力の流れを皮膚で感じ取れ。」


シリウスが起きあがろうとする俺に手を差し出しながら続ける。


「目を閉じても俺の攻撃を避けられるくらいになるんだ。

そうすれば『眼』を使うお前の能力の幅がさらに広がるだろう。」


砂を払い落とし、もう一度向き合う。


「さぁ….まだまだいくぞ」


この2週間、何度も何度も地面に転がった。

その度に受けたアドバイスを痛みと一緒に体に溶かし込んでいく。


(絶対にもっと強くなってみせる…!!)


おれの(2回分の)人生史上最もしんどい2週間はこんな感じで過ぎていった。


ロベリア通りを歩いていると前の方に少し見覚えのある顔が見えた。


青磁色のスカートを身につけた青髪の少女が、ソワソワしながら道の端の方を歩いている。


「……エリス、だよな?」


肩をビクッと痙攣させ、少女はゆっくり振り返る。


「…!アクセルさん!」


少女は安心したかのように笑顔でこちらに駆け寄ってくる。


「おはようございます!2週間ぶりですね!」


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みなさんこんにちは、滝白タカです(^^)

26話を読んでいただきありがとうございます!

これからも頑張って投稿してまいりますので、フォローやいいねをよろしくお願いします!!

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