第27話 初登校



「おはよう。制服似合ってるな」


「本当ですか!…嬉しいです!」


エリスが嬉しそうににっこり笑う。

周りの通行人も振り返るほどの明るい笑顔だ。


「道、迷ってたのか?」


俺が聞くとギクッとした顔をするエリス。


「実は道をまだ全然覚えれてなくて…合格発表の日の後に一度学院まで歩いてみたんですけど、その時も迷ってしまいました…」


恥ずかしそうに俯くエリスはまるで小動物のようだ。


「まあ普段王都に来ることがなかったらしょうがないよ」


少し直接的に聞きすぎたかと俺は少し反省しながらエリスを慰める。


「あの…アクセルさんがよろしければ、学校までご一緒してもいいでしょうか?」


「もちろんいいよ。学校までまだ少しあるし、一緒に行こう」


俺たちはゆっくりロベリア通りを歩き始める。


道沿いに時折出てくる有名なお店や観光名所などを教えると、エリスは爛々と目を輝かせて興味津々って感じだ。


楽しそうなエリスを見ているとなんだかこっちまで楽しくなってくる。


「そういえば、アクセルさん」


「ん?」


「合格発表の日、アクセルさんが校長先生と一緒に行ってしまわれた後にアルフレッド殿下がお見えになって、アクセルさんを探していらっしゃいました」


「…!?」


『アルフレッド・フォン・オルレアン』


この国の第四王子。そして国立魔法学院の第二席合格者だ。


(一国の王子が俺を探してるって…あれ、もしかして俺の平和なキラキラ学院生活終わったか…?)


1人絶望していると、エリスが慌てて首を振る。


「あ、いえ、探してるって言ってもとてもアクセルさんに興味を持たれたご様子でした。

アクセルさんがどんな方なのか、はやく会って話してみたいと仰られていましたよ」


「それって絶対目をつけられてるよな…」


「アクセルさんは主席合格ですから…少しは目立ってしまうのは仕方のないことかもしれませんね。

でもこうして早くも実力を認められるなんて、本当に凄いことだと思います!」


さっきと立場が逆転して、エリスに慰められる。


(とにかく入学していきなりめんどくさいことに巻き込まれるのだけはは絶対に避けないと…!俺は絶対に普通の学院生活・・・・・・・を送るんだ!)


1人謎の決心を固めていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


「おーい、アクセルー!」


振り返ると紅色の髪の少女がこちらに向かって駆け寄ってきた。


「ティナ、おはよう」


「ティナさん!おはようございます!」


なぜかエリスを見て一瞬固まるティナ。


「お…おはよう!エリスも久しぶり、ついに入学式ね!

…ところで2人は一緒に学校まで…?」


「ああ、エリスとはさっきそこで偶然会ったんだ。

まだ王都の道に自信がないみたいだったし、一緒に学院まで行くことにしたんだ」


「…そうだったのね、エリスをちゃんと案内してあげたんでしょうね?」


「もちろん、バッチリだ。な?」


「はい、素敵なお店もいろいろ教えていただきました!」


そう言ってエリスがティナの方に駆け寄り、小さな声で何やら耳打ちをする。


((……大丈夫ですよ、今のところは・・・・・・お二人の邪魔をするつもりはありませんので))


「……!ばっ,,,,,,,,,,,,,そんなんじゃないから!!!」


「…?どうしたんだ?」


「なんでもない!早く行くわよ!」


顔を真っ赤にしながらティナが早足で歩き出す。


「ティナさんは本当に可愛いですね、ね?アクセルさん」


エリスが俺の方を見てニコッと笑う。


周りの視線(特に男)が少し刺さる気がしたが、気のせいだろうと思い、学院へとまた歩を進めた。

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