第8話 赤い指輪


「父さま…ごめんなさい…」


「……」


父ジムは俺を抱えたまま、何も言わずに歩を進める。


「とりあえずおうちで何があったのか聞くよ、アクセル。」


ドレッドおじさんはティナを優しく抱きかかえながら、ジムの横を歩いている。


俺たち2人が家からいなくなったことに気づいて2人で探しに来てくれたのだろう。


そう気づいた時、俺は心の底から約束を破って家の外に出てしまったことを反省した。



「父さま、…アンバーが…」


「……」


「……」


ジムとドレッドは何も言わずに、家へと向かった。


俺はそれがどういう意味なのかはわからなかった。


ふと横を見ると、ハンカチで腕と脚を縛られ止血されているティナが、ドレッドの腕の中で眠り込んでいた。




ガルシア邸、リビング。


ティナは自室でまだ眠っている。


リビングからでも、包帯が痛々しく巻かれた小さな腕がベッドに横たわっているのが見える。


刺すような夕日が窓から差し込んでいる。


「ごめんなさい!! 僕は…ぼくは……」


泣きながら俺はジムとドレッドにあったことを全て話した。

思い出せば思い出すほどに、話せば話すほどに辛くて悲しくて、そして後悔の気持ちが溢れ出してくる。


(こんなことになったのは自分のせいなんだ…!!!)



話を聞き終えた2人は、意外にも俺を強く叱ることはなかった。


2人は俺に聞こえないように小さな声で少し話し合った後、立ち上がり、ドアの方へと歩き出した。


「アクセル、今からドレッドともう一度公園まで行ってくる。帰ってくるまで、静かにまっててくれ」


「ティナをよろしくね」


そう言って2人は家を出て行った。



(父さまたちはアンバーを助けに行ってくれたんだ)


幼い俺はそう思った。


そして、今度こそちゃんとティナを見ててあげないと、と思ってティナの部屋で2人の帰りを待つことにした。


「アンバーにも謝らなくちゃ…」


落ち着きを取り戻し、アンバーはティナが怪我したからあんなに怒ったのだと幼い俺にも気づくことができた。


(僕と違って、アンバーはティナを守ろうとしたんだ…)


俺はみんなが帰ってきたら、モフモフとは程遠いアンバーの体をいっぱい撫でてあげたいなと初めて思っていた。


しかしアンバーは帰って来なかった。



夜、あの時の聖騎士を連れて、ジムとドレットが帰ってきた。


「ティナ、父さまたちが帰ってきたよ」


ティナの怪我が痛まないように、優しく起こす。


「ん……あくせる…? いたっ…!」


「ティナ、だいじょうぶ?」


ティナは自分が怪我していることに気づき、さっきまでの事を思い出した。


「アンバー……アンバーは!?」


ジムとドレッド、そして聖騎士たちが近づいてくる。

聖騎士は俺たち2人を見て、とてもバツが悪そうな顔をしていた。



彼は赤い首輪と、煉瓦色で拳ほどの大きさの魔石を持っていた。


はじめはそれが何なのか気づいていなかったベッドの上のティナの顔が、だんだんとくしゃくしゃになっていく。


「グスッ…あんばぁ………」


「この子はご主人様を守るために精一杯戦っていたんだね。気づいてやれなくて…助けてやれなくてすまない。」


床を見ながら聖騎士が話す。


「うぅ….うぁぁぁああああ」


俺たち2人は泣いて泣いて、そして泣きつかれていつの間にか眠ってしまった。


雲一つない空に無数に浮かぶ星々の淡い光が小さな2人を照らす。


少女の手には、聖騎士から受け取った彼女の髪と同じ色の赤い首輪と、気高く光る煉瓦色の大きな魔石が強く握り締められていた。


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みなさんこんにちは。本日もとても暑いですね、、

熱中症に気をつけて過ごされてください。

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