第46話 文化祭②

わかっていたことだがメイドをするのがこの3人ということで比較的男子の方が多い。まぁ男子とか女子に関係なくオムライスは頼まれていくので俺の仕事は増えていくばかりなんだけどね?


「女子はまだクッキーとかを頼む人が多いけど男子はほぼ全員オムライスじゃん。俺一人じゃさすがに作りきれないんだけど」


「そんなこと言っても他のクラスメイトは回りに行ったし、今はメイドの3人と白神、あと僕しか残ってないよ」


5人しか残ってないってもはや文化祭の出し物どころか本当の喫茶店みたいじゃないか。緋月は人の案内役で忙しそうだし他のクラスメイトは周りに行ってる、午後からはオムライスを売り切れにして保存してあるものだけで何とかして午前に働いてる今の5人は休みらしい。


代わりのメイドは誰がするかなんてことは置いておいて誰か料理手伝って欲しい。


「私も手伝うよ! よく考えたら接客は3人もいなくても何とかなるし。午後からは休みとはいえ吹雪くんの腕が大変なことになっちゃうからね」


蒼井の料理の腕前は小学生の時から理解しているので任せてもいいだろう。それよりメイド服のままでは料理しずらいじゃないか?


「借り物だし汚しちゃいけないからちょっと着替えてくるけど、その間頑張ってね?」


「さすがに蒼井が着替えてる間の短い時間の間に力尽きることはないって」


メイド喫茶が回らなくなったら今文化祭を回っている料理が得意なクラスメイトを引き戻すことにしよう。それよりなんで人気になることがわかっているメイド喫茶を5人で回せると思ったんだ。


まぁ今のところ何とかなってはいるが普通なら合間合間で休憩が入るはずなのだが俺ら5人に休憩はやってこなさそうだ。というか午前に俺たち5人以外のクラスメイトが回ってるってことは午後は逆に人が多すぎるんじゃないか?


しばらくして蒼井が着替えて戻ってきてくれたことでだいぶ余裕が出来てきた。それでも手を離せないことには間違いないのだが一人でやるよりは断然マシだ。


「なんか……あの二人夫婦みたいだね奏音」


「僕もそう思うけど認めたくないなぁ……」


「まぁ吹雪はそこまで恋愛に興味無いから大丈夫だって、少なくとも奏音が告る前に付き合うなんてことは無いから」


「それは僕が告白しても白神くんは恋愛に興味無いから断られるってことかなぁ……?」


2人が何を話してるかは聞こえないが俺が聞かない方が良さそうな雰囲気ではあった。まぁそんなこと気にしてる余裕もないので追求したりはしない。


「2人ともーオムライス2人前できたから1番テーブルに運んでいつものをしてねー」


「案外するのって恥ずかしいだよ? 吹雪には一生分からないと思うけどね」


「まぁそれがメイドにえらばれた人の宿命みたいなもんだから。でも可愛いから選ばれたんだし誇れば?」


メイド喫茶のメイドは料理の美味しさと同レベルには大事だと思うので、それに選ばれた3人はそれだけの魅力と可愛さがあるということだと思うので誇ってもいいと思う。この3人に関しては誰にも反対されることなく決まったんだからクラスメイト全員に認められてるってことだ。


「あ、5人に任せちゃってごめんね。午後になったから何人か連れてくるし回ってきていいよー」


今やってきたのは委員長でいつの間にか午後になっていたらしく、俺たち5人はバトンタッチとなった。



※※※



「緋月、女子たちの行動力ってすごいな。回れるってなった瞬間素早く着替えて3人で周りに行ったぞ」


「楽しそうでいい事じゃん、とりあえず2人でどこか回っておこうか。白神は蒼井さんと回れなくて寂しい?」


「別に彼氏でもなんでもないんだし無理やり一緒に回ろうとは思わないよ。まぁ回れたらいいなってだけ」


数年ぶりに再会したんだから俺だって一緒に居たい気持ちはあるが俺は蒼井の彼氏じゃないし誰と回るかなんて蒼井の自由だ。そこに俺が無理やり割り込むこともなければないか言うこともない、ただ見守っておくだけのこと。


「もう2人とも付き合えばいいじゃんか。小学生の時に渡し合った指輪とネックレスをお互い付けてるんだからさ」


「それとこれは話が別じゃないか? まぁ蒼井には惚れさせるって言われたけど、正直なところは俺から告白するとしても俺からしたいね。するわけじゃないけどさ」


緋月に「ヘタレめ」と言われたが実際ヘタレだと思う、だから俺は告白できるようなやつは尊敬してるんだ。他の男子が俺の状況に身を置いていたとしたら既に付き合ってることだろう。


「俺らは高校1年生なんだ、まだまだ時間はある、慌てるような時間じゃないだろ?」


「はは、それはそうかもね。ねぇちょっと僕の恋バナに付き合ってくれないかな?」


「いいぞ、俺もそういう気分だからな。お互いに好きな人でも晒していこうじゃないか」


「白神はもう晒してるようなものでしょ?」


「まぁそうだな、俺の好きな人は今も昔も変わらず蒼井だ。ただ告白する勇気が出ないってだけだ」


そう言って俺と緋月はあの女子3人の後ろを歩きながら恋バナを始めるのだった。


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