第45話 文化祭①

今日は文化祭なのでどのクラスの人も朝早くから学校に来て準備をしていた。


俺らのクラスは主に義姉さんの協力でものを用意できたので後で個人的にお礼を言っておくことにしよう。それに準備の手伝いに来てくれたので本当に頭が上がらない。


「自分のクラスの準備はやらなくていいの?」


「やろうとしたんですけど、やらなくていいって言われたんですよね。休憩してていいらしいですけど疲れてもないのに休憩っていうのもおかしいので吹雪のクラスを手伝いに来ちゃいました」


昔からそうだが常に仕事をしてる義姉さんは何かをしていないと落ち着かないらしい。でもクラスの人は義姉さんの手を煩わせる訳にはいかないと思っていて義姉さんは何かをしたいと思ってるがこっちに来たということは数で結局押し切られたのだろう。


まぁ手伝ってくれる分にはこちらに損はないので帰らせるということはクラスの誰もしなかった、というかやはり義姉さんのことは知ってるようで話しかけずらそうにしていた。


「やっぱり学校では人気者なんだね。1年の俺らにも噂は回ってきてるらしいよ?」


「本当にあんな噂を流したのは誰なんでしょうね? 少なくとも失礼なことをされたからって処分するようなことはしませんよ、私は」


確かに義姉さんはそんな事しないと思うけど、それでも義姉さんをからかうのはやめておいた方がいい、義姉さんがやらなくても菊池さんなどの従者の人がやる可能性がゼロではないからだ。


「な、なぁ綾乃さんとどういう関係なんだ?」


「ん? どういう関係って言ったら複雑だからあんまり言いたくないんだよね。だから友達以上恋人未満って所かな?」


俺が孤児だったことは公に言うような事じゃないし、そもそも俺自身このことは忘れたいので言いたくは無い。俺に血の繋がった家族が居ないことなんて今すぐにでも忘れて義姉さんが本当の家族だったということに記憶を改変したいところだ。


さてと、外装などの準備は終わったのでクッキーとかの保存しておけるものを作るとしよう。


「そこでずっと見てても完成しないよ? というかクラスの人じゃないし客としてきた時に食べればいいじゃん」


「食べたいわけじゃないです! 私も料理をしてみたいなぁと」


「いやぁ火傷するかもしれないからダメ。そもそも初めてなのにやろうとしないでよ、せめて桐木さんのことで習って来たら?」


義姉さんはお嬢様なので当たり前と当たり前なのだが料理をしたことがない。料理をしたいと言ってもさっきの俺みたいに拒否られるのがいつものオチだった。


「白神くーん、着替え終わって暇なんだけどなにか手伝えることは無いかなぁ?」


「うーん、特にないと思う。料理は完全に俺の担当だしメイドの3人は文化祭が始まるまで出番ないと思うよ?」


3人とも結局従者の人が悪ノリで持ってきていた猫耳をつけておりメイド喫茶が猫耳メイド喫茶になっていた。まぁそっちの方人気が出そうな感じはするけど。


「誰がちょっと来てー」


「白神くん、どうしたのぉ?」


「クッキーが焼きあがったらオーブンから出して冷蔵庫に入れて欲しいな。あ、でも熱いから火傷しないようにね?」


義姉さんがなんで私に頼ってくれないの? という目で見つめてくるが、普通に考えてオーブンを使ったことがない人に任せるわけないと思う。というかそろそろ帰ってもいい時間じゃないか?


「美味しそうだねぇ、つまみ食いしちゃダメかなぁ?」


「ダメだよ? まぁ文化祭が終わったあとに材料が余ってたとしたら作ってあげるよ。まぁ余らなくても個人的に家に来てくれたら作ってあげるけどね」


「あー、奏音だけずるいよ私も吹雪が作ったクッキー欲しい!」


「大丈夫だって、そんな言わなくても来てくれたら用意するからさ」


それを見ていた外野達は……。


男子たちは『料理ができる男はモテると言うのは本当だったか……。俺も料理してみようかな』と言う声が聞こえてきて、女子たちは『いいなー、私も白神さんの料理を食べてみたいけどあの3人の間割り込む勇気はないよね』と羨ましそうにしていた。


さすがに時間が迫って来たのか義姉さんは自分のクラスに戻って、こちらも保存しておくクッキーとかは作り終わったので文化祭が始まってからしばらくはオムライスだけを作ることになるだろう。


放送でしばらく生徒会の人の挨拶などが流れたあと、正式に文化祭の開催が宣言された。


「お……? 序盤から人多すぎるな、これオムライスを大量に注文された場合間に合わない気がするんだけど……」


文化祭は2日間なのでどちらかは客が落ち着くと思うがどうやらピークは今らしい。それにオムライスはメイドがケチャップをかける(いつもの)やつがあるのでたくさん頼まれることは目に見えてる。


「……吹雪くんは時間との勝負頑張ってね?」


「あーもう1人じゃ間に合わないってぇ!」


俺の休む時間が消えることが確定したところで頼まれたオムライスを作り始めるのだった。

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