第31話 白神吹雪は再会する②
「なんで? 私の事好きじゃない?」
「いや、好きだけど付き合うなら蒼井がいいってだけで、俺は誰とも付き合うつもりは無いよ。友達の間で優劣は付けたくないからね」
俺がこんな生い立ちをしていなかったら迷わず蒼井と付き合っていただろう。だってこんなにも可愛い美少女から告白されて断る方がおかしいまである。
ただ俺は普通じゃない、だから優劣をつけずにみんなと平等に接したいんだ。
「これ返すよ、やっぱり俺が持ってるより蒼井が持っていた方がいい」
俺はずっと首にかけていた指輪を外して蒼井に返す。元よりこれは蒼井が母親から貰ったものなので俺が持っているのはおかしいだろう。
俺があげたネックレスを今蒼井はつけているがやっぱり自分の母親から貰った物の方がいいだろう。
「私はこのネックレスがいい、その指輪は吹雪くんがずっと持ってて欲しいな。私は別に付き合わなくてもいいけど、その指輪だけは持っておいて欲しい」
「冗談だったんならタチが悪すぎるな、まぁ蒼井がそこまで言うなら俺が持っておくけど」
俺は指輪を首にかけ直して完全に蚊帳の外だった義姉さんに声をかける。
「義姉さんはなんで蒼井のことを知ってるの? 俺が蒼井をしたことがあるけど会ったことはないよね」
「蒼井ちゃんの母親とはよく商談をしてましたから。結構盛り上がったんですよ、吹雪と蒼井ちゃんの話で」
蒼井の母親がものすごい仕事をしてることは知っているので義姉さんと商談しても不思議では無い。
じゃあ中学生の時も義姉さんは蒼井の母親と関わってたってことか。それで話で盛り上がったということは蒼井の状況を把握していたということになる。
「それで、義姉さんが俺に話があるって菊池さんから聞いたけど」
「とても言いづらいんですけど……吹雪が住んでいる家に時々泊まりにいってもよろしいですか?」
「それだけ?」
「それだけです……」
紅葉と一緒にしばらく住んでた身からしたら一日誰かが泊まり来ることくらい造作もないし、話がこんなことだとは思わなかった。
「好きな日に来ていいけど、もしかしたら他の人もいるかもしれないよ?」
「構いません、私は吹雪を独占つもりはございませんし。蒼井ちゃんも今までの分を甘やかしてもらったらどうです?」
「そうします」
そして今日の夜に蒼井が泊まりに来ることが決まったが許可なしに決めていいのだろうかと思ってたら既に許可はとってあるらしい。
現在俺の家は完全に1人分の物しかないので蒼井の分も晩御飯を作るためには買い物に行かないといけないだろう。まぁそれはいいとして問題は寝るところだ。
紅葉が使ってたやつは紅葉が一人暮らしを始める時に渡したし今俺の家には自分のベットしかない。まぁ俺がソファーで寝て蒼井をベットで寝させればいいだけの話か。
「最近紅葉も来てないから今俺の家には材料が足りないんだよね。この後俺の家に荷物を運んできたら家で待っておいて、買ってくるから」
「私もついて行ったらダメ?」
「んーダメとは言わないけど今から暗くなるだろうし蒼井の身の安全を考えたら俺の家で大人しくしてて欲しいかな」
その他にも蒼井と買い物に行ってるところをクラスの奴らに見られるのが面倒くさいというのもある。買い物に行くのは普通に学生が遊べるような場所もある大型ショッピングモールなので鉢合わせする可能性はある。
「じゃあ大人しく吹雪くんの家に居とこうかなぁ。それと、付き合う気がないなら言っておくね。絶対に惚れさせるから」
「そ、でも俺の意思は硬いよ」
もう惚れてるのに惚れるわけないだろう。状況さえ違えばとっくの前に付き合ってるところを紅葉たちのことを考えたら俺は誰とも付き合わない方がいいってことになっただけだ。
とりあえず蒼井の着替えなどを運んできてもらって空いてる部屋に置いといてもらった。
「ベットはひとつしかないから蒼井が使っていいよ。俺はソファーで寝るから」
「一緒に寝れば良くない?」
「普通に問題なるから洒落にならないって。別にソファーで寝るなんて慣れてることだし気にしなくていいよ」
そんなこんなで俺はショッピングモールに向かったが案の定知ってる奴らは一定数いたので一緒に来なくてよかったと思う。
※※※
「惚れさせるって言ってもどうやればいいかなんてわからないよー!」
正直吹雪くんに何をしても動じなさそうだし、吹雪くんが惚れるより前に私が恥ずかしさで死んでしまいそうだ。
吹雪くんは平然と『好き』だとか言う人なので私が惚れさせるより前に私が吹雪くんに惚れさせられる方が早いだろう。
「はぁ、吹雪くんは本当に難攻不落だよ。ライバルもいるし……本当にどうしようかなぁ」
奏音ちゃんは……自分で言ってたし大丈夫だけど問題は紅葉ちゃん、吹雪くんと同棲していたことがある強敵だ。
私は逃げない、吹雪くんは付き合うなら私らしいし。絶対に吹雪くんを手に入れてみせる!
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