第18話 蒼井仁愛は助けたい
紅葉さんのあの話を聞いてから私は、吹雪くんに思い出してもらうことよりも紅葉さんの男性嫌いをどうにかしたいと思うようになった。
思い出してもらうなんて、私にとって自己満足でしかないし紅葉さんみたいに心に深い傷を負う訳でもないので後回しでもいいだろう。
「ねぇ吹雪くん、紅葉さんのことで私に出来ることは無い? 今日の昼休みの時に聞いたんだよ」
「悪いんだけど蒼井が手を出す必要は無い。蒼井がいくら手を差し伸べたとしても現状は変わらないと思うから」
実際にこっちに戻ってきたばかりで紅葉さんのことをほとんど知らない私が紅葉さんの深刻な傷を癒やそうなんてでしゃばりすぎだ。
春休みの時から紅葉さんと一緒にいて、紅葉さんを救った本人である吹雪くんの方が紅葉さんを助けるのに向いているのは誰でもわかる話だ。
「仲間はずれみたいにしてごめん。でも助けた以上は最後まで助けきらないとだから、俺は紅葉の問題が無くなるまで付き合い続ける」
吹雪くんは責任深い人で、1度手を出した問題は解決するまで手を出し続ける。それは吹雪くんのいい所だと思う、だけど1人で全て解決しようとしてるのは吹雪くんの悪い所。
紅葉さんに、もっと人を頼れって言ってる割には吹雪くん自身は誰に頼ろうとしないなんて矛盾してる。
「吹雪くんは紅葉さんに、頼って欲しいって言ったくせに自分は頼らないってどういうことかなぁ?」
「男だから?」
「なんで疑問形……。男だからって1人で解決しないといけないわけじゃないんだから。別に人に頼るのはカッコ悪くないし、逆に意地張って1人で解決しようとしてる方がよっぽどかっこ悪いよ?」
少し口が悪くなってしまったが吹雪くんを説得するにはこうするしか無かった。正論を言っても吹雪くんは反論してくるので、ちょっとした屁理屈を言わないと吹雪くんは説得出来ないのでこうするしか無かった。
「かっこ悪い、ねぇ……。じゃあ紅葉の傍に俺が居られない時に蒼井が居てやってくれないか?」
「それが手伝いになるのなら喜んで。 でも紅葉さんが走って行った理由はなんなの?」
少し前、帰りの時間に吹雪くんが呼び出しから戻ってきて、紅葉さんに言葉を言うと、紅葉さんは走って1人で帰ってしまった。
確かに紅葉さんが苦手としている男性という2文字は含まれていたが走って帰るほどだろうか?
「さぁ? あの時は返事を貰ってないし、俺が言った男性と話す気かは分からない。でも俺は話さない方がいいとは思ってるよ」
あんな長時間も話して、紅葉さんにその男性と話して欲しいと伝えに来たのに話さない方がいいというのはどういうことだろうか。
それほど紅葉さんが嫌いなタイプの男性なのか吹雪くんの主観か分からないけど紅葉さん本人が返事をしてないのならこっちは何もすることが出来ない。
「じゃあ俺は紅葉の家によって返事を聞いて来るからまた明日」
私はそこで吹雪くんと別れて家に帰った。
※※※
紅葉の家に行くと言ったがそれは全くの嘘で、既に紅葉からは『話してみる』とメールを貰っていたのでこの事を伝えにあの人がいる場所へ向かっていた。
「紅葉は話してみると言ってますけど、それは男性という情報だけを渡した時点での回答なので……」
「相手が俺だと知ったら絶対に断られるからそれでいい。まぁで会った瞬間に逃げられる可能性は高いな」
まぁ紅葉を男性嫌いにさせた張本人なんだから逃げられても当然、話せたら奇跡と言っていいほどだ。
そもそも紅葉に何もしてない男性ですら話せないのに、紅葉に手を出したこの人が逃げられないわけが無いと思う。
「話す場所は俺の家でお願いします。その方が紅葉も安心できると思うので」
「俺が反対することはないさ。俺の連絡先は持っているだろう? 紅葉と君の都合があった時に呼び出すといい、俺は君の家に向かう」
俺はその場で紅葉と連絡をして日程を合わせた。
話す日が決まったので、この話の内容次第ではこの人と関わることは無くなるのだが、俺は紅葉とこの人がせめてまともな関係に戻ることを願ってはいる。
「もし紅葉との中が戻ればどうするつもりなんですか?」
「紅葉はもう一人暮らしをしていて、君や君以外にも友達がいるのだろう? なら俺はお金を支援するだけさ。今頃俺と一緒に過ごすのも嫌だろうしな」
紅葉の元々の家がどこにあるかは知らないが紅葉は学校に近いアパートを借りて一人暮らしをしているので元の家に戻る必要も無いだろう。
もう話すこともないので俺は家に帰って紅葉に話す相手が
『本当に大丈夫なの?』
『うん……お父さんが心を改めてるのは吹雪と話してるから理解出来たから。……それに全部過去のことだし、お父さんと話せたなら他の男子とも話せると思う……』
紅葉が男性嫌いを頑張って克服しようとしてるので俺は『頑張れ』と一言電話越しに伝えた。
紅葉がほかの男子と話せるようになったとしても元は話せなかったのでグイグイ詰め寄って来るやつからは遠ざけないといけないので俺はこれからも紅葉と一緒に居ようと思う。
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