第9話 ついてくる

「ついてくるんですけど……」


 結構な距離走ったんですけどね、ストーカーさん、諦めが悪い。


 ずっといる。


 同じペース、一定の距離を保ったまま。


 執着心がはんぱない。


 怖い、怖すぎる。


 というか、普段コンビニと家、握手会の会場と家、の往復しかしていない私に、大した体力はない。


 平均以下の体力だと思います。


 息がきれてもう走れません。


「てか、ここどこ」


 更に最悪なことに、道に迷いました。


 家を通り過ぎてコンビニから遠ざかって。


 目の前に広がるのは見慣れぬ住宅街。


 詰んだ。


 コンビニに戻るつもりだったのに。


 どっかで曲がる道を間違えたみたい。


 これじゃあ帰り道がわからない。


 交番がどこにあるのかわからない。


「どうしよう」


 歩くペースを落とすと追いつかれそうだから、足を止められない。


 でも、いい加減疲れました。


 これ以上歩けそうにありません。


 ストーカーを振り切る元気だってありません。


「うっし」


 仕方がない。


 汗を拭って立ち止まる。


 勿論、後のストーカーも立ち止まった。


 見知らぬ土地ではありますが、ここで決着をつけますか。


 ストーカーの正体を突き止めますか!


 それに、振り向いたら向こうは逃げるかもしれないし。


「えいっ」


 勇気を振り絞って後ろを向けば、そこに立っていたのは黒いキャップ、黒いマスクをつけた人物だった。

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