第5話 悪夢
「例の島での生存者3名、その内1名が意識不明、そして原因不明の痣か。」
単眼の老人 オディス がカロンの提出した情報を読み上げる。
「右腕に打ち込まれたものは機獣で間違えないでしょう。」
カロンが老人に話す。
「しかし、なぜ野良の機獣がなぜこのようなことができたのか、そして機獣を打ち込まれた部位の痣に加えて意識障害まで、通常の機獣では説明がつかんぞ。」
老人の隣にいた覆面の男がカロンに短剣を向けて話す。
「事が起きてからでは遅い。東生太は早急に処刑するべきだ。」
老人が男に続いて話す。
「お言葉ですが、風音零のような特殊なケースもあります。まずは様子見すべきかと。」
「その通りですよ。」
カロンの言葉に続けて黒服の男が話し出す。比較的大柄なカロンと同じくらいの背丈に、やや長めのウェーブがかった黒髪、そして目元には小さな傷がある男だ。カッターのようなもので切られた本当に小さな傷だ。
「暁さんの言う通りですよ。」
「心配せずとも、いざというときは私がいます。これでもまだ不安がありますか?」
「……。フンッ、わかった。大臣にはそう伝えておこう。」
老人と男は去っていった。
「このご恩はいつか……。にしてもなぜわざわざあなたが……。」
カロンの言葉に暁は肩を押さえながら気だるそうに言う。
「うちのわがままがうるさくてな。」
村が機獣に焼かれたあの日、燃え盛る家の一室で東は目を覚ました。
「父さん!! 母さん!!」
東は必死で両親に叫びかけた。父は機獣に腹を裂かれて動けない状態であった。母は機獣に首を締め上げられている。
「やめろ!! やめろ!!」
必死で叫ぶが、東は動くことができなかった。そして目の前で母は首を切り落とされた。
「母さん!!」
泣き叫ぶ東の方を見た父は朦朧とした目で東を見つめて話し出す。
「生太……。何で、お前だけ、」
「嫌だ、違うんだ、俺は、動けないんだ。父さん!! 父さん!!」
「はぁ、はぁ、」
「目が覚めたか。東。」
東の横にいたカロンが言う。
「カロン、さん……。俺、」
「何で、お前だけ、」
起き上がった東が見たもの。ヴィオラの持つナイフで刺されて倒れているカイ。ヴィオラはそして東の方を見て笑みを浮かべる。
東はヴィオラに駆け寄った。ヴィオラの体は下半身がなく、既に死体となっていた。
「お前だけ、お前だけ、」
どれだけ泣き叫んでも、聞こえるのは自身の泣き声のこだまと、カロンの声だけだ。
「……。クロは?」
「東!! 聞こえるか?」
カイの言葉に東は目を覚ます。
「ひどい表情だぞ。大丈夫か?」
「……。疲れてるのかな、嫌な夢見ちゃったみたい。」
まだ息の荒い東に少女が駆け寄る。
「よかった、起きてくれて。大丈夫?」
少女の優しい声に東は呼吸を整えて言う。
「うん。君は誰だい?」
「私はソラ。カロンさんの付き添いで船に来ていたの。」
「お、起きたか。東。」
「カロン、さん。と、あなたは?」
「俺は暁彩葉。カロンのやつから大体の事は聞いている。そうだな、色々と話すことはあるが、まずはこの組織と機獣について教えておかえねとな。」
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