第2話 殺し合い

 カイたちの町を襲った鉄屑は「機獣」と言う。高い戦闘力とあらゆる生物を排除するために動く獰猛さ、そして一体現れたと思えば無尽蔵に出現する圧倒的な数。これ程恐ろしい殺戮兵器が他にあるだろうか。


 カイと東は機獣のいない島の奥の倉庫のような建物に逃げ込んだ。幸いなことに倉庫内には十分な食糧と井戸水があった。


 二人は機獣に支配されたであろうこの島で、息を潜め続けた。生き残ることを、機獣に復讐することを考え続けた。


 そして月日は流れ、2人が18歳になったときのことであった。


 「カサカサ」


 4年前、2人を絶望の底へ落とし込んだあの音が聞こえてきた。


 「とうとうお出ましかい。」


 カイは倉庫にあった黒いコートを身に羽織り、近くにあった鉄パイプを持ち出した。


 「東。覚悟はできてるな?」


 「もちろん。」


 カイは東にナイフを投げ渡す。 


 「今度は逃げねえからな。鉄屑共。」


 倉庫の中に数体の機獣が入ってくる。


 「幸い、まだそんな数はいねえな。準備体操にはちょうどいいな。」


 機獣から放たれる鋭利な刃物の一撃。カイはそれを咄嗟に避けた。そして機獣の腕の付け根にある赤く点滅してる部品を鉄パイプで殴り付けた。


 「ぶっ壊れちまったか? 昔から得意なんだよ。精密品をぶっ壊すのは。」


 機獣を一体機能停止させたのも束の間、もう二体の機獣がカイの背後をとらえる。


 「東!!」


 「分かってるって。急かさないで!」


 東はナイフで機獣の弱点とみられる赤い部分を斬りつける。斬りつけられた機獣は動かなくなった。


 「よくやった。」


 カイは鉄パイプで機獣の攻撃を受け止めた。だが、機獣の攻撃は止まない。鉄パイプは変形し、カイは地面に倒れ込む。


 「さすがに正面からやり合えば相手にならねえか。」


 東はカイに夢中な機獣の弱点を背後から突き刺す。


 「助かったぜ。東。」


 カイと東はこの4年間。強くなるために独学で戦闘技術を身に付けた。いつ機獣に襲われてもおかしくない中、最も手っ取り早く強くなる方法。それは実戦だ。


 2人は4年間、毎日お互いを殺すつもりで手合わせをした。倉庫の中にあるあらゆる武器を使い、手加減や躊躇いもなくお互いに殺し合い続けた。お互いに生きていることが奇跡と言えるだろう。


 そんな無茶な訓練の成果もあり、2人は4年前とは比べ物にならないほど強くなっていた。


 強くなった。大切なものを奪った機獣に復讐するため、そしてまだ見ぬ楽園を、この世の全てを目にするため。


 「さて、こいつらを倒す術が見つかったのはいいとして、あれだけの数を倒せるか?」


 倉庫の入り口には既に20体ほどの機獣が集まっていた。


 「どうするよ? カイ。」


 2人が沈黙してる中、薄暗いビル街に鈍いエンジン音が鳴り響く。


 「どいてろ。ガキ共。」


 ドジャァァァァァン!!


 倉庫内に鳴り響く爆音と共に機獣たちは炎の渦に巻き込まれて粉々になった。


 「まさか生存者がいたとはね……。あなた、カイじゃない!? それに東も。」


 トラックのようなの何かから顔を覗かせる金髪の少女は言う。


 「お前、ヴィオラか!?」


 かつての級友であり、東の想い人であるヴィオラが生きていたことは2人にとってあまりにも衝撃的なことだった。


 「お、知り合いかい?」


 ヴィオラの隣にいた長髪の男が顔を覗かせる。


 「あ、あんたは誰だ?」


 「俺か? 俺の名はカロン。この前、そこでこいつと会ったんだよ。」


 長髪の男はヴィオラを指さしそう言う。


 「とりあえず乗りな。2人にも話したいことがある。」

 

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