第32回 頭に「み」のつく映画といえば?

 曲芸をする動物にもいろいろいますが、バットを持つゴリラを見たことがあるでしょうか?


 これから紹介する映画では、それを見ることができます。


 というわけで、頭に「み」のつく映画、「ミスターGO!」を紹介します。


 原題は「Mr.GO」。


 2013年の韓国映画。監督はキム・ヨンファ、出演はシュー・チャオ、ソン・ドンイル、キム・ガンウ、ビョン・ヒボンほか。


 中国の潰れそうなサーカス団のスター、ゴリラのリンリン。

 かつて団長だった老人が野球好きで(厳密には野球賭博が好きだったので)、テレビで熱心に見ていたため、脇で見ていたリンリンはそれを真似して、いつの間にか飛んでくるボールをバットで打ち返す芸を習得していました。


 ある日、「打てるゴリラ」の話題を聞いた韓国のエージェント・ソンが、韓国の“プロ野球選手”としてリンリンをスカウトにきます。


 高額な契約金10億で、サーカス団が抱える借金を全額返済するため、そのサーカス団はその話を引き受けます。

 ゴリラのリンリンと心を通わせることができるサーカス団の少女・フェイフェイと共に、リンリンは韓国へ行きました。


 ソンの住む超高級マンションで2人と1匹の奇妙な共同生活をしつつ、韓国の万年最下位球団・ベアーズと契約。

 リンリンは“ミスターGO”と選手登録され、ユニフォームを着てバットを持ち、バッタースタンドへ立ちます。


 怪力でホームランを連打、敬遠球だろうがバットを振り回せば必ずホームランまでもっていくリンリンのおかげで、球団はどんどん順位を上げていきます。


 ところが、ライバルチームが投手として連れてきたのは、別のサーカス団にいた1匹のゴリラ、レイティン。

 気が荒いマウンテンゴリラでしたが、リンリンがバッターなのに対して、レイティンはボールを投げる“ピッチャー役”。


 レイティンは“ZEROS”と選手登録され、200キロ近い球を投げる、人間離れした球速のピッチャーとして活躍します。受け止める側も無傷で済むわけがなく、1球ごとにキャッチャーを使い潰しますが……。


 そんな中、噂は日本のプロ野球界にも飛び火。日本からエージェントが試合を視察に来て、ゴリラ選手の争奪戦へ突き進みます。


 そしてクライマックス、ホームランを打つゴリラ・ミスターGOと、200キロ投げるゴリラ・ゼロズが激突するのです!

 皆が見守る中、前代未聞、野球史上初のゴリラ対決が始まった!


「九回二死満塁、代打、ゴリラ。」


 というバカバカしいキャッチコピー、パワフルなゴリラを野球選手にしたらどうなる?という漫画みたいな発想を美麗なCGで本当にやっちゃったアニマル・コメディです。

 (このために500人規模のCG会社を設立したそうです。金かかってんな!)


「ゴリラの入団なんて非常識だ」という韓国野球連盟のお偉方に、ソンは「ルールブックには人間だけでチームを作れとは書いていない!」と反論。 

 そりゃそうだ。わざわざ書かんわ。


 設定だけの出オチ映画かと思いきや、ゴリラの周りのフェイフェイやソン、サーカス団にやってきた借金取りの悲哀など人間ドラマもきちんと描かれています。


 ゴリラをスカウトにきた日本の野球チームのエージェント・イトウ氏を演じるのは、なんとオダギリジョー! 

 韓国では人気があるらしいゆえの配役だとか。予備知識なしで見たのでビックリでした。

 調べてみると、映像業界にはオダギリジョーを起源とする「オダギリ・エフェクト」という言葉もあるみたいですね。へー。


 映画の中で忘れられないセリフがあります。


 ソンが、フェイフェイに「なんで野球が好きなんだ?」と聞くのですが、フェイフェイは「ホームから出発して、ホームに帰ってくるから」と答えるのです。


 彼女には、震災で両親を失ったところをリンリンに助けられ、孤児になってそのまま一緒にサーカス団に拾われた経緯があるから、「ホームに戻る」ということについて、感じるところがあるのだと……深いなあ。 


 家から出て、家に戻る。野球って、そんなスポーツだったのか。

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