第33回 頭に「む」のつく映画といえば?

 1975年、スティーブン・スピルバーグ監督の「JAWS」以降、サメが人間を襲う動物パニックムービーは脈々と受け継がれ、CGの進歩により、より進化を遂げています。

「サメ映画」のバリエーションは非常に豊か。


 アルツハイマーの特効薬開発のために知能が向上しているサメが出る「ディープ・ブルー」。

 ひとり海に取り残され、ジワジワと迫り来るサメの恐ろしさを知る「ロスト・バケーション」。

 とにかく超デカいサメが出る「MEG ザ・モンスター」。 

 海底に落ちたカゴの中、酸素ボンベの残量と周囲のサメ、ダブルで恐怖を味わう「海底47m」。


 ……など、ノーマルなサメの正統派もありますが。


 昨今の「サメ映画」は、トンデモ系な作品が楽しいです。


 海に行かなくても、竜巻で舞い上がったサメが地上に降り注ぐ「シャークネード」シリーズ。

「ダブルヘッド・ジョーズ」から始まり、頭が6つまで増えていく突然変異の“多頭サメ”系シリーズ。

 遺伝子改造によりタコとサメが融合した「シャークトパス」シリーズ。

 巨大ザメが、巨大ダコ、巨大ワニ、メカのサメ、巨大ロボットと戦う「メガ・シャーク」シリーズ。

 ナチスのゾンビが、空飛ぶ超能力ザメに乗るという、中二病設定が大渋滞を起こしている「スカイ・シャーク」。

 雪山にサメが出る「アイス・ジョーズ」。

 砂浜にサメが出る「ビーチ・シャーク」。

 幽霊となったサメが出る「ゴースト・シャーク」。

 陸上でもやってくる「ランドシャーク 丘ジョーズの逆襲」。

 サメが支配する近未来「PLANET OF SHARKS 鮫の惑星」。

 サメに噛まれたらゾンビになる「ゾンビシャーク 感染鮫」。

 家の中でも出てくる「ハウスシャーク」。

 エクソシストと戦う「デビルシャーク」。

 サメもストーカー男もどっちも怖い「サメストーカー」シリーズ。

 脱走した女囚たちが、地中を掘り進むサメに襲われる「シャーク・プリズン 鮫地獄女囚大脱獄」。


 ……私も、何を書いているのか分からなくなってきました。


 それくらい、サメ映画の懐は広いのです。(大ハズレも多いですが)


 サメ映画にもいろいろありますが、今回は頭に「む」のつく映画……「ムーンシャーク」を紹介します。


 2022年のアメリカ映画。監督はグレン・キャンベル、タミー・クライン、出演はマキシ・ウィトラク、エゴ・ミキタス、タニア・フォックスほか。


 冷戦時代、ソビエト連邦は対アメリカの兵器として、鮫を二足歩行の人間型兵士に改良した「ハイブリッドシャーク」を開発。


 しかし、研究施設の鮫兵士が暴走し、非常時には閉じ込めるはずの防護装置も故障(ありがち)。

 研究施設のセルゲイ博士は、鮫兵士を道連れに、ロケットで月へと向かったのです。


 それから40年後、宇宙飛行士たちを乗せたNASAの宇宙船が、月に向かう途中で「何か」に妨害されました。


 宇宙船はダメージを負いながらも月面に不時着。

 そこには、月という環境下で進化し、増殖し、知能を持ったサメたちが一大帝国を築いていたのでした……。

 人語を喋るマッチョなサメたちは、自分たちの故郷・地球に帰る計画を進めていました。


 宇宙飛行士たちは、地球から38万km離れた月面という名の戦場で、地球を守るためにサメ兵士たちと果敢に戦うのです……という、


「人類vs鮫 月面戦争勃発!!」


 がキャッチコピーの、マッチョな体のサメ兵士と、宇宙飛行士が月面で戦うという、トンデモなサメ映画です。


 製作は、ブッ飛んだB級映画でおなじみ、いつもの「アサイラム」作品。


 そもそもが、英語の原題だって「月の裏側(DARK SIDE OF THE MOON)」ではなく、「SHARK SIDE OF THE MOON」というもので、DARKではなくSHARKなので「ダジャレかい!」とツッコミたくなります(強引に訳すなら「月のサメ側」?)。


 サメ人間とのハイブリッド女性(首にエラがある)は月面で進化したので環境に適応し、宇宙服なしでも月面で動けるとかいう御都合主義設定だったり。

 四つ足歩行で走って追いかけてくる巨大ザメ(足があるんです)から、月面走行車に乗って、月面を必死に逃げる、というスケールの大きさがよくわかんなくなるシーンもあります。


「シャークネード」シリーズで、サメ対人間の舞台は宇宙にまで進出したかと思いましたが、ついに月面でサメ人間とのバトルかぁー……と感慨深いです。


 もう一度言います!  


 サメ映画の懐は広いんです! そして深い!

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