第29話 頭に「へ」のつく映画といえば?

 学生時代、部屋に洗濯機が無かった私は、洗濯物が溜まると近所のコインランドリーにお世話になりました。


 今回は、コインランドリーの出てくる作品……。


 頭に「へ」のつく映画、「変態小説家」を紹介します。誤解しないで。まず話を聞いて。それほど変態めいた作品ではないので。


 原題は「A FANTASTIC FEAR OF EVERYTHING」。


 2012年のイギリス映画。監督はクリスピアン・ミルズ、出演はサイモン・ペッグ、クレア・ヒギンズ、アマラ・カラン、ポール・フリーマンほか。


 児童向けの絵本作家から、犯罪小説家に転身したジャック。


 ビクトリア朝時代の連続殺人鬼を題材にした小説を書くため、様々な殺人鬼についてリサーチを重ねていくうち、偏執的(パラノイア)な精神状態に陥り、「誰かに命を狙われている」という妄想が止まらなくなります。常にナイフを手離さず、些細なことに怯える日々。


 そんな彼の作品にハリウッドが興味を持ち、ジャックはエージェントと会うことに。


 大物と会うのに、汚れた服しか持っていないジャック。

 自分でも「部屋の一角から生ゴミみたいな臭いがすると思ったら、脱ぎ散らかした自分の下着の山だった」と驚くくらいなので、衣服の収納なんかその辺にポイと投げ捨てる感じで、部屋の中はヒドイ有様なのです。


 着る服を準備するため、ジャックは自室のシャワーで服を洗い、オーブンで乾かそうとします。なぜオーブンで。

 失敗してヤケドして、オーブンを故障させた挙句、ボヤ騒ぎまで起こす始末。

 仕方なく、服を洗濯するためにコインランドリーへ向かいました。


 ところが、ジャックは、幼い頃に母親からコインランドリーに置き去りにされたトラウマのせいで「コインランドリー恐怖症」だったのです。

 大人になるまでひとりでコインランドリーに入ったことがありませんでした。

 洗濯機や乾燥機の使い方もロクに分からず、挙動不審になった上に、肌身離さずナイフを持っていたことから、他の利用客から警察を呼ばれて、逮捕されてしまいました。


 ところが、警察が他の事件で出動することになり、現場を離れたおかげで逮捕はチャラに。

 

 ジャックは、コインランドリーの地下に謎の部屋があることに気付き、覗いてみると、後ろから頭を殴られて気絶。


 目覚めると、手足を拘束され、自由を奪われていました。

 扉を開けてやってきたのは、挙動不審なジャックに何度も遭遇し、声をかけてきた「地域支援担当官」の男で、知っている顔でした。


「助けに来てくれた」と喜ぶのですが、実は彼こそが犯人で、人を殺して指を切断したという殺人鬼「ハノイ・ハンドシェイク」だったのです……。


「殺すなら最後に物語を語らせてくれ、僕は作家なんだ……」とジャックは、絵本作家時代に考えていた「ハリネズミのハロルド」という物語を語り、犯人を諭そうとするのですが……。


 イギリスの俳優サイモン・ペッグ主演の、あれこれと考え過ぎて妄想が行き過ぎてしまう、偏執的(パラノイア)な人物の右往左往を見て楽しむ、ブラックな味わいに満ちたコメディ作品です。

 そういえば、「う」では「宇宙人ポール」、「し」では「ショーン・オブ・ザ・デッド」、これでサイモン・ペッグ作品が3本目になりますね。

 ……意図的ではなかったんですけど。シュミ、偏ってるなあ。


 なんというか、「変態小説家」という邦題のセンスが、ちょっとこれは……ねえ。

 ジャック・ニコルソンの「恋愛小説家」と掛けたつもりなのかもしれませんが、主人公は「変態」というより「偏執」な人物なので。


 まあ、映画の半分くらいの時間を、白ブリーフ一丁という姿の人間を「変態」と言えないかどうかと問われると、間違いなく「変態」寄りなんでしょうけどね。


 この作品について語ろうとしても、シュールな悪夢を丁寧に説明するような感覚で、いまひとつ要領を得ないような……。

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