第28話 頭に「ふ」のつく映画といえば?
大学の頃から、私は「観た映画の記録」をつけるようになりました。
大学の教授が「小論文や卒論で、思考を表現する技術を身につけるために、普段から文章を書く習慣をつけた方が良いです。日記とか。小説や映画の感想を残すなどでも良いですから」と皆に薦めていたのがきっかけです。
当時はまだパソコンを持っておらず、白黒画面のワープロ専用機で、保存媒体もフロッピーディスクでしたが、映画を観たあとでダダダとイキオイのままのキーボードを叩き、元々、映画好きだった私は、書いているうちに楽しくなってきて、映画の上映時間を過ぎることもしばしば。
たとえば、2時間の映画を観て、「このワクワクした気持ちを記録に残しておかねば!」と一気に書き始めると、気づいたら3時間かかってたりして。
3時間もかかって、あらすじや感想をまとめるなら、その2時間の映画をもう1回見れるじゃん?と思わなくもないですけどね。
でもまあ、「その時の気持ち」っていうのは、その時にしか書けませんし。
年を経てから同じ映画を観ると、違う視点、異なる感想になり、当時の自分の記録を見ると「こいつまだ考え方が若いわー」って苦笑したり。
書いたのは昔の自分なんですけど。
そんな流れで、家のテレビで「日曜洋画劇場」で鑑賞し、ワープロのキーボードを3時間叩き続けることになった、私が非常に興奮した映画……頭に「ふ」のつく映画、「フォーリング・ダウン」を紹介します。
原題は「FOLLING DOWN」。
1993年のアメリカ映画。監督はジョエル・シューマッカー、出演はマイケル・ダグラス、ロバート・デュバル、バーバラ・ハーシー、レイチェル・ティコティン、フレデリック・フォレスト、チューズデイ・ウェルド、ロイス・スミスほか。
太陽がギラギラと照りつける、猛暑のロサンゼルス。
白いシャツにネクタイ、メガネ、サラリーマン風の服装のウィリアムが主人公。
ウィリアムは、非常に真面目で几帳面。
自分の中のルールがハッキリしており、そこから逸脱するヤツが許せません。
クソ暑い中、道路工事のせいで車は渋滞。
ハンドルを握っているウィリアムは、なかなか進まない状況にイライラしています。
しかも、車のエアコンが壊れ、涼しい風が出なくなります。
換気のために窓を開けようとしたら、車の故障で窓が開かず、ドアごと開けます。
すると、夏の蒸し暑い空気と一緒に、一匹のハエが入って来て、手で追い払っても車の中をブンブン飛び回って、出て行こうとしません。共感できる苛立ち。
頭に来たウィリアムは、車を道路に乗り捨てて、歩き始めます。
後続車両の運転手が文句を言っていますが、彼は聞く耳を持ちません。
近くにあった公衆電話で、家に電話をかけます。
彼は、別れた妻の元にいる、幼い娘の誕生日に、プレゼントを渡しに行きたいのです。
話をしている最中で電話が切れ、ポケットを漁っても小銭がありません。
道端にあったコンビニに入り、
「電話をかけたいんだ、小銭に両替してくれないか」
と頼むのですが、店の主人は
「何か買ってくれ」
と邪険な態度。
コーラを一本買い、札を払って小銭に崩そうとすると、こちらの足元を見て暴利を吹っかけてきました。
ウィリアムは、店の主人が護身用に持っていたバットを奪い、怒りのあまり店中をメチャクチャに叩き壊すと、コーラの「定価」を払い、おつりの小銭を貰って、店を出て行きました。
さっきの公衆電話まで戻ろうとすると、不良の若者たちに絡まれ、ナイフを突きつけられました。
ブチ切れたウィリアムは、まだ持っていたバットで不良たちをボコボコにブン殴ります。そして、彼らが持っていたナイフをゲット。
再び公衆電話に戻り、小銭で妻の家に電話をかけるウィリアム。
ですが、妻は「絶対に来ないで、来たら警察を呼ぶわ」と怯えています。
キレると手が付けられない彼の性格を、妻は恐れているのです。
それでも、娘に誕生日プレゼントを手渡ししたい、という彼の意志は変わらず、妻の家を目指します。
そこに、さっきの不良の若者が、仲間を連れて戻ってきました! なんと彼らは銃を持っており、ウィリアムに向けて乱射してきました。
ウィリアムは避けますが、巻き込まれる周りの人たち(かわいそう)。
銃を持った不良たちは事故って自爆、ウィリアムは落ちていた銃を手に入れます。
こうして、行く先々で災難に巻き込まれては、激怒と暴力で返り討ち、どんどん強い武器を手に入れていく、バイオレンス版「わらしべ長者」なサスペンス作品です。
騒動は次第に大きくなり、警察から追われる身となったウィリアムは、果たして娘のところにプレゼントを届けに行けるのか?という主人公視点と、「暴力夫が帰ってくるわ!」と焦る妻の視点、そしてウィリアムと関わることになった定年間近の警官(めっちゃいい人)の視点、各人のエピソードが進んでいきます。
ラストが切ないです。
確かに、不運な主人公の「怒りの爆発」は、理不尽だし、そこまでやることないのでは……と思うところもあるのですが、見ていて心のどこかでスカッとするのです。
それは、実際の世の中が「理不尽」だし、「不運」に満ちているので、「こんな風に怒りを大爆発させたい!」と感情移入してストレス発散できるから……なのかもしれません。
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