第25回 頭に「の」のつく映画といえば?
玄関のドアを開けたら、ひとりの美女が目の前にいたとします。
雨の中、傘もなく、服はびしょ濡れ。
濡れた服からは、うっすらと下着も透けて……。
身体が冷えているのか、ガタガタ震えていて
「寒いの、シャワー貸してくれない?」
とすがるような眼でお願いしてきたら、あなたなら断れますか?
そして、美女がひとりではなく、ふたりだとしたら……?
想像するのは、なんともニヤニヤしてしまうシチュエーションかもしれませんが、親切心でシャワーを貸した男がとんでもない目に遭う作品……「一夜の快楽が、破滅の始まり。」というキャッチコピーの、頭に「の」のつく映画。
「ノック・ノック」を紹介します。
原題は「Knock Knock」。
2015年のアメリカ映画。監督はイーライ・ロス、出演はキアヌ・リーヴス、ロレンツァ・イッツォ、アナ・デ・アルマスほか。
(1977年のアメリカ映画「メイク・アップ」のリメイクで、この作品は1980年にスペインでもリメイクされています)
建築家のエヴァンは、芸術家の妻カレンとの間に二人の子供を授かり、社会的にも成功を収め、幸せな毎日を送っていました。
高級住宅地の豪華な一軒家に住み、敷地内には芸術家の妻が作った立体芸術が飾られています。
ある日、家族旅行の予定を進めていましたが、仕事の都合で、家でひとり、留守番をすることになったエヴァン。
妻と、小さな子供たちを送り出したあと、久しぶりに静かに仕事へ没頭できる時間を堪能していました。
夜になり、玄関をノックする音が聞こえました。
ノックの主は、ジェネシスとベルと名乗る二人の若い美女。
二人は、この近くに住んでいる友人を訪ねたが留守であり、連絡も取れず、道に迷い、激しい雨に降られて傘もなく、びしょ濡れになってしまった、と言います。
最初は、家族の留守中に若い女性を家に入れることに抵抗を示し、二人を警戒していたエヴァンでしたが、寒さに震える二人を見かねて、親切心から家へと招き入れ、シャワーを貸してあげました。
タクシーを呼んであげて、服を乾かすために乾燥機も使わせてあげました。エヴァンいい人。
あろうことか、シャワー室で美女二人が、エヴァンを誘惑してきました。
もちろん妻子のあるエヴァンは抵抗しましたが、積極的な裸の美女二人に責められ、ついに一線を越えてしまいます。
(エヴァンは仕事が忙しく、また、子育てに慌ただしい妻・カレンとは「しばらく夜の営みはおあずけ」という描写がありました。家族旅行先で、小さな子供を預け、久しぶりに夫婦で……と長い禁欲生活を破るつもりで、欲望を溜めに溜めこんでいたわけです。ちょっと、同情しちゃう)
ところが、この快楽が、恐ろしい悲劇の始まりだったのです……。
関係を持った翌日、美女二人は人が変わったように横柄な態度を取り始め、キッチンの物を勝手に食べては散らかしたり、「気に入ったわ。この家に住む」と言い出します。
「今すぐ出て行け!」と激昂するエヴァンでしたが、それに対して、美女二人は性的関係を隠し撮りしていた“証拠映像”を盾に、行動を開始するのです……。
美女たちの本性は、高級住宅地の家を盗聴し、ターゲットを決めては「男ひとりの時を狙い撃ちして誘惑し、既成事実を作って脅迫する」という犯罪を何度も繰り返しているコンビなのでした。
エヴァンを訪ねてきた仕事仲間を、美女二人は笑いながら殺害しちゃうのです!
エロティックな展開かと思いきや、一転して恐怖のどん底に落とされるスリラー作品です。
まあ、とにかく、美女二人の「アタマのネジの外れた悪党っぷり」が非常に突き抜けております。
こんな訪問者……怖いなあ。うっかり招き入れてしまいそうで。
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