第16回 頭に「た」のつく映画といえば?

 脚本家のコリン・ヒギンズは、ロサンゼルスからシカゴまでの特急列車で旅をした時、あまりにも退屈だったためにあれこれ想像して、列車で旅する主人公が、事件に巻き込まれる一本の作品を思いついたそうです。  


 退屈だったからこそ、楽しいことを思い浮かべて、物語が生まれた……もしもリアルの旅が楽しかったら、この作品は存在していなかったかもしれません。


 なんだか不思議な巡り合わせというか。


 退屈を糧にするスキルは、いつか、将来なにかの役に立つのかも。


 というわけで、そんな誕生の経緯がある、頭に「た」のつく映画、今回は「大陸横断超特急」を紹介します。 


 1976年のアメリカ映画。原題は「Silver Streak」。


 監督はアーサー・ヒラー、出演はジーン・ワイルダー、ジル・クレイバーグ、リチャード・プライヤー、ネッド・ビーティ、パトリック・マクグーハン、リチャード・キール、スキャットマン・クローザーズほか。


 ロサンゼルスからシカゴまで行く豪華旅客列車「シルバー・ストリーク号」に乗りこんだジョージ・コールドウェル。


 美術史家シュライナー教授の美人秘書・ヒリーと知り合い、客室が隣同士で、続き扉だったことから、一夜を共にする仲となりました。

 ジョージは走っている列車の窓から、シュライナー教授の死体が落ちたのを目撃!

 でも、ヒリーに言っても信じてもらえません。


 ロジャーという紳士に紹介され、目の前にシュライナー教授がいました。

「窓から落ちた教授は幻覚だったのか?」と思い直すジョージ。


 列車で知り合った陽気な男、ボブにこの話をすると、眼の色を変えます。

 実は、ボブの正体はFBI捜査官。

 ロジャーはこれまでもいくつもの犯罪を揉み消し、証拠を残さない男で、なんとしても逮捕したい一念で追跡して、この列車にボブは乗り込んでいたのです。


 絵画の贋作を売買している容疑のかかっているロジャーの事件で、シュライナー教授は何らかの証拠を掴んでいたこと、おそらくロジャーがジョージに紹介したのが教授の替え玉で、本物の教授は既に殺し、偽者の教授を裁判所で偽証させようとしている、ということが分かってきます。


 真相を知ったジョージは、ロジャーの手下(すごく強い)から、列車から放り出されてしまいました。

 なんとか無事だったジョージは、農場を営む老人から農薬散布用の飛行機に乗せてもらい、「シルバー・ストリーク号」の停車駅に先回り。再び、列車に乗り込みました。


 だが、列車に乗ってみると、捜査官のボブは殺されており、ジョージは身に覚えのないボブの殺害容疑で警察に追われることに。

 そして、教授の替え玉に気付いた秘書ヒリーは、ロジャーに人質にとられてしまいます。


 果たして自身の濡れ衣を晴らし、ロジャーの悪事を暴けるのか!?というサスペンス・アクション・コメディ。コメディ分がかなり強めです。


 この作品を見る時は、字幕版ではなく日本語吹替版をオススメします。

 主人公のジョージことジーン・ワイルダーは、名優・広川太一郎氏の名吹き替え。


 通算、特急列車からジョージは3回も落とされます。

 1度目はロジャーの手下に投げ落とされ、2回目は列車の天井で悪党と対決していたら信号にぶつかって追いていかれ、3度目は銃撃戦から逃れるためにやむを得ず鉄橋の川に飛び込む……のですが、そのたびに、農薬散布用の飛行機だったり、自動車泥棒と一緒に盗んだ車で長距離ドライブしたり、更にはパトカーを盗んだり、なんとか戻って特急列車の停車駅に先回りし、追いついて列車に乗り直すのがすごいです。


 原語では、列車から落ちたジーン・ワイルダーがこぼす愚痴は三度とも「Son of a bich!」なのですが、広川氏の名吹き替えにより「覚えてろ!」(1回目)「チキショー、まただもの!」(2回目)「これで三度目だもの~!」(3回目)と言葉を変えて、コミカルな感じになっているのです。他にも、広川氏のアドリブがいっぱい。見ていて楽しいです。

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