第13回 頭に「す」のつく映画といえば?
つき合い始めた恋人の、過去の恋愛遍歴というのは気にしたらキリがないので「あんまり知りたくないし聞きたくない」と個人的には思うのですが、今回紹介する作品は「私と付き合うのなら、過去の元カレたちを倒してからにして!」とよく分からないルールを突き付けられて、本当に元カレたちを倒しに行くストーリー。
頭に「す」のつく映画、今回は「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」を紹介します。
原題は「Scott Pilgrim vs. the World」。
2010年のアメリカ映画。監督はエドガー・ライト、出演はマイケル・セラ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、キーラン・カルキン、クリス・エヴァンス、アナ・ケンドリック、アリソン・ピル、サティヤ・バーバー、ジェイソン・シュワルツマン、ブランドン・ラウス、ブリー・ラーソン、斉藤慶太、斉藤祥太、エレン・ウォンほか。
舞台はカナダのトロント。
売れないバンドのベーシスト、22歳のスコット・ピルグリムは、ニューヨークから引っ越してきたラモーナという女の子にひと目惚れし、彼女と付き合うことに。
その後、地元のバンド大会に出場したスコットは、ラモーナの元カレ、マシュー・パテルと戦うことになりました。
インド映画のような踊りを踊ったあとに、指先から炎を放つ、不思議な技を使うパテルをなんとか撃退したスコットは、ラモーナから「自分と付き合うためには、7人の邪悪な元カレ軍団と戦わなければいけないの」と告げられます。なぜ。
とりあえずはパテルを倒したので、あと6人です。
2人目は、映画の撮影で町に訪れていた俳優のルーカス・リー。
自分で戦わず、自分そっくりの「スタントマン軍団」に戦わせるリーでしたが、スコットの挑発で「階段の手すりをスケボーで滑り降りる」スライディング対決をすることになり、失敗して自滅。
ルーカスは失敗した瞬間に、コインをまき散らして消えていきます。ゲーム的演出です。
3人目は、トッドというマッチョな青年。
スコットが昔付き合っていた元カノのナタリーが今付き合っている「今カレ」でもあります。
筋肉モリモリなクセに
そこにヴィーガン取締警察(なにそれ)が来襲! 乳製品は「野菜じゃない」のでアウトなのだそうです! 超能力を没収されてしまい、敗北。疑問やツッコミどころは多いですが、ここは黙って続きを見ましょう。
4人目は「なんとなく好奇心で」とラモーナが一時的に付き合っていた女の子、ロキシー。
パンクロックな彼女は自分のベルトを引き抜き、鞭のようにして攻撃してきました。なかなかの難敵。
ですが、ラモーナの「ひざ裏が弱点よ! そこが性感帯なの!」というアドバイスを受けて、スコットがロキシーのひざ裏を触ると、ヘロヘロに腰砕けになりギブアップ。衆人環視の前で性感帯を叫ぶなよラモーナ。というか、ラモーナって女の子もアリなのか!? スコットくん、相手は選んだ方が良いのでは……と思えてきましたが。
こんな調子で、次々と倒していき、最終的にラモーナと付き合うことができるのか!?というポップな印象のアクション・ラブ・コメディ。
とにかくストーリー展開のテンポが速く、場面切り替えがポンポンと進むし、ラスボスには「“邪悪な元カレ軍団システム”を作った男」や、スコットくんの影的存在である、そっくりな外見を持つ「ネガ・スコット」まで登場したりして! 収拾がつくのか!?
原作はブライアン・リー・オマリーのコミック。
原作者が、日本のアニメ・マンガ・ゲームのオタクで、このコミックも、日本の『サルでも描けるマンガ教室』カナダ翻訳版を読んで、その中で
「少年マンガのセオリーは次から次に強い相手が出てきて、そいつらを倒していくバトル形式なら人気が取れる」
と教えていたため、それを信じて描いていたらしいです。
いやはや、オープニングのユニバーサルの画面(地球の周りに「UNIVERSAL」と文字が巻きつくアレ)の音楽が、8bit風アレンジになっているあたり、ファミコン世代のハート鷲掴み。そして、劇中では「ゼルダの伝説」について言及するシーンもあり(BGMも使っています)、任天堂に許可を得るためにこの作品を送り「任天堂のBGMは僕らの世代にとっては童謡に等しい」と手紙を書き、宮本社長から快諾されたという、心温まるエピソードも。
電話が鳴れば「RRR」と文字が出る、決めるシーンで集中線が出る、走れば背景に動作線、いちいちテロップでキャラの名前と説明が出る、テンポよく「コマ割り」で見せる演出など、原作がマンガだけあってすべてが漫画チック。
敵を倒せば、死体になるのではなく、大量のコインになり、得点が表示されたり、対決シーンは毎回「VS」と文字が出て頭上にライフゲージも出現、格闘ゲームのようになったり、マンガ・ゲーム好きな人間にはたまらない演出の数々。
ツッコミどころは多いですが、イキオイで最後まで見れてしまう心地よさがあります。ゲーム好きには特にオススメ!
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