第11回 頭に「さ」のつく映画といえば? 

 メイドさんは好きですか?


 デスゲーム系作品は好きですか?


 さて、今から紹介する作品は、ブロンドの巨乳ミニスカメイドが胸を揺らしながら走ったり、謎の屋敷で殺されたりする……そんな内容の、頭に「さ」のつく映画。


「殺人ゲームへの招待」です。


 1985年のアメリカ映画。監督はジョナサン・リン、出演はレスリー・アン・ウォーレン、ティム・カリー、アイリーン・ブレナン、マデリーン・カーン、クリストファー・ロイド、マイケル・マッキーン、コリーン・キャンプほか。


 邦題こそ「殺人ゲームへの招待」という物騒なタイトルですが、原題は「Clue」で、これはイギリス発祥のボードゲームの名前です。

 殺人事件が起きて、犯人は誰、殺害場所はどこ、凶器は何か……と推理する知的なゲームですね。日本ではあまりメジャーではありませんけど。


 推理ボードゲームが原案となっている以上、殺人事件が発生し、「犯人は誰なのか」を観客に問いかける仕組みなのですが……先に見た人が犯人をバラしても、後から見る人はそれを気にせず楽しめるという、一筋縄ではいかない「仕掛け」がしてあります。

 その「仕掛け」については、またあとで語るとして……。


 舞台は山奥の一軒家。豪華なお屋敷です。


 そこで開かれる晩餐会に招かれた、訳有りな男女6人。

 ここでは素性は明かさず、偽名で通した方が良い、と屋敷の入口で執事から忠告されます。

 6人をもてなすのは、執事やメイドや料理人を従えた、ミスター・ボディという謎の人物。態度がすごくエラソーです。


 招待客たちは全員、過去の罪をネタに、ミスター・ボディに脅迫されていました。

 脅迫者が、直接顔を見せるなんて、かなり危険なことですし、なぜ今になって一同を集めて晩餐会なんて計画したのか?


 そんな中、突然停電になり、電気が点くと、ミスター・ボディが床に倒れていました。

 誰かが脅迫者を殺してしまった!


 警察に電話した方が良いのか、いや、全員に動機があるのだから、下手に動くと疑われることになりかねない……。

 脅迫者が殺されているという状況、自分が逮捕されなかったとしても、警察の捜査が入れば、脅迫のネタである自分の過去の秘密も露呈してしまうかもしれない! このことが各人の行動にブレーキをかけるのです。


 そんな中、ひとりの警察官が屋敷にやってきました。

 偶然にも山道を通りかかり、この屋敷を見つけた、署に連絡したいことがあるので電話を借りたいというのです。


 死体が見つかったら、自分が殺したと思われるかもしれない! 

 警察官が電話する間、皆は協力して死体を隠そうとします。


 ところが、誰かが裏切ったのか……その警察官まで何者かに殺されてしまいました。


 犯人は誰なんだ、この中の誰かに違いない……そんなミステリめいた設定ではあるのですが、次から次へと訪れる来客は殺され、死体の数は増え、招待客たちは死体の扱いにも慣れていき……という、ドタバタコメディな内容となっています。

 最初の頃は、死体を発見するたびに悲鳴をあげていたのに、死体の数が増えるたびに、見つけてもリアクションが薄くなって、次第に無言になり「またかよ……」みたいなウンザリした空気になるのが笑えます。


 屋敷は、抜け道や隠し扉があったり、密室トリックにこだわる人にとってはアンフェア極まりない建物。


 そして、ネタバレに寛容な「仕掛け」というのは、なんと、結末が3通りある、ということです。


 犯人も違う。探偵役も違う。真相が全く異なる。


 そんなマルチエンディング方式で、映画館によっては違う結末の映画が上映されていたというのですから、驚きです。


 ただ、違うのは終盤だけで、途中までは一緒です。


 つまり、「解釈や後付け設定次第で、犯人はどうにでもできる!」と開き直っちゃって、脚本が構成してあるんですね。その辺は、ボードゲームが原案となっているので、決まった筋道が無いゆえのメリットでしょうか。

 コイツにはこんな過去があった! コイツにもこんな背景があった! コイツとコイツは裏で繋がっていたのだー! 実は私が本物のミスター・ボディだったのだよー! な、なんだってー! と、最後になって一気に明かされても。

 ぶっちゃけ、クライマックスの「なんでもアリ感」というか、強引に着地させるチカラワザとか、そういうところを楽しむ作品なのではないか、と思います。


 この展開には穴がある、とかそういうツッコミをする次元ではなく、元々どのようにでも変幻自在になるミステリコメディなんです。

 不正解はなく、模範解答もなく、どう書いても採点者が正解にできる、みたいな。


 シャーロック・ホームズみたいに「不可能なものを消去していくと、それがどんなにあり得ないようなことに思えても、残ったものが真実である」とやっていくと、全部消去されちゃって、多分なにも残らないですよ、これ。


 そういった意味では、犯人当てとかトリックとかを楽しみたいガチガチなミステリファンには向かないかもしれませんが、コメディが好きな方には、オススメです。


 あ、そうそう、巨乳のメイドさんが好きな人にもオススメ。


 ちなみに、DVDなどのソフト版には、3種類のエンディングがすべて収録されていますのでご安心を。

 ランダムでどれかの結末に辿り着くパターンと、違う結末が連続して流れるパターン(ひとつが終わっても「こんなのはいかが?」と別バージョンのエンディングがすぐに始まる)がありますので、お好きな方をどうぞ。個人的には3つ目の結末が好きなんですよね、意外な探偵役で。

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