EPISODE3 陽葵くんと放課後デート

今日の体育は控えめに地獄でした・・・

なんなんですかあれ。手と足が全然違う動きしてたじゃないですか。

そんな離れ業がみんなできると思わないで貰いたいです。


どうも皆さん、神戸かんべ陽葵ひなたです。


皆さんは、体育の授業で『これはどうあがいてもできない!』っていう授業内容はありますか?だいたいの人は1つくらいあると思うんですよ。例えば『サッカーだけムリ』と、同じクラスのバスケ部の人がぼやいてましたよ。


僕はダンスです・・・

手と足をバラバラに動かすことがどうしてもできないんですよ。

平泳ぎみたいに全然違う動きでも一定のリズムに乗っていたらできるんですが、リズムまで変えられたらもう頭がこんがらがります。


そんな地獄の時間から解放され、今は放課後です。部活動に行く人や自習室で勉強する人、家に帰る人などみんなそれぞれに動いています。

僕はその中で家に帰る人なのですが、今日は掃除当番なので机の拭き掃除をしています。水拭き用雑巾を右手に、乾拭き用雑巾を左手にもって、30個の机を片っ端から無心で拭いていきます。


だって蘭さんを待たせているから!!


「…神戸君机拭くのはっや」

「…動きに一切無駄がないね」

「…あれって一番面倒くさくて時間がかかるそうじだよ・・・な?」

「…俺たちにとっちゃそうなんだけど・・・神戸は違うんだろ」

「…まあ、その仕事を率先してしてくれてるからありがたいのは確かだけどね」

「「「それはそう」」」


あと10個・・・もう少し・・・



莉「お~、ひーくんの必殺家事スキルだ~」

宗「なんだそれ」

蘭「見ればわかる」

宗「・・・うわすっご」

莉「ホントひーくんは家事スキル高いよね~」

蘭「ああ。私はいつもお世話になってるよ」

宗「あぁ、弁当な。あれめっちゃウマそうだよな~」

蘭「実際とんでもなく美味い」

宗「マジか」

蘭「・・・やらんぞ」

宗「わーってるよ!」

莉「莉心もしばらく食べてないな~。また作りに来てもらおっかな~」

蘭「なっ!?」

宗「おいおいそれはずりぃぞ、莉心~」


ふう、拭き終わりました。タイムは178秒ですか。まあまあですね。

さて、蘭さんのところに行きましょう。


宗「莉心も家事スキル高いよな。なんならこのクラス1番かもな。」

莉「莉心はそうじゃないと思うな~」

蘭「そうなのか?陽葵といい勝負、といったところだと思うが?」

莉「う~ん、実はひーくんは莉心の家事の先生なんだよ~」

宗「あっマジで!?・・・あ~でも陽葵のレベルだったらあり得るのか」

莉「だから、多分莉心もひーくんに比べたらまだまだなんだよ~」

蘭「それだけ陽葵がすごいのか・・・」


んん?何故か僕が話題になってますが・・・なんでしょうか?

僕、気になります!・・・っていうほどではありませんけど。


陽「何がすごいんですか?」

宗・蘭「うわぁ!!?」

莉「あ、ひーくんお疲れ~」

陽「お疲れ様です。それで、僕がすごいというのは・・・?」

蘭「あ、ああ。陽葵の家事スキルがすごいという話だよ」

宗「そ、そうそう。その、陽葵の机拭きを見ててな」

陽「ああ、なるほど」


そういうことでしたか。まあ、家事スキルは自然と身に付きましたからね。

そんな褒められることでもない気がしますが・・・

・・・あんなことがあったせいですし。


蘭「陽葵?どうした?」

陽「!いえ、少し考え事を」

蘭「そうか?ならいいけど・・・言いたくなったら言ってくれよ?」

莉「そうだよ~。抱え込むのはよくないよ~」


あ、これりっちゃんにはバレてますね。まあ、知ってますしね。

りっちゃんのことですから他人に言いふらしたりはしないと思いますけどね。


陽「ご心配ありがとうございます。何でもありませんよ」

蘭「・・・そうか。なら何も言わない」


やっぱり蘭さんがイケメンです。

蘭さんイケメン過ぎ課?


・・・もしかして僕女々し過ぎ課?


・・・・・・まあ、それは置いときまして。

僕は蘭さんにこっそり近づきます。


陽「蘭さん蘭さん」

蘭「陽葵?」

陽「蘭さんは今日なにか用事あります?」

蘭「ないけど・・・いきなりどうした?」

陽「久しぶりに帰り道デートしたくて」

蘭「~~~~~っ!!!陽葵!!!」

陽「うわっぷ」


蘭さんに抱き着かれてしまいました。今回はなんとなくわかってたので、大きく戸惑うことはありません。・・・ほんとですよ?


蘭さんの下着の感触が直に来ますが、気にしない気にしない、です。


むにゅん


き、気にしない、気に、しない・・・です。

頑張れ陽葵!ここで揺らいではいけません!


蘭「行こう陽葵!!今すぐ行こう!!」

陽「は、はい!」


すんでのところで蘭さんが離れて、何とか事nothing無き事gettingしました。危なかったです・・・


宗「じゃ、俺たちは部活行くから。楽しんで来いよー」

莉「また明日ね~。ばいば~い」

蘭「ああ、また明日」

陽「さようなら~」


帰り道―――――


さて、どこに行きましょうか。


蘭「どこにいこうか?」

陽「どこにしましょう?」

蘭「・・・決まってないのか?」

陽「はい。だって、久しぶりに蘭さんとゆっくり帰りたいだけですから」

蘭「陽葵・・・!じゃ、じゃあ朝に言ったパンケーキ屋さんに行こう!」

陽「いいですね!行きましょう!」

蘭「陽葵・・・大好き」

陽「僕も大好きです」

蘭・陽「・・・えへへ」


そんなこんなで朝日ヶ丘駅に着き、そこから各駅停車で3駅の高瀬ヶ丘に向かいます。時間は16:10分。ちょうど人がいない時間のようで、僕らが乗った車両は僕らと端っこで寝ているおばあさんだけです。


今なら・・・いけますかね?


蘭「・・・ねえ、陽葵。今なら、大丈夫だと思うんだけど」

陽「・・・そう、ですね。今なら・・・」

蘭「陽葵・・・」

陽「蘭さん・・・」


はむ、ちゅ・・・


僕と蘭さんは電車の中でこっそり唇を重ねました。

短い時間の中で、瑞々しくて暖かい蘭さんの唇をできる限り味わいます。

1秒か、10秒か、はたまた1分か。どれだけ経ったか定かではありませんが、

名残惜しさを感じながらどちらともなく唇を離します。


蘭「・・・ふふっ・・・しちゃったね」

陽「・・・しちゃいましたね」

蘭「・・・もっかい・・・する?」

陽「・・・はい」


〔次は 高瀬ヶ丘 高瀬ヶ丘 総合病院前です〕


蘭・陽「あ」

陽「・・・おあずけですかね」

蘭「・・・むう。仕方ない」


蘭さんが拗ねた顔に。めちゃくちゃかわいいですが、このまま放っておくのは彼氏としてよくないと思うんです。なので・・・


陽「・・・蘭さん」

蘭「・・・ん?陽葵?どうし―――」


ちゅ・・・


陽「・・・今はこれで我慢してくれませんか?」

蘭「・・・ひゃい。我慢しましゅ」

陽「よし、蘭さん、行きましょうか・・・蘭さん?」

蘭「・・・・・・はっ!?すまない!ボーっとしてた・・・」

陽「取り敢えず行きましょう?」

蘭「・・・ああ、行こうか。・・・・・・陽葵」

陽「はい。どうしました?」


ぎゅ~~~~~


蘭「・・・これ以上私を惚れさせてどうしたいんだ?」

陽「・・・どうしたいとかはありませんよ。僕は自分の気持ちを行動に移してるだけですから」

蘭「・・・ほんと、大好き・・・」

陽「僕も大好きですよ。蘭さん」

蘭「ふ~~~~~~~~~~・・・よし、復活」


お、蘭さんが『復ッ活!』したみたいですね。


陽「パンケーキ楽しみですね!」

蘭「ああ!おいしいのは間違いないが、どんな風においしいのか気になるな」

陽「おいしいのは間違いないんですか?」

蘭「ああ。母さんが言ってたから間違いない」

陽「蘭さんのお母様ですか?」

蘭「ああ。私の母は元芸能人でね。舌が肥えてるんだ」

陽「なるほど。そのお母様が言うのなら・・・」

蘭「間違いない、ということだよ」


蘭さんのお母様が芸能人だったとは・・・でも蘭さんの美貌を見るとあり得る、と思えてしまうのがすごいところです。


駅から徒歩2分。そのお店の名は『幸福のパンケーキ』。

全国に20店舗ほどを展開する、ふわふわパンケーキが有名なチェーン店だそうで、有名人も定期的に食べに来るほどの人気だそうです。 (ソース:神林蘭)

外装がとってもおしゃれです。


蘭「ここだな」

陽「ここですね」


カランコロンカランコロン


店「いらっしゃいませ。何名様でございますか?」

蘭「2人です」

店「承知いたしました。お席ご案内致しますね」


店内もとんでもなくオシャレです・・・


店「こちらでございます」

蘭「ありがとう。陽葵、どうぞ」

陽「え、あ、すみま―――ありがとうございます」

蘭「フフッ、どういたしまして」


蘭さんにエスコートされてしまいました・・・


なんというか、こんな僕にも男のプライドというものが最低限あるわけでして。

ジェンダー平等が叫ばれる現代に、男だからとか女だからとか言いたくありません。蘭さんは僕に男気を求めているわけではありませんし、僕の自己満足なのはわかってます。ですが、僕がエスコートしたかったですね・・・


というよりかは、僕含め大多数の日本人男性は女性にエスコートされることに慣れていないと思うんですよ・・・

でも蘭さんと一緒にいると慣れてきそうですよね。他人任せになってしまいますがずっと一緒にいれば勝手に慣れるだろうということで。


店「お冷失礼します。こちらメニューでございます。ご注文がお決まりになられましたらお呼びください」

陽「ありがとうございます」


さて、何を食べましょうか――――って多っ!?あとお高いです・・・

まあ高いのは当たり前でしょうからそんなに気にしてないのですが、さすがに多すぎません?えっこれ僕食べきれる自信ないですし、もし食べきったら夜ご飯食べられなくなると思うんですけど。


周りを見ると皆さん普通に全部食べてます。

細身の女性がほとんどなのですが・・・よ、よくお腹に入りますね・・・


蘭「・・・うわあ太りそうだな・・・でもここで我慢するのもなあ・・・しかし多少無理して食べるのも・・・う~ん・・・」


蘭さんはなにやらブツブツ言いながら迷っているようですね。

まあこれカロリーもすごく高そうですし、そうなれば自分の体と相談したいときもありますよね。僕もお腹と相談しないといけませんし。


う~ん、一番いいのは自分が頼んだものを蘭さんと分けるか、蘭さんが頼んだものを分けてもらうことですね。

ですが流石これはに蘭さんと相談しないといけません。しかしその蘭さんは念入りに体と相談してますし・・・


うん、聞いちゃいましょう。蘭さんの突破口にもなるかもしれませんし。


陽「蘭さん蘭さん」

蘭「う~んでもなぁ・・・はっ!?ど、どうした?」

陽「僕この量は一人で食べきれないので、良ければ僕のパンケーキを半分たべてもらってもいいですか・・・?」

蘭「っ!?あ、ああ。私はいいけど・・・陽葵はそれで足りるのか?」

陽「無理やり詰め込むことはできますが、そうすると晩御飯が食べられなくなっちゃうんです・・・」

蘭「そ、そうか・・・なら、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

陽「ありがとうございます!」


これで解決ですね!


蘭「じゃあ、何食べようか?」

陽「僕はスタンダードなものでいいですけど・・・ふたりで分けるならちょっと贅沢なものでもいい気がしますね」

蘭「それは一理あるね。パンケーキを半分にしたら罪悪感も半分だし」

陽「あははっ、違いありませんね」

蘭「よし、その事実を踏まえて・・・何にする?」


う~ん、まず王道の『幸福のパンケーキ』は除外しましょう。そしてフルーツ系もいったん除外します。そうすると残るのは・・・


陽「ティラミスパンケーキ、ですかね?」

蘭「奇遇だな。私もそれがいいと思っていたんだ」

陽・蘭「・・・ふふっ」

陽「ボタン押しますね」

蘭「ああ」


ピーンポーン


店「ご注文をお伺いいたします」

陽「ティラミスパンケーキを1つ」

店「ティラミスパンケーキお一つですね。お飲み物はどうされますか?」


・・・あ、考えてなかったです。


蘭「陽葵はいつものアイスカフェオレでいい?」

陽「えっ、あ、はい」

蘭「OK。じゃあ、アイスのコーヒーとカフェオレを1つづつください」


おおっとここで蘭さんの必殺技!キラキライケメンオーラだ~!!

このオーラを浴びた(主に)女性は蘭さんに見とれてしまい、約3秒間思考停止してしまう!


店「あ・・・・・・・・・は、はい!承知いたしました。出来上がる迄しばらくお待ちください」


蘭「ありがとう。じゃあ、出来上がるまで土曜日のデートの予定を決めようか」

陽「そうですね」


そのあとゆっくり15分ほど休日デートの予定を考えました。













あ、パンケーキはおいしかったです。胃もたれしそうになりましたけど。


――――――――


店「あのバリイケメンだった・・・はっ!?私の百合の扉が!?」


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