EPISODE2 陽葵くんと昼休み
突然ですが、男性の皆さんは他の人のためにお弁当を作ったことがありますか?
ラブコメ系のラノベでよくヒロインが彼氏(または好きな人)のためにお弁当を作るシーンがありますが、逆に主人公が彼女のためにお弁当を作るシーンって見かけませんよね。
ということは、蘭さんのためにお弁当を作ってる僕はレアケースじゃないかなと
思ったり思わなかったり、思わなかったり思ったりしました。
正直に言うと、現代の日本人男性がどれだけ作っているのかわからないので何も言いようがないんですよね・・・
どうもこんにちは、
今はお昼休みです。学食で食べる人が席を取ろうと必死ですね。廊下を走ったら危ないですよ~
蘭「今日も秘密の場所で・・・と、言いたいところなんだが」
陽「?」
蘭「今日は教室で食べてもいいか?」
陽「いいですけど・・・どうしたんです?」
いつもは蘭さんが率先して『秘密の場所』に向かうのですが・・・
蘭「次は体育だろう?だから、あそこだとゆっくる食べられないかもしれない」
陽「あー、確かに、いったん教室に戻らないといけないですもんね」
蘭「そういうこと。だから、教室で食べたいんだが・・・いいか?」
陽「はい。大丈夫ですよ」
蘭「よかった。じゃあ早速開けよう・・・お~~。ん?これは・・・?」
弁当を開けた蘭さんが見慣れないものを見つけたようです。
それこそ僕が考えた新メニュー、『鶏もものパン粉から揚げ』です!
・・・名前そのまんま過ぎましたかね?
でも割と料理名はそのまんまネームが多いですよね。『ゆで卵』とか『お浸し』とか『焼き鮭』とか。しかも、そのまんまの方が分かりやすいですよね。ね?
蘭「これは・・・なんていうメニューなんだ?」
陽「鶏もものパン粉から揚げ、です」
蘭「なるほど。陽葵のネーミングは分かりやすいな」
陽「料理名を複雑にする意味がないですから」
蘭「それは確かに・・・では、いただきます」
陽「どうぞ」
蘭さんがパン粉揚げを一口。
実際は1秒もないはずなのに、体感ではすごく長く感じます
正直、めちゃくちゃ緊張する瞬間です・・・
蘭「パクッ―――うわうっま!!!」
陽「うわあ!?」
食べた瞬間蘭さんが大声をあげたせいでこっちも飛び上がってしまいました。
心臓は!心臓はどこですか!?・・・あ、ちゃんと
それにしても・・・び、びっくりしました・・・
莉「蘭ちゃ~ん?どうしたの~?」
蘭「・・・はっ!?ああ、いや、その・・・」
莉「?」
蘭さんが恥ずかしがるなんて・・・珍しいですね。
蘭「陽葵のお弁当がうますぎて・・・つい・・・・・・」
莉「あ~なら仕方ないね~」
あ~そういう・・・いや、仕方ないんですか?
しかし、蘭さんの恥ずかしがる表情という非常にレアなものを見せていただけたので僕は大満足です。・・・今の発言ちょっと変態チックでしたかね?
何はともあれ蘭さんに気に入ってもらえたのでとっても嬉しいです。
莉「で、そのおいしすぎる具材ってなに~?」
蘭「あ、あげないぞ!?」
莉「わかってるよ~。で、なになに~?」
蘭「・・・これ。鶏もものパン粉から揚げ、らしい」
莉「うんうん。いつものそのまんまネーミングだね~。ひーくん、レシピ教えてもらえる~?」
ああ、いつものですね。
りっちゃんは僕が考えたメニューのなかで蘭さんに好評だったものを彼氏の宗弐さんにつくってあげたいんだそうで、蘭さんの反応を見るたびにレシピを聞きに来るんですよ。
特に断る理由もないですし、秘密にしているわけではありませんのでいつも渡しています。
陽「いいですよ。またLAINで送りますね」
莉「ひーくんありがと~。えへへ、宗君よろこんでくれるかな~・・・そのためにも~、ねえ蘭ちゃん。」
蘭「なんだ?」
莉「味見もらってい―――」
蘭「ダメ」
莉「むぅ。ねえひーくん・・・」
陽「これは蘭さんのものですから。蘭さんと相談してください。」
莉「蘭ちゃん・・・」
蘭「そんな顔してもあげない」
莉「むううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
莉心さんがほっぺをパンパンに膨らませて不服をアピールしています。
写真を撮って宗弐さんに送ってあげたいですが・・・そんなことをしたらさらに不機嫌になってしまいますからね。やめておきましょう。
陽「まあまあ莉心さん。また残りを送りますから」
莉「やった~~~!ひーくんありがと~~!」
すぐに満面の笑みになるりっちゃん。これは・・・謀られましたかね?
陽「・・・」
莉「・・・?(冬の晴れた空のように澄み渡った瞳)」
・・・考えすぎでしょう。りっちゃんに限って謀るなんてことはないですよね。
ただ、僕のフォローは読まれていたかもしれません。助け船が来る前提で蘭さんと交渉していた・・・気がするだけなんですけどね。
蘭「だけど、本当に美味いな・・・これ、毎日入れてくれないか?」
陽「蘭さんの希望をかなえたいのは山々なのですが、このメニューは準備や
これ下拵えに3時間以上かかりますから、平日にしてしまうと晩御飯を作る時間が無くなってしまうんですよね・・・
そこだけがこのメニューの難点です・・・
蘭「う~ん、そうか・・・よし、わかった。毎日じゃなくて、毎週月曜日にこれをメインディッシュにしたお弁当がしてもらえないかな・・・?」
陽「わかりました。頑張ります!」
蘭「ありがとう。じゃあ、ほかのおかずもいただきます・・あ、うっま」
他のおかずも蘭さんに喜んでいただけて嬉しい限りです。
特定の誰かのために作った料理って、その誰かに喜んでもらえることが一番うれしいんですよ。なので、皆さんもパートナーや親御さんの作った料理はしっかり感謝を口に出してから食べてください。それだけで作った人は喜びます。
宗「相変わらずうまそうに食うなぁ、神林」
蘭「ほんとに美味いんだから仕方ない」
宗「そっか・・・そんなにうまいなら一回だけでも食ってみたいなぁ・・・」
莉「わたしのおべんとじゃ・・・不満・・・?」
宗「ん?そんなわけないだろ?めっちゃうまいんだから。いつもありがとな」
莉「えへへ、えへへへへへへへへへへへへへへぇ」
宗弐さんの必殺技、りっちゃんナデナデですね。
技 :りっちゃんナデナデ莉
効果:りっちゃんをナデナデすることでりっちゃんの機嫌を上昇させ、上機嫌になったりっちゃんが発するほんわかオーラによって周囲5mの雰囲気を浄化する
ちなみにこのオーラは周囲の生徒に4倍弱点なので、オーラに満たされたものは例外なく心が軽くなります。もちろん僕も。
と、そんな茶番は置いておいて。
莉「でも、ひーくんのお弁当食べたいって・・・」
宗「莉心も食べてみたくないか?あの神林が虜になる弁当」
蘭「おいあの神林とはどういうことだ」
宗「いつもの神林のキャラを考えろ」
蘭「・・・むう」
莉「それは・・・食べてみたいな・・・」
宗「だろ?だからさ、いつもじゃなくて例えば花見の時とかに食べてみたいなって思っただけだよ。いつもの弁当は莉心のがいいな」
莉「えへへ~、頑張るね」
宗「おう、ありがとうな」
お二人がいい感じになっている間、僕は別のことを考えていました。
う~む、そうですか。宗弐さんも莉心さんも僕の弁当食べてみたい・・・と。
文化祭は買い食いとかしたいですし、そもそも4人分作る時間がない可能性が高いですね。ならば次の行事は秋の遠足ですね。確か曜日は金曜日・・・ですが、前日が祝日のはず・・・
僕はカレンダーアプリを開きます。
うん。記憶通りですね。ただ、延期になると予備日は厳しいですね・・・
あ、でもそのまま学校に持ってくればいいですね。
陽「・・・よし。これなら大丈夫ですね」
宗「神戸?どうした?」
陽「少し考え事を。えっと、一か月後くらいに秋の遠足があるじゃないですか」
莉「いきなりだね~」
宗「あるけど、それがどうした?」
陽「その日でよければ僕がお二人のお弁当をお作りしますが、いります?」
莉・宗「いる!!!」
陽「うわっ」
なんか今日はびっくりすることばかりです・・・なんなんでしょうか・・・
はっ!?これが厄日というものですか?・・・にしては内容がショボい気もしなくもないという訳ではないと言ったら嘘になる、といったとこでしょうか。
国語の先生もビックリ、4重否定です!
・・・なにしてるんだろ、僕。
蘭「よかったな。二人とも」
宗「珍しいな。いつもの神林ならこういう時取り乱すはずなんだが・・・」
蘭「フッ、私も成長しているということだ」
莉「本音は~?」
蘭「陽葵だから、私のお弁当は私の好物を詰め込んだ特別なお弁当を作ってくれるはずだからな。だから問題ない」
宗「神戸。神林はそういってるが?」
陽「もちろん作りますよ?」
宗「おおう、さも当たり前のことのように・・・」
陽「当たり前のことのように、ではなく当たり前のこと、ですから」
宗「神林への愛がすごい!!」
実は蘭さんへの愛は世界一だと自負しているのです。えっへん。
とまあそんなことは置いといて、です。
陽「お二人は入れてほしい具材はありますか?」
莉「だし巻き卵と~、ほうれん草のナムルかな~」
宗「俺は莉心の二つ+なんでもいいから味の濃い肉がほしい」
陽「りょーかいです」
味の濃いお肉は・・・豚バラの岩塩グリル焼きでいいですかね
キーンコーンカーンコーン・・・
昼休みは終わりですか・・・
ということは次は体育・・・
ということはダンス・・・
地獄だああああああああああ!
宗「お、そろそろ移動しないとな」
蘭「いこうか陽葵・・・陽葵?」
陽「うう・・・ダンスいやだぁ。できない・・・」
蘭「陽葵・・・大丈夫。できないならできなくていいんだよ。ね?」
陽「蘭さん・・・」
蘭「それに・・・私がついてるから。」
・・・それもそうですね。蘭さんの前で逃げるなんてそんなかっこ悪いことできませんし、なんなら蘭さんが全部カバーしてくれそうです。
・・・よし、頑張りましょう
陽「・・・よし、頑張ります!」
蘭「その意気だ。・・・頑張ったら、ちゃんと甘やかしてあげるから、ね?」
陽「っ!?」
蘭「ふふっ」
・・・やっぱり蘭さんがイケメンです。
蘭さんに甘やかしてもらうためにも頑張りましょう。
人間、俗な理由があった方が頑張れたりしますからね。
受験とかもいまいち頑張れないっていう人は、1日頑張ったら何か食べる、とか好きなゲーム30分やる、とか、そんなご褒美を作るとその場のしのぎかもしれませんがモチベーションが上がるかもしれませんよ。
よければ試してみてくださいね。
宗「おーい、行くぞ二人とも~」
莉「遅れちゃうよ~?」
陽「あ、今行きます!」
さあ。神戸陽葵、出陣です!
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