ついつい甘えちゃう

絵理(14 歳)、パブロ(16歳)。

2人が出会って間もない頃の話…。



「パブロ君、 孝司のおもちゃがとんでもないことになってて。片付けお願いしてもいい?」

和美はパブロに頼んだ。

「…うん。わかった」

「ありがとう。私、用事あったから助かるわー」

「…うん。やっておくね」

「ありがとう。じゃ、よろしく」

和美はバタバタと出かける準備を始めた。

(片付けなんて、ほぼしたことないんだけど…。どうしよ…)

和美はパブロがいる部屋の前を通り過ぎた時、ふとパブロを見ると、困ってウロウロしていた。

(…できないって言っても良かったのに…)



その時、

「ただいまー」

絵理が帰ってきた。

「あっ」

パブロが玄関に小走りで向かう。

「絵理〜、和美さんが孝司のおもちゃ片付けてって」

「え!孝司のやつ。また散らかしてるの?」

「うん」

「はぁ…。今日、小テストだらけで疲れてるのに…」

絵理は、家にあがって、制服のまま片付けを始める。

「あー…、俺も手伝う…」

「ありがとう」

「…片付けって、どうやってやればいいの?」

パブロは絵理に聞いた。

「え?普通におもちゃ箱に…」

「これ?」

「そんな小さい箱に入るかいっ。コレとコレ」

絵理は指をさした。

「あぁ…。ね、種類で分けてるの?」

「ううん。適当」

絵理は、散らばってるおもちゃを、どんどんかごに入れていく。

(なんだ、簡単じゃん)

パブロはホッとして、片付けを始めた。


「ちょっと!」

絵理が大きな声を出した。

「パブロ、今、ゴミ入れたでしょ」

「え?」

「これ、ゴミ」

絵理は箱から汚い布を取り出した。

「そうなの?」

「うん。あと、コレ」

お菓子の包み紙も出てきた。

「……」

「こういうのはゴミ箱に入れないと…」

絵理に言われて、パブロは少し不貞腐れた顔をした。


「じゃ、行ってくるねー」

和美が2人に声をかけた。

「あれ?絵理も一緒に片付けてくれたんだね。ありがとう」

「ん…?」

絵理は首をかしげた。

「パブロ君に片付け頼んでたから」

「…そう」

パブロは恐る恐る絵理の、顔を見た。

絵理はパブロを睨んでいた。


「あ…、一緒にやった方がはやいし。ね?」

パブロは焦って絵理に言い訳をした。

「何で、自分が頼まれたこと私にやらせようとするの!」

「だって。やり方分からないし」

「じゃ、聞けばいいじゃん!さも、私の仕事みたいに言って…!」

「だって。やりたくなかったから」

「私だってやりたくないわっ」

「別に、いいじゃん」

「よくない」

「俺も手伝ったし」

「もともと、パブロの仕事なんだから当たり前でしょ!」

「怒りすぎだよー」



(…パブロ君、私には遠慮して言わないのに、絵理には言うんだな)

和美は2人を見てニンマリした。

(この2人ありかもな…)

そんな事を思いながら、和美は出かけて行った。


2人は、そんな風に思われているのに微塵も気が付かず、ケンカを続けていた。

「わかったよ…。ゴメンて」

「ま…、一番悪いのは孝司だし…」

「…単純」

「もうっ!」

絵理はパブロの肩を叩いた。

「ハハッ。弱っ」

絵理はもう一回叩いた。


「ごめん」


「……」


「ごめんね」


「ん」


絵理が許してくれて、パブロは恥ずかしそうに笑った。

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