孝司は特別な存在

孝司が無事退院した。

絵理と博之と和美は涙を目にためて迎えた。「何?!大げさじゃない?怖いよ」

孝司は、事故の記憶を書き換えられている。

パブロの意向もあり、これからも話すつもりはない。


「パブロ兄ちゃん、卒業試験ダメだったけど、1年留年?そうなの?!」

「うん」

「留年とかあるんだ?」

「あぁ。特例らしいよ」

「ふーん。ま、良かったね」

「でね、一週間前から勉強に集中したいからって、また一人暮らししてるの」

「そうなの?!じゃ、一年会えないんだ…」

「うん。急に決まったから…。パブロも孝司に会えないのが辛いって言ってた」

孝司はちょっと考えて、

「うん、分かった。俺も勉強頑張るかな」

パブロと孝司は、年は全離れてるが、何か通じるものがある。

何かを感じ取って、すぐに切り替えたようだ。


「あー、絵理は、プロポーズされたの?」

「え?!?!」

「声でかっ。」

孝司は迷惑そうな顔をした。

「まだだった?ごめん」

「いやぁ…」

「?」

 

(びっくりしたー。プロポーズはされたけど。最後の夜のことだったから…)


少し顔を赤くして、

「うん、なんか軽く…」

と言った。

「軽くかよ。頼むから、無事に結婚して…」

孝司は疲れたように言った。

「お父さんじゃん」

和美が笑った。


(2か月後)

「孝司ー」

孝司は振り向いた。

「パブロ兄ちゃん?!」

「元気かー?」

「何で?一年帰れないって聞いたんだけど」

「孝司が元気かどうかだけ見にきた」

「別に元気だよ」

「そっか」

パブロは安心したように笑った。

「なんか、大げさだなぁ。皆」

「ん?」

「骨がちょっと折れただけなのに、体調の事ばっかり聞いてきてさ。ちょっと、嫌になってきた」

「そっか」

「もう心配ないから、聞かないで」

「んー、わかった。じゃ、帰るわ」

「え?!」

と言った瞬間パブロは消えていた。


孝司は、パブロからもらった、ペンダントを見た。

(バリア機能ついてるって言ってたな…。

心配されるのは嫌だけど、本当の兄弟じゃないのに、こんなにしてくれるのって…。嬉しい…)

少しニンマリした。

(本当の兄ちゃんになってほしくて、絵理と結婚出来るように世話焼いてるのもある、実は…)


孝司は、なんとなくもったいないから、パブロに会った事は、誰にも言わない事にした。

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