第四話 ―― 彼女の行方

a)失踪?

 激しい雨は次第に小雨に成った。

 夕方、暗くなり始めた空の下、リアンと二人で羽夢さんの家を探した。

 住所データはリアンの物。居酒屋一回分で攻め落とした。

「守秘義務は、いいのか?」

「本人から直接聞いた。企業ではないから守秘義務は、ない」

「そうだっただろうか?」

羽夢さんの住所は南オジー4丁目。木造建築の二階建てアパートが住所地だった。

階段を上り二階の奥に行く。

 電気メーター停止中。

 ガスメーター停止中。

 水道は一寸わからない。

 「居そうもないな」

リアンは郵便ポストに郵便がたまっていないか確かめる。

 「夜逃げ?」

 ノックして在不在を確認する。

 羽夢さんの名を呼びながらノックしていると、隣の住人(男)がドアを開けて出てきた。

 「羽夢さんの知り合い?」

 「ええ、まぁ」

 「昨日引っ越してったよ」

「引っ越し?」

「急ですが、って引っ越し挨拶して」

「何処へ引っ越したか御存じですか」

「詮索しないもんだよ、他人の事情」

隣の住人はそう言うと自室に引っ込んだ。



c)彼女の行方

 意気消沈して、駅前に戻って来た。

 コンビニのイートインコーナーに陣取って可能性検討会議をすることにした。

 夕食に菓子パンと珈琲牛乳を摂取しながら会議は進む。

 「復偶然ばったり遭わないかな?」

 「近隣に未だ居ればな」

 「役所で管理してない?」

 「住民票?本人か家族ならな」

 「身分詐称と言う訳にも、か」

 「何処か遠くへ行ったんじゃないだろうな」

 遠くへ行ったとすると、何処へ。

オジー、或いはニアリー以外の何処かだろうか。

羽夢さんはオジー以外から転入してきた口。ほかの街に行っても不思議は無い。

この歳になって未だニアリ―外の街に行ったことが無い二人だった。

 一寸検討しただけで暗い感じに成った。

 人一人探し出すのに、此の世は十二分に広かった。

 早いが万策尽きた。

仕方ないのでもう一度店長に聞いてみた。

 流石に引っ越し先までは聞いていないという。

 「よい方法があるよ」

 「何ですか」

 「探偵に頼む」

 一週間当たり十万、これ以下には下がらない、無理だろ?と店長は笑って言った。

 一介の受験生には探せそうもない。


 彼女の行方。

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