第12話 早咲き桜が咲けば(8)

「この間はどうも」


 私山下光流は、自身の自転車愛車のペダルを力強く回し、スピードを上げる行為をやめ。


 愛車を停車──!


 愛車のサドルから腰を降ろし。


 自転車から降りれば。


 あの。


 例の。


 そう、以前桃の木の満開時に並木で会った。


 神さまのように麗しく、優しい少年が。


 何故か、この【早咲き桜】の木々……。


 それも前回桃の並木でお会いした時と同じように。


 花の満開時に偶然にもお会いした。


 だから私は愛車を停車、サドルから自身の腰を降ろし。


 愛車の横に立ち。


 彼に挨拶をした。


「…………」


 でも彼は、前回お会いした時のように。


 私の呼びかけに対して彼は、神、仏のような笑みを浮かべ気さくに。


 私へと話しかけてくれるようなことはなく。



(お願い)


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