ep11 秘密と真実

 ロングヘアのきれいな髪が穏やかそうな可愛い顔、男子高校生が目を引かれないわけが無い。


「妹たちを助けてくださり、ありがとうございます 」


「え、あぁ…… え? 」


 イモウト……? なんのことだろう、芋とウドンの聞き間違い?


「名前はええと藍斗さん、ではなくロリコン変態ゴミクズ人間以下さんでしたっけ 」


「あぁ、そういえば三つ子とか言ってたなぁこの言い方すごい雪和に似てる 」


「まあ姉妹ですから♪ 」


 彼女は口に手を当ててうふふと笑う。 その仕草一つ一つにキュンが入ってくる。


「冗談です、あなたがいなかったらあの子達は路地裏に連れて行かれて誘拐されていましたから 」


「とういうことだ? 見ていたのか? 」


 その瞬間、ドキドキが消えてわずかの不信感を宿す。 あんな奥の路地裏だ、まだ誰も知らないはず。 


「知ってたとしてなぜ止めなかった? 」


「私が行ったところで妹たちが誘拐されるという事実だけは変わりません。

 私は作者ではありません。 ただの読者であって書き換えるためのそういった能力は持っていないのです 」


「さっきから言ってる意味がわかんねぇよ! 」


 ぐいと顔が近づく、その目は何かを吟味するかのようなそんな目だ。


「あなたは私の中の特異点なんですよ、あなただけはいつもフィクションばかり 」


「なにをさっきから…… 」


 この人と話していると一つ一つ行けない扉の鍵が解けていくような、まるで全てを見透かされているようなそんな感覚に襲われる。

 その時後ろからトントンと肩を叩かれた。


 「何をしてるの?ロリコン変態ゴミクズ人間以下 」


 聞き慣れた声、少し怒りのこもった幼馴染の声。 後ろを振り向くと恐ろしい笑顔が素晴らしい女の子が立っていた。 もちろん対象は一人、咲夜だった。


「女の子を置き去りにするのどうかと思うわよ 」


「ほんとにすいませんでした 」


 俺は地面に頭を擦り付ける最高の土下座をする。 だが彼女の怒りは収まっていないらしくて……


「コンビニで高級アイス、バニラミックスとチョコモカとアーモンド 」


「はい、ただいま! 」


 俺はコンビニに向かって走り出した。







「あんた何者? 」


 だが、彼女は答えることをせずにただ微笑むだけ。 私は気づいている。 彼女の能力はとてつもない大きな力だという事。 私の能力程度じゃこの人の心を覗くことはできない。 彼女は何を知っているの?


「私は真実を知りたいんです。 あなたの作ったフィクションではなく、ノンフィクション。 作者ではなく筆者になってくださいね? 」


 そう言うと手を振ると廊下の奥の方へ歩き去った。

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