第9話 宝玉の価値

 魔物に吹き飛ばされた衝撃でヘル・フェンリルの宝玉がちょうどアルムの真ん中に空いている穴に嵌まったのだろう。そして俺の身体が回復されたのはヘル・フェンリルの持っていたスキル『パーフェクトヒール』のお陰か?


 ってことは。


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 アルム名:ヘル・フェンリルの剣

 等級:神話級

 スキル:『獄炎』、『身体強化Ⅴ』、『魔法無効』、『状態異常無効』、『パーフェクトヒール』

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 やっぱりあの強かったヘル・フェンリルの力をそのまま引き継いでいる。相変わらず神器とはついていないため、クラスメートたちの持つアルムよりは弱いかもしれないがそれでも今の俺にはありがたい。


「獄炎」


 そう唱えた瞬間、黒い剣身に激しい炎が燃え上がり、周囲を明るく照らしだす。そうして俺を攻撃してきた魔物の姿を捉える。二足歩行で牛の顔をした魔物。優に3メートルはありそうな巨体に手には大きな石の棍棒を握りしめていた。


「さっきはよくもやってくれたな。お返しだ!」


 なぜか使ったこともないその力を手に取るようにして理解できる。その場で横薙ぎに剣を振るえば巨大化した地獄の炎が牛の魔物を一瞬にして覆い、その生命を食らいつくした。


「ふう。何とか倒せたな」


 それにしてもスキル一つでレベル900越えの魔物を一蹴できるとか改めて考えるとヘル・フェンリルは結構強かったんだな。落下で死んでくれて助かった。


「そうだ。せっかくだしあいつの宝玉も作るか」


 牛の魔物へと手をかざし、そう唱えるとヘル・フェンリルの時と同じように宝玉が作り出される。


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 キングタウロスの宝玉。キングタウロスの強靭な肉体と能力が凝縮された宝玉。

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 それから鑑定っと。


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 物質名:キングタウロスの宝玉

 スキル:『暗視』、『身体強化Ⅳ』、『状態異常無効』

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 暗視。なるほど、だからあんなに暗くても俺の姿を捉えられていたのか。この宝玉を嵌めたら俺も暗視が使えるようになるのだろうか? そう思い、アルムに付いていたヘル・フェンリルの宝玉を取り外し、キングタウロスの宝玉を着けてみる。


 結果は成功だった。先程まで暗すぎて何も見えなかった視界が嘘のように開け、くっきりと辺りを見渡すことができる。ということは宝玉に付いている身体強化Ⅳや状態異常無効なんかも俺の身体に付与されているのかもしれない。


「鑑定」


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 種族名:異世界人

 レベル:524

 スキル:ユニークスキル『鑑定lv.2』、ユニークスキル『宝玉生成』『暗視』、『身体強化Ⅳ lv.5』、『状態異常無効』

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 うん、やっぱり身体強化や状態異常無効も反映されている。ただ、アルムに装着している宝玉の効果しかないらしいな。取り外したヘル・フェンリルのスキルは一切ない。


 ていうかレベルが524になっているんだが。もしかしてここに落下した時に生きてたのもキングタウロスに殴られて死ななかったのもヘル・フェンリルの方が先に死んだことで倒した判定になって俺のレベルが上がったからなのかもしれない。


 そうじゃなかったら確実に死んでたよな、俺。俺の身に起こり得たその事実を知りゾワリと背筋を凍らせる。


「ん? なんかちょくちょくスキルの横に書いてあるlv.1ってなんだ?」


 スキルにもレベルがあるという事なのだろうか? 鑑定の横にlv.2と書いてあることから鑑定のレベルが上がって見えるようになったのかもしれない。横にレベル表記の無いスキルは恐らくレベルっていう概念がないのだろう。


 この状態でもう一回、自身のアルムを鑑定してみる。


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 アルム名:キングタウロスの剣

 等級:伝説級

 スキル:『暗視』、『身体強化Ⅳ』、『状態異常無効』


 キングタウロスの宝玉による祝福を受けた剣。効果を一つ選び、剣の持ち主または持ち主が認めた他者へと付与することができる。ただしその場合、他の効果は消失し宝玉は壊れてしまう。

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 興味深い説明文が追加されたな。つまり他のスキルと宝玉が消えてしまう代わりに俺が一つだけスキルを手に入れられるということだ。何をしても他のスキルが手に入れられなかった俺にはもってこいの能力だな。


「じゃあ早速、付与」


 俺がそう唱えた瞬間、キングタウロスの宝玉はさあっと砂になって消えていき、宝玉が付いていたアルムも元の味気ない柄と鍔だけの姿へと戻る。


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 種族名:異世界人

 レベル:524

 スキル:ユニークスキル『鑑定lv.2』、ユニークスキル『宝玉生成』、『暗視』

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 俺が選んだスキルはもちろん暗視。この暗いダンジョンの中を歩くにはほぼ必須のスキルだからな。そのせいで身体強化Ⅳが消えてしまい少し痛いが、それでもかなりの収穫だろう。


「これなら俺でもこのダンジョンを踏破できるかもしれない」


 最初に味わっていた絶望が嘘のように晴れていく。まさか見てくれでは使えないアルムとスキルがこんなところで役立つようになるなんて誰が予想できただろうか。


 そうして俺はアルムにヘル・フェンリルの宝玉を戻してどこへ続くかも分からない通路へと足を伸ばすのであった。

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