第13話 狐堂で買い物タイム
「とりあえず明日のために狐堂で準備をしてくわよ」
冒険者ギルドから出てミリシアと一緒に歩きながら聞いた情報を整理する。
まぁぶっちゃけると正直、収穫は少なかった。
分かった事といえば。
既存のダンジョン内の魔素を取り込み、光り続ける半永久的な光源となる魔工具は使えない事。
攻撃系や帰還の魔工具の発動が不安定になる事。
変革期の予兆が無いにも関わらずダンジョン内部の構造が変化して、出現するモンスターにも変化が起きたと言う事。
現在、ダンジョン内は閉鎖して普通の冒険者は誰も入れないと言う事。
コレぐらいだ、階層の深さも敵の傾向も分からない。
「魔工具の使用が不安定になるっていうのは初めての事よね? 大体こう言う時は使えなくなるんだけど......」
俺が前にフォクシーさんの救援に来た時は起動出来たから分からなかったけど、もしかしたらあの時から異変は始まってたかもしれないなぁ。
「それに法則の変化だけじゃ無くて構造も同時に変わるなんて......偶然なんでしょうけど厄介過ぎるわ」
まぁ考えすぎても疲れるだけだしな、今は深く考えないで準備をしっかりしようか。
「それもそうね、アタシ達の常識の外にあるのがダンジョンだしね」
そうそう、俺らに出来るのは早く攻略して迅速にアイツに情報を渡す事だけだ。
「レオス、見えたわよ」
ミリシアが指差す先には狐が描かれた可愛らしい外観のお店があった。
様々な事業を取り仕切る『珠玉の家』が経営する店舗の1つ。
『狐堂』店構え自体は小さいが品揃えの幅が広く、武器から防具、更には食料品なども数多く揃えられており非常に利便性の高い店だ。
流石に王都に比べれば規模は小さいが......小さいが?。
小さくねぇよ、デカくね?。
「以前来た時より大きくなってるわね」
閑散としている街並みに似つかわしく無いほどに大きく改装され、さらに従業員達も活気に溢れていた。
どう言う事だ?。
レオスが訝しんでいると中から見知った顔が出てきて納得した。
「はーい、レオちゃんにミリシアちゃん! 元気してた?」
フォクシーさんが狐堂のエプロンを着て手招きしていた。
フォクシーさん直々に店内に案内されて異様に広くなった店内を見渡して感心した。
フォクシーさん、随分と狐堂を随分と大きくしたな。
「前は小さいお店でしたよね」
ミリシアが高い天井を見上げながら聞くと口元を隠してフォクシーさんが笑った。
「ふふん、実はダンジョンの異変で冒険者が減ってね。それに合わせて商人達が見切りをつけてゴッソリ撤退したんだよ」
うわぁすっごく悪い顔してるぞ、フォクシーさん。
「それじゃあ、買い占めちゃおうかって事で狐堂を大きくしてみたんだよ!」
両手を広げて大きくなった狐堂の前で踊るようにクルクル廻っている。
それを見て俺とミリシアはお互いに小さく笑う。
お金の使い方のスケールが大きすぎるなぁ。
「でも、随分と早かったですよね。アタシ達が依頼を受けたのは今日の朝ですよ?」
この規模は一朝一夕じゃ出来ないよなぁ、もしかして俺ら来るの予測してた?。
「ふふん、商人は情報が命だよ。それにこう言う時は必ずレオちゃん達が来て解決してくれるから早めに行動しても問題ないしね!」
妖艶さを感じさせる笑みを浮かべたフォクシーの無垢な信頼が俺に突き刺さる。
「確かに、武具とかもそうですけど携帯食料とかの品数もかなり多いですよね。下手すると王都よりも充実してますよ」
「さすがミリシアちゃん! お目が高いわぁ!」
フォクシーさんが嬉々として食料品の売り場へ駆け出して声高々に説明を始める。
「レオちゃん達が攻略するのに1番必要なのは食料でしょ? だから優先的に日持ちしそうな色んな国の色んな食材を集めてきたよ!」
おぉ! スゲェありがたい!。
「長い間、ダンジョンへ潜ると食事ぐらいは変化が欲しくなりますからね」
最後らへんは硬いパンか干し肉かカビの生えたよく分からないヤツ食ってるしな。
「ふふん、でしょ? それにレオちゃん達が攻略してくれれば冒険者達が一斉に集まる、そうなれば武器以上に食料の需要が高まる......クフフ、こんなチャンスを逃げ出した他の商人に分けてあげないよ!」
クフフと口元を隠して笑うフォクシーさん。
その目に宿る怪しい光が俺を映した。
......なんだろう。
一瞬だけ背筋が凍るように冷たくなったけど気のせいかな。
「さぁ! レオちゃんにミリシアちゃん! 現在、グリア領唯一の大型商店『狐堂』が本日オープン! なんでも大特価で販売してるからドンドン買っていってね!」
とりあえず異常治し系の薬は買っておこう。
風邪は怖いからね!
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