第20話 妖魔集いて

 「ジュピターさま申し訳ありません。一家を襲いあと一歩というところで、思いがけぬ邪魔が入って、例の若者のみは処理できずに戻りました」


 「邪魔が入った? あの神聖教団とかいう、いつものやつらですか?」


 「はい、しかも能力が高い幹部クラスと思われる奴らが突然大勢で現れて、悔しいですが我らでは抗しきれずに・・・・・」


 「マース、お前を失うような無理をする必要はない。それほど慌てることでもあるまい。そうか彼等も本腰をいれて、彼を守護してきたということなのでしょうか?」


 「おそらく、ジュピターさまのお考えの通りであると思われます」


 「それほどの存在なのか彼は? マース、少しは彼とは闘えたのですか?」


 「私が自ら闘うまでもなく、試しに闘わせた私の部下の獣魔にも、まったく歯が立たないようでした」


 「不思議ですね。私もあなたも千年以上の時を超えて存在し、また我々以前に生きたものたちから語り継がれている、最強で最悪の存在と恐れられているのですが」


 「ジュピターさま、本当にあいつに間違いないのでしょうか? それにしては、あまりにも弱すぎる」


 「古の過去から時を超えて語り継がれたこと。間違いなどしようがないですね」


 「能力をまだ開花させていない可能性も考え、ヤツの目の前で家族を処理するなどの仕掛けも試してみたのですが・・・・・」


 「彼はどんな反応を示しましたか?」


 「怒りを限界まで高めましたが、能力的には、まったく変わらぬ様子でした」


 「そうですか? 他に何か気がついた変化はありませんでしたか?」


 「特には・・・・・そういえばジュピターさま。ヤツの髪の色はたしか・・・・・」


 「魔人の髪、白銀に輝きし・・・・・であったな」


 「私が初めに見て時は、黒き髪でしたが、家族が喰われるのを目の前で見ているうちに、銀色に変化いたしました」


 「彼はこれからまだ変怪するかもしれんませんね」


 マースがジュピターへの報告を行っていた広い空間に、複数の足音が響き渡った。


 「おぅ、今帰ったか。待っていたぞ」

 「マース、うまい獲物を思うざま喰らってきたか?」


 5体の大小の影が、マースを取り囲んだ。


 マースが通り過ぎた後、王宮のような建物の入口をそれほどの時間をおかず5体の妖魔たちが通り過ぎて行った。


 「何か今日は大変だな。妖魔さまたちが集まられる予定ではないはずなのに」


 カマキリに似た使い魔が、もう1体の虫顔に話しかけた。2体ともゆうに3mは超える巨体である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る