第21話 魔界の妖体たち
「古より語り継がれた妖魔さまの敵、魔人が現れたという話が流れているな」
「おう魔人が見つかったのか?そうか、それでマースさまが、魔人を倒しに出かけられたということだったのか」
「それでは、先ほどマースさまがお戻りになられたということは、魔人を倒されたということなんだな」
「いや、さすがに我らがマースさまじゃ! 今日はめでたい、祝宴があるやもしれんな。久々にうまい人肉を喰らえるかもしれんな」
入り口を護衛する2体の使い魔が話に夢中になっているころ、建物を取り巻くいくつかの洞窟のひとつから、3体の獣魔が姿を現した。
「使い魔たち、お前ら護衛を忘れて何を無駄話をしておるのだ」
マースより一足遅れて建物に到着した熊王、白虎、狼牙の獣魔たちである。
「バカ者が仕事を忘れおって!」
「も、申し訳ございません!」
妖魔界では、大きく3階層に妖体区分が別れている。最上級階層に7体の『妖魔』、上級階層に『獣魔』、一般階層に『使い魔』で構成される。
喰らい合う妖魔界に規律などない。ただより能力の強いものが弱いものを力で従えている。階層の上の妖体に逆らえば、引き裂かれただ喰らわれるのみである。
妖魔は、本来の生体としての魔物であり、妖魔間での個体差はあるものの、桁外れの強い妖魔力を有している。
妖魔は数千年に、既存個体から分裂して誕生し、その生体数は少ない。
『獣魔』は、妖魔が悪しき心を持つ獣と交合することにより誕生した禍々しき半妖体であり、『使い魔』は、妖魔により妖魔力を授けられた穢れし昆虫たちいわれている。
7体の妖魔を頂点に、獣魔、使い魔、そして家畜である人間がこの異空間に存在する。
話に夢中になる護衛の使い魔を一喝し、3体は中へと進む。建物内の中心にある広間を取り巻くように配置されている部屋のひとつ入っていった。
個別の部屋は、すべてが岩盤を繰り抜き作成された空間であり、中はかなりの広さである。壁面の青白い炎が照らす、青い薄明かりの中に、何体かの影が見える。
薄暗い岩影に佇んでいた大きな影が、空間全体を揺するような低く太い声を発した。
「熊王、お前ら失敗したようだな」
3体の獣魔は、その声の威圧感に圧され、思わずビクッと身体を固めた。
「こっちに来い。熊王」
一切の否定を許さぬ声に引きづられ、3体は大きな影のいるスペースに近づいていった。
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