#41 孤高の武人、邂逅

「ソウラン様。ここは…?」

「ある人物に協力を申出るためにね。ここはその人物が住んでいる家がある森さ。」


ソウランは美しい女性と共に森の中を歩いていた


「ですがこの森…」

「頭のいい君なら、恐らくここがどのような所かは分かるだろう?」

「魔境…歴代入っていった高ランクの冒険者、皇帝守護騎士団ガーディアンズ達が戻ってくることは無いと言われている禁足地…ですよね?」

「正解だ。ここで高みを目指している野蛮人がいる。彼が1人目の協力者だ。」

「非常に強いんですね。その方…」


女性は驚きながら、そう答える。禁足地の中に家があり、高みを目指しているとは、変わっているというしか無かった。


「君も聞いたことがあるはずだよ。レーネ。稀代の三雄”孤高の武人”ムクロ・オーウェンの名を」

「!まさか、その方に協力を要請するということですか?」

「その通りだ。同じ稀代の三雄同士、彼とも顔を合わせたことがある。少し、彼の話をしようか───」


その言葉を言った瞬間に、ソウランたちの前には巨大な熊の魔獣が出現した。


「ソウラン様!お下がりを───?」


レーネがそう言い切る前に、ソウランはレーネの前に腕をやり、制止をかけ、少し魔獣から距離をとる。そして、話を始めた。


「彼は幼少期の頃から、親からの寵愛を受けたことがなかったらしくてね。顔合わせした時の開口一番がそれだから少し驚いたのだが、話は聞いていた。」

「ソウラン様!話をしている場合では!」


レーネのその言葉を無視し、ソウランは続けて言葉を綴る。


「だからこそ彼は人一倍、他人に優しくしようとしたらしい。笑顔で惨い過去の話を他人にするぐらいには、もう過去のトラウマは拭い去っているようだった。」

「は、はぁ…」


瞬間、少し遠くにいたクマがこちら側に襲いかかってくる。


「ソウラン様───」

「順番が前後したが、彼の第一印象の話をしよう。彼はとても”孤高”という言葉が合っているとは思えなかった。だが後日、僕は思い知ったんだよ。レーネ。」


レーネは焦る。魔獣がもう目前まで来ていて───攻撃が到達しようとしていた───その瞬間


「彼は名実ともに”孤高の武人”だ。とね。」


ソウランがその言葉を言い終わるのと同時に、魔獣は上から来た人物───”ムクロ・オーウェン”によって凄まじい怒号音と共に地面に叩きつけられていた。


「ったく、お前らあんま油断してんなよ!」

「ははっ、君なら来てくれると信じていたよ。ムクロ。」

「はぁ…ここの魔獣は危険度が高いやつばっかなんだぜ?さっきの魔獣だって、”血に飢えた魔熊ブラッドベア”っつって、並の冒険者じゃパーティ組んでも勝てないレベルで危険なやつなんだぞ?」

「僕は、その”並の冒険者”の括りにされているのかい?」


怪しい笑みを浮かべながら、ソウランはムクロに向かいそう言う。ムクロはそれに対して少し呆れながら、笑いながらソウランの方へと視線をやり


「ったく、相変わらず性悪なやつだな、お前は。まあ嫌いじゃねえけどよ。で、そちらのお嬢さんは?」

「蒼穹近衛第一席”レーネ・クオーレ”です。以後、お見知り置きを。」

「どっかのお嬢様か〜?礼儀作法がしっかりしてんのな。」


快活に笑いながら、ムクロはレーネに視線をやる


「第一席っつーことは、その蒼穹近衛ってやつの中ではいちばん強いってことだよな。」

「一概にそうは言えない。蒼穹近衛は誰もが強い。相性の問題がある。実力自体は全員ほとんど変わらないぞ」

「ふーん…まあいいや、それで、こんな辺鄙な場所に何の用だ?用がねえと通らないような場所だろ。」


明らかに辺鄙という言葉は合っていない森のため、レーネは一瞬目を見開いた。


「君と話がしたかったんだ。ムクロ。」

「へぇ?そりゃ随分と意外な理由だな。まあ闘気を見る限り、穏やかな話じゃなさそうだ。」

「闘気…?闘気で分かるものなのですか?」

「あぁ、闘気は闘争心が力だろ?これで説明になるのかは分かんねえけど、俺闘気で相手の雰囲気とか動きを感知できんだよ。」


意味がわからない。と言ったように、レーネは首を傾げ、ソウランの方へと目を向ける


「…彼の目は特殊でね。闘気を”視る”ことが出来るんだ。彼の前では闘気質を隠していようが無駄。そして闘気の流れで動きの予知ができる。それに、彼は闘気の色が分かるらしく、それによる感情の掌握などができるようになっている。」

「なるほど…」

「そんな目で見てくんな。説明下手だから仕方ないだろ。」


ソウランはムクロの方へ冷ややかな視線を向ける。それが痛かったのか、ムクロはすぐに「やめてくれ」とソウランに言った。


「立ち話もなんだし、俺ん家行くか。」

「ああ、案内頼んだよ」


そうして、ムクロとソウランは森の奥の方へと歩を進めるのであった

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