#42 成果
「貴方、意外と真面目よね」
「?急にどうしたんだ?」
突然、俺はレヴィにそのようなことを言われ困惑した
「いや、修行に真面目に取り組んでるじゃない。私だったら多分すぐ諦めちゃうわよ」
「あー…そういうことな。まあどうせ俺のツレも修行に励んでるだろうしな。俺が何もしない訳にゃ行かんだろ。」
「ふふ、負けず嫌いなのね」
「ああ、根っからのな」
まあ恐らく見た目からは真面目そうには見れないっつーことだろうな。俺でもそう思う。
「リュウゲンはいつ用事が終わるんだか…」
「分からないわね。彼、結構自由人気質だから、まだもう少しは帰ってこないかもしれないわ」
「はあ…そんなとこだろうとは思ってたが、ほとほと呆れるぜ…さ、こんな話してないで、演習の開始だ!今日こそはお前を捉えてみせるぞ!」
さっきの呆れ顔から、レヴィはすぐに表情を綻ばせ
「出来るのかしら?」
「やってやろうじゃねえか!」
「いい心意気ね。それじゃ、始めるわよ…」
そしてレヴィは俺の前から忽然と姿を消した。
(さぁ、問題はここからだ。動体視力が求められるのはそうだが、まず第一に闘気でレヴィを追わなきゃならねぇ。俺の目の前に近づいてきた時は動体視力でカバーする…だが、いっつも、早すぎて捉えられないんだよな…だから今回は…!)
レヴィの異形、それは脚がバネのような性質になること。単純故にやれることが多く、非常に強力な異形だ。
(…?なにもしてこない?…なら、以前と同じ結果になるわよ)
そうしてレヴィが一気に俺に接近しようとした瞬間、火柱がそこにあがった。だがレヴィもすぐさま反応し、距離をとる
「山勘が当たって助かったぜ…だが、さすがの反応力だな!レヴィ!」
「少し驚いたけど、まだこれくらいなら強くなったとは言えないわよ!」
「んなこたわーってるよ!」
俺はは必死に爆速で進む闘気の気配を追っている。視覚で追うことをあきらめ、視覚からの情報を断ち、異形特有の研ぎ澄まされた感覚により、迫る感覚がわかりやすくなっていた
(ははっ!こうも『闘気』を教わっただけで戦いやすくなるなんてな)
俺は高揚していた。自身が強くなったという感覚を、わかりやすく実感していた。そしてその強くなったという事実に、高揚していたのだ。
「ありがとな!レヴィ!ここまで俺を強くしてくれて!」
「私に勝ったわけじゃないんだから、感謝は終わってからにしなさい!」
(彼が探っているのは私の闘気ね…なら、その探っている闘気を逆手にとって攻撃を仕掛けることにしましょうか。私はあなたが持っていない技術を会得してるの。それを考えに置くべきだったわね!)
技術も実力も、もちろん俺よりもレヴィの方がより洗練されている。確かに強くなっていたとはいえ、レヴィに通ずるかと言われれば、そうではなかった。そのことを理解できていないほど、俺は馬鹿ではない。
「さぁ、俺の血を食らいな!『
「どこ見て仕掛けてるの?殴られすぎておかしくなっちゃったのかしら…ね!」
レヴィは一気に踏み込み、俺へと突進してくるが、そこの進行方向も来ることはわかっていた
「まだわかってるぜ!」
「んな…!っとと!」
流石にこれには予想外だったか、レヴィも少し態勢を崩す。その隙をみて一撃を…と思いこぶしを振りかざすが、さすがに現実はそう甘くなく、レヴィは一瞬でその態勢を立て直し、俺から距離をとり、俺の攻撃は空を切った
「すごいなほんとに!反射神経だけなら八獄随一なんじゃないか!?」
「そう言ってもらえて光栄ね。でも、もう三回目。次はないわよ!」
そして先ほどよりも早く、レヴィは加速をし始める。正直、まだまだ早くなるのか、と勘弁してほしい気持ちでいっぱいになっていたが、別に今更あきれるようなことでもないため、気を持ち直す。が、平静を取り戻して感覚を研ぎ澄ましたとき、妙な感覚に苛まれた
(なんだ…!?レヴィの闘気の気配が、そこら中に存在してる…!?)
「この闘気の技術は高難度だから教えなかったわ。でも短期間でここまで成長するなんて思いもしなかったから、いい機会だと思って体験しなさいな!卑怯なんて思わない事ね!」
「有難く学ばさせてもらうとするかな!」
とは言っても、ここまで闘気を気配として置かれては、肝心の感覚も使い物にならない。血の量は十分にある。なら…!
「ぐっ…!痛ってぇ…」
「な、なにを…!」
俺は持っていたナイフで自身の腕を切り、血をそこら中に散布させた。ある一点の場所を除いて。
(レヴィの異形はあくまでバネの伸びる性質を使って加速しているに過ぎない!空中に浮いてるわけではないから、頭上からの攻撃はない!もしあったとして、頭上からならこの闘気を気配として散布している必要が無い!)
俺は自分の頭で必死に考え抜いた結果───進行ルートを制限することで対応しようとしていた。そうして俺の周りの草が炎上し、真正面のみのルートを開設した
「考えたわね…!」
「これなら同じ条件だ!いくら闘気の気配を残留させようが、ルートはもう真正面しか空いてねぇぞ!それとも自分の体を燃やしながらこっちに来るか!?」
抜け穴ならある。俺の真上、つまり空中から来ることにより俺の炎から逃れ攻撃をすることが可能だ。だが空中で攻撃することはリスキーなこともある。さっきも言った通り、空中から攻撃を仕掛けるつもりなのならそもそも闘気を散布する必要はない。それに空中で攻撃する際、レヴィの場合はディレイが発生するしてしまう。空中でディレイが発生するため、一点に闘気がとどまってしまう。それなら不安定な俺の感知力でも十分に察知可能だ。
(さぁ、どっちから来る!)
気配が濃いのは正面、だが接近してくるような様子はない。その瞬間、真上からより濃い闘気の気配を感じた。
「上か!」
だが上を向いてもレヴィの姿は見えず、その代わり真正面の闘気が突然迫ってくる
「は…ぐっ…!?」
真上の気配に集中してしまったために、突然来た真正面の闘気…レヴィに一撃かまされてしまった。
「いっつつ…クッソ、また捉えられなかったか」
「正直言えば、少し危なかったわね。進行ルートを絞られたときは少し焦ったわよ」
「いい作戦だと思ったのになぁ…」
レヴィは顔を綻ばせ
「実際いい作戦だったわ。あの技術を使わなかったら、普通に私、貴方に一本取られていたもの」
「そうだよ!なんだあの技術!」
「そう焦らないの。教えてあげるから。といっても、一朝一夕で覚えられるものでもないわよ?」
「いいんだよ。知識として知っておけば、役に立つこともあるかもしれないしな」
そしてもう一度、修行のやり直しを始める俺たちなのであった
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふっ、はぁっ!」
「やるねぇ!短期間でよくここまで成長できたもんだ!」
「そりゃどうも…!はぁっ!」
「おっと…!」
「今!」
「甘いね!そんなんじゃ届かないよ!」
エヴァと組み手をしていてわかったことは、エヴァはとにかく受け流しからのカウンターがとても上手いということだ。最初のころよりも確実に戦えるようにはなってきているが、それでもマシになってきた程度で、通用するかと言われればそうではなかった
「ちっ…!」
「よろけてる場合じゃない、よっ!」
「くっ…がぁっ!」
よろけた隙で防御を崩され、続けて腹に二度殴打を食らった
「ぐぐ…まだ攻撃が届かないか。」
「あはは!アンタも熱心だねぇへイン!少なくとも前よりも確実にアタシとやりあえてるぞ!理解してるかもしれねぇが、アンタは確実に強くなってるぞ!」
息を整えながらエヴァの言葉を聴く。エヴァの言う通り、最初組み手をしていた時よりも確実に取り合えてはいる。
「ああ…実感していることにはしてる…だが、お前に届かないと意味がないんだよ」
「八獄にでも入ろうと思ってるのか?それもいいが、アタシ個人としてはあんまりおすすめはできないけどな」
「…いや、そういうわけではない。ただ、お前に勝てるようにならないと人間の最高戦力…‘‘
「なんか確執があるのか?」
「厳密にいえば
過去を話したところでどうとなるわけでもないが、個人的な話をしたいわけじゃない。それに今はそれを思い出して、訓練中に余計なことを考えて支障をきたしたくはない
「まぁ、アンタの過去にも興味はあるが、話す気がないのならそれはそれで問題はないけどね。さ!少し強くなってきたところだし、新技術を教えてみようか。」
「わかった」
確実に成長することが分かっている今、この前のことを思い出して殺すことに恐怖を思う必要はない。あれは人間が悪かった。そう言えば、少しは俺も気が楽になる
「始めようか!これ終わったら地上に食べいこうぜ!おすすめな店があるから底紹介してやるよ!金は気にしないでいいぜ!アタシの奢りだからな!」
そういう彼女に俺は少し笑いながら
「楽しみにしてるぞ。」
と一言だけ、俺はそういったのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます