#12 二つ目の集落

「そういえば、メイプルちゃんの過去って、どんな感じなんですか?」


ヘインの帰りを待ちながらメディさんと雑談をしていると、メディさんがなんの突拍子もなく急に、私にそう問いかけてきた


「私の過去…?」

「はい!あ、話したくないものなら全然話さなくてもいいですよ。過去って、そう簡単に誰かに話したりできるものじゃありませんから」


話したくもない…と言うわけでもないが、別に気持ちのいい話でもないので、私はどうするか迷っていた


(でも、前にメディさんは会って間もない私に対して過去の話をしてくれたよね…)


そう思った私は、メディさんに過去を話すことにした


「もともと、村にいたんです。簡単な話、そこで実の親、親戚、知り合い、挙句の果てには赤の他人にまでいやがらせとかを受けて、偉業が発言して追放された感じです」

「赤の他人から…ですか」


それを聞いたメディさんは少し顔を顰める。そして、


「何か、いじめられる要因でもあったのですか?」

「あ、えっと、それは…」


答えに吃る私に、メディさんは小首をかしげる


「…私、異形になる前までもが、この世界で迫害の対象だったんです」

「…?一体どういう…」


メディさんは意味が分からないと言った感じで首を傾げる


「私、その時に生まれた『不幸の塊エスフォチューナ』だったんです」

「 『不幸の塊エスフォチューナ』って、数100年に一度生まれる『魔殺眼シグナチュス』、『漏魔体質』、『封魔力イムコンピテンス』、『覆魔不返』『魔力残留』って言った、対アンチ魔法の体質を持つ者のことを指すもののことですよね?」

「そうです。だからこそ、どこに行っても居場所はありませんでしたし、逆に、異形になってよかったって思いますもん」


不幸の塊エスフォチューナ」その名の通り、この世の不幸が集まった塊を、身に宿したもののことだ。この世界は魔法が全ての世界。だから、魔法に対してのアンチ性能を持つこれは、異形の次に迫害の対象になっていた。…迫害はされている。のだが、古い文献によると、この体質を『祝福』と呼ぶ者もいるそうだった。


「思い出したくもない過去、思い出させちゃいましたね。ごめんなさい。」


話していると、メディさんが申し訳なさそうにして謝ってきた


「いえ、気にしないでくださいよ。私も、良かれと思って話したことですから。」


実際、メディさんもあってまも無い私に対して自分の情報を出してくれた。ほのかな感謝の示しでもある。だから、謝罪されるのは割にあっていないことだった


「…煙たがらないんですね。私の事」

「え?なんで煙たがる必要が…」

「『│不幸のエスフォチューナー』だからですよ。それに───」

「それがどうしたって言うんですか?」

「───え…?」


私の言葉にメディさんが被せてそう言ってきた


「どれだけその人が世界に迫害されようと、私は───内面を見ますから。外側がどれだけ醜かろうと、内面が良ければ、全て帳消しになるんですよ。まあ、逆もまた然り。ですけどね。」


そのメディさんの言葉に、嘘はなさそうだった。それに、この世界において、こういう考え方を持っている人は珍しい。だから私は、感動していた。


「さて!辛気臭い話はやめにしましょう!って、し始めたのは私ですね。えへへ」


そういうとメディさんはいつものテンションに戻って、私にそうにこやかにそう言った。そんなことをしながらヘインの帰りを待って、門のほうに目をやると、村の方から誰かが歩いてきているのが見えた


「あれは、ヘイン…じゃない…?」

「あ、案内役の人ですね。名は…」

「あまり私の情報は言わないでいただきたい。そっちの異形も、まだ信用できる状態ではないからな」


なんだよその言い草!とも思ったが、感覚がおかしくなっていたのだろう。どちらかというと、メディさんたちよりもこっちの方が正しい反応だ。


「用心深いですね…流石案内役の方。」

「当たり前だろう。まだ仲間だと、確証も得られていないものに情報を渡すことはただのバカだ。お前たちとは違い、我々は用心深いのだからな」


いや、仲間じゃないの?行っていること自体は確かに正しい。だがそう思うくらい、この男の人の言い方はとても冷たかった。だがそれ以上に、私はこの喋り方になんとなく既視感を覚えていた。


「…もしかして、この人ヘインに憧れてる?」


小声でメディさんにそう聞くと


「あ、そうですよ。よく分かりましたね」


と、答えが帰って来た。既視感を感じたのは、ヘインに喋り方が似ていたからだろう。やっぱり。こんな言い方をされているのにも関わらずメディさんが不機嫌な様子を撮っていないし、なんか微笑んでいるから疑問に思っていたけど…そう言う事なら合点がいく。ヘインの真似をしているから、微笑ましく思っていたのだろう。


「何をコソコソと話しているんだ。行くぞ。」

「いえ、なんでもありませんよ♪ただ、前よりも真似が上手くなったかなって思っただけです♪」


メディさんが笑いながらそう案内役の人に問いかける。それ言っちゃうんだ…その質問に対して、案内役の人は随分とたじろいでいた


「な、ななななんのことだ。一体俺が、だ、誰の真似をしていると…」


わかりやすすぎるでしょ…こう言うことなら、微笑ましくなるのも納得がいく。汗ダラッダラだもん。焦りすぎでしょ


「と、とりあえず!案内する!統括者が許可を降ろしてくれた。まずはそこへ行くぞ」

「は〜い♪」


メディさんはそう言って、案内者について行き、私もそれに続くようにその場を後にしたのだった

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