#13 統括者との遭逢

私はこの集落の統括者に会いに行く道中に、案内人からいろんな話を聞いていた。


「ここはヘインさんが匿いきれなかった異形たちが集まる緊急集落だ。話は聞いたが、いろいろ大変だったようだな。」

「そうなんですよ!人間たちから襲撃受けたりで、村も壊滅して…ここ最近はずっと隠れ里の方で過ごしていました」

「隠れ里…あぁ、あのジジィの所の…痛!?なにしやかんだメディ!」

「ジジィじゃなくてラルフさんです!いい加減名前で呼びなさい!」

「痛い!?痛いからやめてくれ!俺が悪かったから!」


またまた私が蚊帳の外のような気が…と言うかこのやりとりもなんか既視感があるな…そんなことを思っているとたたかれた頭を手でさすりながら、案内役の人が説明を再開した


「いっつつ…ここの統括者は、ヘインさんと古い友人なんだ。だから、ここに入るにはヘインさんの仲介からか、統括者が直々に許可を出さないと入れないようになっている」

「…何か証明する必要のあるものは?」

「ヘインさんの棘だ。それも無理矢理折ったものじゃなく、綺麗な断面がついているな。」


痛くないのかな、それ。ヘイン結構無理してたりする…?そんなことを統括者から聞いていると


「もうそろそろ着くぞ。くれぐれも粗相をしないようにな。特にそっちの異形」

「分かってますよ。無礼なことはしないと約束します」

「…よろしい。では、ついてこい」

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「久しぶりだな!ヘイン、元気してたか!」

「人並みにな。んで、ここはしっかり管理できてるか?統括者サマ?」


ヘインは目の前の青年に話しかける。そして青年は面白くなさそうな顔をして


「そう呼ぶのはやめてくれって、前言っただろ?前みたいに気軽に呼び合おうぜ。ヘイン」

「…御免だね、俺より上の立場の人間が何言ってんだか」

「だからさ…はぁ…まぁいいか。どうせ何言っても変わらんだろうし」


青年は嘆息をつき、それで、と、顔をあげ


「急に何の用だよ。ここにくるってことは、また新しいのか?それとも、また別の何かか?」


ヘインはその質問に対して素直に


「新人だ。三人、な」


そういうと青年は驚いた顔をして


「おいおい、そんな多いのかよ。珍しいもんだな。」

「そろそろ来るんじゃないか。あと2人な。」


ヘインのその言葉に、青年は疑問を感じていた。


「2人…?三人じゃないのか?」


そう、青年はヘインに対して問いかける


「もう1人は見えてるぞ」


ヘインのその言葉に青年は首を傾げる


「統括者、連れてきました」

「あ、入ってもらって」


青年が答えると、案内人の男に続いて、2人の少女が入ってきた

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「統括者、連れてきました」

「あ、入ってもらって」


布で隠された入り口の奥から、別の人物の声が聞こえる。おそらく、統括者だろう。そうして私たちは案内人に続いて中へ入っていった


「いらっしゃい。お嬢さん方、君たちがヘインの言っていた新人さんた…メディさん!?」

「お久しぶりです。レツハさん♪」


統括者の顔がメディさんのことを見た瞬間に驚きの表情に染まる。名前も知っていたし、既知の仲なのだろうか


「え、いや、なんで…第一集落から追い出されたわけでもないだろうし…というか第一集落からは追い出されちゃいけない人だし…えまって、そうなったら後1人ってまさか…」


統括者が驚愕の表情になってから独り言をぶつぶつと言い出した。そして何かに勘づいたのか、統括者がヘインの方を向いた。ヘインはふっ、と笑い


「勘がいいな。そう、何を隠そう三人目は俺だ。俺、メディ、そして全くの新人メイプルが、新しい三人ってわけだ。」


統括者の顔が口をあんぐり開けての驚きの表情から変わらず、うめき声に聞こえるような声にならない声をあげている。


「待て待て待て、だとしたら第一集落はどうなったんだよ!?」

「壊滅した。戻っても無駄さ。全て藻屑。人間たちにやられた」

「お前がいてもダメだったのか…」


統括者が深刻そうな表情になる。こんな場面で言うのもなんだけど、ここの統括者、表情の移り変わりが激しい人だな。感情が忙しそうだ。


「ダメ、と言うわけでもない。人間は退けられた。」

「そうか…メディさんどうした?随分と怒ってられてるけど…」

「ヘインさんが無茶したんですよ!…あと一歩で死ぬとこだったんですからね?全然ダメです!」


統括者がはは、と笑い


「相変わらず手厳しいな。メディさんは…お前、相当無茶したのか。死にかけとか、異形でそうそうないぞ。」

「うぐ…結果的に今こうして生きてるんだから大丈夫だろ」

「結果だけ見たら、の話だろうが。無理をしすぎるのはお前の昔からの悪い癖だぞ。ヘイン」


統括者の人がヘインを睨みそういう。確かに、異形は回復能力が凄まじく高い。そんな異形が死にかけにまでなるなんて、本当に馬鹿みたいな無茶をしたのだろう。


「そ、そんなことより、受け入れてくれるのか?俺ら、身の拠り所がないんだが…」


その言葉を聞き、統括者はニコッと笑い


「んなもん、当たり前だろ!お前らを受け入れない異形がどこにいるって言うんだ?歓迎するぜ。ヘイン、メディさん、そして…全くの新人さん」


そこに名前を並べられるだけで、なんか疎外感をすごい感じてしまう…までも実際全くに新人だから仕方のないことなのだけど


「自己紹介だな、俺の名前は『レツハ・ブラド』だ。呼び方はなんでもいいぜ。」

「ああ、だからクソ野郎とでも呼べばいい」

「それは違うだろヘイン」


何かこの2人には確執があるのだろうか。でもそれにしては仲がいい気がする…


「なんでもいいって言ったのはお前じゃねぇか。」

「なんだお前!?俺になんか恨みでもあるのかよ!?」

「俺たちを裏切ってここの統括者になったこと。」

「お前が頼んできたんだろうが!?」

「何も戻ってくるなとは言ってない」

「なんでそれが裏切りになる!?理不尽極まれり!!」


違うわ、確執とかないわ、ただ単に仲良いだけだわ。この2人。


「はいはい!喧嘩は終わりです!レツハさんも、ヘインさんも、仲がいいのはわかりましたから!せめて移動を完全に終えてからにしてください!」


と、静止をかけた


「久しぶりにあったそばからクソ野郎呼ばわりされたら反論もしたくなるだろ…まぁいいや、後でお前のことは教えてもらうとして…住処だったな。案内しよう」


レツハさんがそういい、私たちは統括者宅の外へと出たのだった

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