第11話 ことの経緯
話は昨日にさかのぼる。
王国の薬草不足と調合士の援助を求めるために“魔女と薬の町ダックマトー”へ向かうことを承諾してしまった場面。
「ま、まて。今、“俺たちで”って言ったか?」
俺の発言に大男ダンマが動揺する。
「私の母親はダックマトー出身です。私も昔、一度だけ街へ連れて行ってもらったことがあります。他の者よりは地理的にも多少、知識があると思いますが。」
自分でも驚くほどスラスラと喋れていた。
しかし言っていることは事実だった、
行ったことがあるということを除いては。
「ほおそうであったか、それは心強いな。」
国王が苦しみながらも少しだけ笑みを浮かべた
「そちらの者はどうなんだ?2人で行ってくれるということかの?」
国王は大男ダンマの方を向いて尋ねた。
「ちょ、ちょっと待ってください!私とこの者はここで初めて会ったという間柄、一緒に冒険に出るなどあまりに、、」
「国王様、、つまらぬことをお聞きしますが、その、、“報酬”の方は、、?」
俺がダンマをさえぎり聞いた。
「“報酬”か、それはもちろん。危険な旅になるじゃろう、十分用意しておくことを約束しよう。」
国王は答えた。
ダンマは顔を険しくさせた状態で目を瞑り、なにやら考えるように苦しそうな顔をした。
そしてしばらく考えたのか今度は急に涙を流し始める。そして、涙が最後は満面の笑みに変わった。
なにを考えてんだこいつ。
「行きましょう!ぜひ我々に、お任せください!きっと成果を持って帰ってまいります!」
ダンマは胸を張って国王に言った。
「そうか、ならば2人には明日より早速ダックマトーへと向かってもらおうかの。」
「待ってください国王!」
話が決まりかけた時、カンリーと呼ばれていた男が間に入ってきた。
「ダックマトーへの道のりはかなり危険です。その者はかつて行ったことがあるとおっしゃっておりますが私にはにわかに信じられません!」
ぎくっ。
「、、ダックマトーはご存知の通りかなり魔気の濃い森を越えなければ行けません。我々の団も多くの者が犠牲になり、何度も遠征を断念している町です、、!」
カンリーという男は続けた。
「正直、その者達の命が助かるとは思えません。しかし!国王の命令だと有れば、どうか我々もお力になりたい所存です。」
「ほう。どうしたいと言うんじゃ。」
国王が聞いた。
「、、私たちの団から1名、従騎士を冒険に同行させていただきたいのです、、!」
男は迫真の顔でそう言った。
そうして国王はこれを承諾し、カンリーという男は騎士団のサブ団長という立場で、この“パーエム”という従騎士を選んだのだった。
「やめましょうよ大男の旦那!こんなところで騒ぎを起こさないでくださいよぉ!」
そしてこのパーエムという男は今にも泣き出しそうな声で、大男ダンマを止めようとしていた。
どうなってしまうんだ、俺たちの冒険は。
俺は決意したことを後悔しそうになった。
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