第8話 思わぬ再会
俺は依然としてジワレ族とかいう民族の
ダンマという大男を追いかけていた。
もうすでに中央区のかなり外れまで来ている。
ここは、さっき“ドコッチ”という捜索魔法を使ったときに奴が通っていた狭い路地を抜けた右中通りだ。
周囲は宿屋や武器屋、民家などが両脇を固めている。
もう少しで西区に入るための通り門が見えてくるはずだが、、、ん?
なんの行列だ?
視界前方100mほどのところに、通り門のアーチと、その下をくぐってこちらに向かって進んでくる馬に乗ったやつらの長い列が、平民たちに囲まれているのが、ぼんやりとだが見えた。
というのも俺は目がかなり悪い。
夜な夜なお気に入りの作家のシリーズもののミステリ小説を読んでいるうちにかなり
悪化してしまったのだ。
さらに門に近づくにつれ、平民たちのその一行を歓迎するような声が大きく聞こえてきた。
「王国騎士団バンザーイ!」
「あの“夜襲竜スリープの群れ”を倒してくれたんだってな!よくやってくださった!」
「母親の仇を取ってくださるなんて、、。私のような大切な人を奪われた者たちにはこれ以上ない、せめてもの救いだわ、、、!」
平民の群衆の中の何人かの言葉が聞き取れた。
そして俺もその一行が王国騎士団であることが確認できた。鎧はかなり損傷しているように見える。
平民の者たちの会話を聞く限り、“夜襲竜”とやらの討伐から帰還したとみて間違いないだろう。
それにしてもかなりの数の群衆だ。
とてもすぐには前に進めそうになかった。
動こうにもどうしようもなく、俺は騎士団一向が通り過ぎるのをしばらく待つことにした。
おそらくダンマと“もう1人”、が待っているであろう関所にたどり着くまでの時間を頭で計算していたとき、俺は騎士団一向の先頭の人物を見ることができた。
うっ、、なんであいつが!
俺は動揺し、すぐにその場から去ろうと思った。
しかし既に俺の後ろにはさらに多くの群衆が集まってきていて身動きがとれない。
そして運悪く向こうも馬の上から群衆の中の俺を見つけたらしい。
「おお!おい!お前ピオじゃないか?!」
そいつが俺を視界にとらえ、元気そうに大きくこちらに手を振ってくる。
しまった、バレてしまった、、!
俺の周囲の群衆がざわつきはじめる。
「ん?ピオ?誰のこと?」
「騎士団の方に認知されているなんてどこの平民だ?」
「おい、ピオって奴はどこにいる!」
まずいまずいまずい。
こんなとこであいつと出くわしてしまうなんて、、!
「いやいやいや、間違いない!その目つき!屈むやうに背中の曲がった姿勢の悪さ!俺はピオほどのやつを見たことがない!」
そいつが“自身を先頭とした”一行から外れ、こちらに、馬に乗ったままゆっくり向かってくる。
俺の周囲の群衆は驚くような声をあげながらも自然と道を開けていく。
その道は俺に向かってどんどん広がっていった。そしてついに俺とそいつの間に大きな空間ができる。
「久しぶりだな、ピオ。やっぱりお前だった。相変わらずの目つきの悪さだな!」
無邪気そうな笑顔を浮かべ、そいつは俺に向かってそう言った。
俺はそいつと、かつて、親友だった。
そう、
士官学校時代にはすでに“100年に一度の剣術の天才”と称さていて、
王国騎士団史上初ともいわれる
“入団同時昇格”によって支部団長になり、
その後数多くの功績を上げ、
仲間、国民問わず人々の信頼を得ているという男、ジャン・サンクスと。
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