第2話 国王を探せ


俺は急いで国王のいる部屋を探すことにした。


広間を抜け出すと長い廊下が左右に広がっている。

さっき兵士たちに連れられて来たのはあっちからだから、、


こっちか!


俺は城の内部を目指し、

奥の見えないほど長い廊下の左に駆け出した。


はぁ、はぁ


すぐ息が切れる。

それもそのはず、家の外に出たのは実に3ヶ月ぶりだった。


運動など全くもってしておらず、

すぐに体力がなくなる。


はぁ、はぁ。

引きこもりに優しくない設計だな、この城。


するとその時、後ろからなにやら叫ぶ男の声がした。


「うぉぉぉい、まてぇぇぇいっ!」


何事かと振り返ると、大きな体格の男がこちらに向かって全速力で走って来ているのが見えた。


なんだあいつ、もしかしてあいつも聞いてたのか!子供達の話を!


「ダンジョンの在処をっ!ハァハァ、

国王に伝えに行く気だなっ!ハァ、貴様もっ!」


ちっ、やっぱりあいつも聞いていたのか!


まぁしかし、子供達には悪いが、ダンジョンの場所はもう分かってる。


王都の近くの、魔気の少ない森なんて、“ウグイの森”以外ないからな。

たぶん俺の後ろを追いかけてくるあいつもそれには気付いているだろう。


長い廊下の突き当たりが見えて来たところだった。


一瞬辺りが暗くなったかと思うと次の瞬間、大きな男が自分の前に、それも頭の上から立ちはだかった。


どうやら俺を頭から飛び越えたらしい。

なんて身体能力なんだよ、こいつ。


「ハァハァ、珍しく子供がいるからよぉ、

怪しいと思ってたら、やっぱりあいつら“王国復活の鍵”を持ってたんだな!悪いがダンジョンのことは俺の手柄にさせてもらうっ!」


そういうと男は今度は廊下の突き当たりの

左に向きを変え、再び全速力で走り出そうとした。


くそっ、させるかよっ!



“スロールドッ!!”



大男の大きく踏み出した足が突如として

鈍り、そのまま前のめりになり顔からぶっこけた。


「ぐはぁっ!何をした貴様っ!」


まだ使えた。15年ぶりに使う魔法だった。

よくおにごっこの時に使って、みんなに怒られてたっけな。


ついつい昔の懐かしい記憶が蘇りそうになる。


「くそっ!あ、足がうまく動かせんっ!」


男は俺のかけた魔法のせいで足の動きが

スローになってしまっていた。


今のうちだ!


左に曲がったその廊下の先には両開きの豪華な扉が見えた。


あそこに違いない!


俺はすでにバテバテになった体をなんとか

動かし、最後の力を振り絞ってその扉に向かって走った。


ハァ、ハァ。


もう少し。


ハァ、ハァ、


もう少しで、、!


「うぉぉおぉぉおぉ!」


扉までは約10メートル。後ろを振り返ると

あの大男が起き上がり、こちらに全速力で走って来ていた。


もう解けたのか!

でも、扉はもうそこだっ!

あと少し、あと少しだ!


「まてぇぇぇぇぇ」


なんというスピード。

さっきのが全速力なんて俺は完全に見誤っていた。


扉まではあと5メートル。

その大男はすぐ後ろまで来ているのが声でわかった。


あと少し!もう少しだ!俺が先にっ、、


国王に会うんだっ!!


俺がぶつかる勢いで、表開きの大きなその扉に手をかけたのと、男が俺共々扉にタックルするのは同時だった。


ズガァァン!!


扉をぶち破った俺たちはそのまま部屋の床に倒れ込んでいた。


「な、何だ貴様らはっ!」


兵士の声だろう。それ以外にもそれなりの人数が俺たちの乱入に驚き、困惑の声を上げたのが見ずともわかった。


大男が覆いかぶさるように俺の上に倒れていて顔を上げようにも上げられない。

重すぎる。すでに息が止まりそうになっている。

すると、


「ごほっ!ごほごほっ!」

「大丈夫ですか国王様!国王様!気を確かに!」

「まずい、顔色がかなり悪くなってきている」


国王?国王って言ったよな?


どうやら俺が入った部屋は大当たりだったようだ。


なんとか大男を押しのけ、俺は上半身を起こす。


「なんという無礼者達だ。国王の命の灯火が

“消えかけている”とも知らずに、、!」


国王が、、死にかけている、、?!


















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