第3話 彼女が眼鏡を外したら……
俺たちは街の外れに空き家を見つけた。
ボロボロで誰も使っていない納屋だ。
そこに
日が暮れる前にできたのは助かった。
「良かったぁ……。これで雨風は防げますし。ふふふ、なんとかなりそうですよね」
「うん」
お腹は彼女の
寝床も確保できた。
安心したら、急に申し訳ない気持ちが込み上げてきたな。
「なんか、ごめんね」
「どうかしたんですか?」
「……いや。俺がもっと強かったらさ。お金も取られなかったしさ。君を守ることができた」
彼女は首を振った。
「
あんなのは大したことじゃないよ。
「……それに。私をパーティーに誘ってくれました」
それは俺にとってメリットがあったからだ。
彼女はポロポロと涙を流す。
「え!? ちょ、倉木さん!?」
「私。異世界に来て、とても不安だったんです。与えられた
しかし、助けられているのは俺の方なんだがな……。
「私、ブスだし、こんな私に声をかけてくれる男の子なんていないから……ぐすん」
そういうと、眼鏡を外して涙を拭いた。
その瞬間。隠されていた瞳がしっかりと見える。
え?
な、なんだとぉおおお!?
キラキラキラーーーーン!!
か、彼女が輝いて見える。
よく見れば彼女……。
大きな瞳。サラサラの銀髪。雪のように白い肌。
よくよく見ればプロポーションだって、凄まじく、良い。
アイドル並みの美貌だ。
倉木さんってこんなに美少女だったのか……。
「
「あ、いや」
彼女は自分が美少女だということに気がついていないのか。
「こんな冴えない女を仲間にしてくれてありがとうございます」
こ、こんな美少女とこれから過ごすのか……。
なんか、すごくドキドキしてきたな。
藁の上で寝る。
彼女の寝顔は凄まじく可愛くて、目を逸らすのに苦労した。
次の日。
俺たちは王都のギルドに足を運んだ。
まぁ、こういう世界に来たら、ギルドで仕事をもらうのが基本だからな。
そこで、俺たちはG級冒険者になった。
G級とは最底辺の初級レベル。まぁ、駆け出しの冒険者だから当然だろう。
簡単な依頼を受けて金貨を貰う。
今は無一文だからな。
なんとか、稼がなくちゃ。
【初級クエスト。スライム狩り】
その条件は5匹のスライムを狩ること。
スライムとはゼリー状のモンスターだった。
大きさは30センチくらい。この辺では最弱らしい。
武器なんか買えないから、その辺で拾った木の枝で対抗する。
「はわわわ。
初めて見る異界の生物に驚きを隠せない。
最弱とはいえ、体当たり攻撃は強烈だ。
「倉木さん、危ない!」
彼女を庇うと、俺の背中にスライムの体がヒットする。
「ぐええッ!!」
「きゃああ、
俺の傷は彼女に任すとしよう。
「痛てて……」
「これ食べてください」
倉木さんは早速薬草サラダを作ってくれた。
よし。モグモグ。
相変わらず美味い!
「どうしましょうか? 今日はもうやめますか?」
「何言ってんのさ」
勝負はこれからだ。
俺は強くなりたいんだ。
「倉木さんは薬草料理を準備しててよ。俺がスライムを倒すからさ」
役割分担は功を奏した。
「うぉりゃああああ!!」
木の枝でスライムを倒す。
日が暮れる頃には6匹のスライムを倒すことに成功した。
「すごいです!!」
はーー。なんとか勝てたぁ……。
5匹はその日の内にギルドで換金。まぁ、微々たるお金だったけれど、初めての報酬は嬉しいよな。
俺たちは大喜び。
んで、残ったスライムは倉木さんの
「スライムのステーキです」
餅のようにトロリとして美味い!
【攻撃+2 体力+1 防御+1 が、それぞれ上がりました】
俺の
レベルは上がっていないけど、ステータスは上がるからな。
これで明日はもっと楽になるだろう。
2日目もスライムを狩る。
「うん」
楽だ。
昨日よりも簡単に倒せたぞ。
10匹目を倒したところでレベルが上がる。
【レベルが1から2に上がりました】
全体のステータスが底上げされる。
「やっほーー!」
「あは! やりましたね
余ったスライムは再び、彼女の
「スライム団子に、スライムのミートボール。スライムたこ焼きです!」
どれも美味い。
勿論、食べると俺の
そんなこんなで1週間が経った。
お金は随分と溜まった。
俺たちは武器屋を回って装備を整えることにした。
いつまでも学生服じゃ問題あるからな。
「ど、どうでしょうか
異界の装備を
動きやすさ重視ということでニーハイソックスにミニスカート。
もうコスプレだよね。めちゃくちゃ可愛い。
あれ?
「眼鏡は?」
「不思議なんですけどね……。眼鏡が無くても見えるんです」
薬草料理の効果かもしれないな。
彼女の視力は随分と回復しているようだ。
しかし、弊害はあった。
「うう。
ははは……。
街を歩けば、「いいなぁ」「可愛いなぁ」「天使かよ」「羨ましい……」という声が聞こえてきた。
「わ、私……。誰かに恨まれてるんでしょうか? うう」
と、俺の方に身を寄せる。
やっぱり、自分が美少女ってことには気づいていないんだな。
2週間が経つ。
収入は安定。住む場所は宿屋になった。
「あは! ベッドがフカフカです!」
食事だってグレードアップ。外食をしてしまう。異世界の食事はどれも変わっていた。
彼女はパフェを食べながら上機嫌だ。
「うん。美味しいです。この味を覚えればスライムで作れるかもしれません」
「ははは。スライムパフェか。面白いね」
「じぃーー。
「あ、食べる?」
「いいですね! じゃあ食べ合いっこしましょうか。はい」
そう言ってスプーンをこちらに向けた。
「え?」
これを食べろってこと?
じゃあ、
「倉木さんに俺が食べさせるの?」
「……嫌?」
「い、嫌じゃないけどさ」
恥ずかしいよな。
彼女は顔を赤らめる。
「……あと、思ったんですけどね。もう苗字は卒業して欲しいかなって……。名前で呼んで欲しいです。ダメ……かな?」
確かに。
ちょっとよそよそしいか。
俺たちは仲間だもんな。
「わかった。じゃあ
「あは! じゃあ
「う、うん」
俺たちは自分のスプーンをお互いの口へと運んだ。
このスプーンは
これって関節キ……。
うう、考えないでおこう。
それから更に日が経った。
俺のステータスは順調に上昇。
レベルは20まで上がっていた。
しかも、成長はそれだけじゃなかった。
スライムの
毒耐性
これは
同じモンスターを一定量食べると、そのモンスターの持つ
「はい。できました! スライムのお刺身です」
「うん! 美味い!」
料理は美味いし最高だよな。
【
ほぉ。
これで5属性の耐性
そうして1ヶ月が経った。
俺たちは勇者認定を受けるために王城へと向かった。
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