第14話 断髪式の衝撃

勇一の丸刈りの注文に、店主は一瞬の迷いも見せずに、すぐに勇一を椅子に案内した。


勇一が椅子に座ると、店主は彼の肩に大きなカットクロスを掛けた。その布は、勇一にとってまるで牢獄のように感じられた。なぜなら、次にこの布を脱いで彼が再び席を立つとき、自分の大切な髪の毛が全部なくなっているということに気づいたからだ。


今、ここで丸刈りになる。彼の心はその事実を静かに受け入れていた。


店主は、カットクロスを整えながら勇一に聞いた。「長さはどうするかい? 西中の決まりは3ミリだけど…、初めてだから、少し長めの6ミリか、9ミリにしておこうか」


しかし勇一は思い切った決断を下す。「3ミリでお願いします」と。


店主はその言葉に一瞬、驚きの表情を見せた。初めての丸刈りに3ミリはかなり短い。しかし勇一は、「どうせ丸刈りなんだ、3ミリも6ミリも変わらない」と覚悟を決めていた。その視線には、揺るぎない決意が宿っていた。


「あっはは、それは勇ましいな。よし、3ミリで行こうか。でも、坊主にすると意外と風が冷たいからな。今日の帰りに帽子でも買いに行くんだぞ」と、店主はいつもの冗談っぽい口調で言いながら、勇一の頭をポンポンと叩いた。


店主はバリカンを手に取ると、鏡越しに勇一の目を見て、改まった口調で言った。「じゃあ、行くよ。いいんだね?」勇一は深呼吸をして、「はい、お願いします」と答え、ゆっくりと頷いた。そして、これからの自分の姿を思い浮かべながら、ぎゅっと目をつぶった。


それは一瞬であった。バリカンの冷たい金属の刃が初めて額に触れ、その振動がブーンという音を立てながら勇一の頭皮を頂上まで駆け上がると、刈り取られた前髪が落ちていく感触が勇一のまぶたを伝う。やがて勇一がゆっくり目を開けると、鏡には、額の真ん中からつむじまでの髪が剃られ、真っ青な頭皮が完全に露出した自分の姿が映っていた。


「そう、これで良かったんだ」。勇一は自分に言い聞かせながら、残りの髪が切り落とされるのを待った。


最初の一刈りからわずか数秒、バリカンが彼の前頭部をもう3往復すると、勇一の顔からはあっという間に髪がなくなっていた。彼は鏡に映る自分の姿と、クロスに落ちていく大量の髪の束に交互に目をやりながら、次第にその頭の形が露わになるのを見ていた。それはまるで、自分のプライドがひとつひとつ剥がれ落ちていくような感覚だった。


襟足を刈る際、店主の左手がふと、勇一の髪の毛がなくなった前頭部に直接触れた。その、手のぬくもりが頭皮から直接伝わってくる感覚は、勇一にとって新鮮な驚きだった。その感触はなんとも言えず奇妙で、自分の頭がこれまで経験したことのない新たな刺激に震えているように感じた。そして彼はなぜか、自分が急に裸になったような緊張感を覚えた。


やがて全ての髪が刈り落とされると、店主は刈り残しがないようにと、熱を帯び始めたバリカンを、再度何度も頭に這わせる。その行為は、一通り髪を刈り終わって「やっと終わった…」と思っていた勇一の安堵を打ち砕き、まるで自分の頭がおもちゃにされているかのような、屈辱的な感情を彼の心に植え付けた。

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