第1話

「真実。学校行こうよ」


そう言って、僕は隣の家 遠海家へ来ていた。


いつもと同じ時間。


僕はいつも迎えに来ている。


やがて、玄関のドアが開き無表情で長い黒髪の少女が出てきた。


学校指定のセーラー服 白を基調としていて、カラーがえんじ色でスカートも同色。


「おはよう。真実」


「ん」


これが一応挨拶。


中学からだから4年近く。


昔は、しっかり挨拶を返してくれてたんだけどな。


「真実、じゃあ学校いこっか」


「勝手にすれば」


よし、勝手にしよう。


僕は意を決して真実の右手を握って歩き出す。


決して強い力でと言うわけではない。


彼女の手は、華奢で力なんて入れたら折れてしまいそう。


真実は、僕の手を振りほどこうとはせず逆に力を込めてくる。


嫌じゃないんだな、よかった。


よく見るとほんのり頬が赤い気がする。


気のせいじゃないよな。


僕、近江 和弥の考えた彼女の塩対応の塩分過多を抑える方法。


それは、真実を甘やかすことだ。


無表情のなかにもたまに見られる反応があるから。

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