第17話秘密?それとも黒歴史?

ダンジョンに入る前に改めて、今回の作戦を振り返ろう。

まずは全線と言う名の囮役は、キール王子に持ってきて貰った。

王家の宝の一つである、装備中1度だけ致命傷を無かった事にしてくれる指輪、身代わりの指輪を装備した俺と、スキル使用中5秒間の無敵時間が生まれるスキル王家の盾を使うキール王子の2人で、もし敵と接敵した際の時間稼ぎをする。


そしてこの作戦の要のユウリは索敵担当だ。

俺達は基本魔物1匹とでも接敵したらその時点でほぼほぼゲームオーバーなので、接敵しそうになったら逃げるか隠れなければならず、その為の索敵をするのがユウリの役割で、シャーロットはもしもの時の為のアイテム回収要員だ。


実はみんな驚くだろうが、今日ここに集まっているメンバーの中でシャロが1人ぶっちぎりで足が早く、更にはシャロはうちの家系なのに何故か魔力量が多く、その全てを風魔法に使い走った結果、なんかバグみたいな速度が出た。


そんな訳でシャロは俺達が接敵した際に、1人宝箱のある部屋まで走ってもらう事になる。


「本当に大丈夫かシャロ?怖く無いか?」

「お兄様任せてください!絶対にシャロがアイテムを回収してきます!」

「シャロ!」

「お兄様!」


そんな事を言いながら俺達は抱き合った。


「はいはい、そう言うのもういいからさっさと向かうぞ。攻略しないといけないダンジョンここだけじゃ無いんだろ?」

「それもそうだな。改めましてみんなダンジョン攻略頑張るぞ!」

「「「「おー!」」」」


そんな訳で潜入した骸の墳墓は、地面や壁天井に至るまでが苔むした石レンガで出来ており、所々で隙間風が不気味な音を立てて、こちらを脅かしてくる。


「何だかこのダンジョンは全体的にジメジメしてませんか?」

「そうだな……それに変な匂いもする」

「ああ、それは多分ここが墓場だからじゃ無いかな?それとキール王子の言う変な匂いってのは多分死体からする腐敗臭じゃないかな?嗅いだ事ないから知らないけど」


その発言を聞くと3人は顔色を悪くした。


「あ、ごめんこれ言わない方が良かったかんじ?」

「そうだな……」

「ならアレも言わない方がいいかな?」

「アレ?」


そうキール王子が聞き返した所で、俺達は左の通路に入ったそこでユウリが大声で叫んだ。


「ひ、ひ、人の死体!」

「何!」

「ああ、そうそうこれこれ昨日入った時に見つけてたんだよね」


そんな訳で初めて人の死体を見た、ユウリとシャーロットは2人で抱き合い大声で悲鳴を上げ、キールは何とか叫ばなかったものの吐きそうになり、口元を手で押さえた。


そしてその声を聞きつけてやって来たスケルトンに俺たちは全員まとめて倒された。


「はぁはぁはぁはぁ……何なんだよあれは」

「お兄様はあんなものを見ても平気なのですか?」

「いや俺は一応昨日見たし、それにアレ別に死体でも何でもないからな」

「「「は?」」」


アクトの言った事に驚いた3人は目を大きく開いた。


「アレが死体では無いとはどう言う事ですかアクト様?私からするとアレは紛れも無く死体に見えたのですが……」

「いや、アレ全然死体じゃなぞ?アレは墳墓の壁の一部で人間の形をした、ただの石だ。」

「「「石!?」」」

「だ、だがそれを何故お前は知っているんだアクト?」


そんなの普通に前世知識だけど、そんな事言っても通じる訳ないよな……


そんなこんなで皆んなにどう説明しようかと、悩んでいるとシャーロットが口を開いた。


「お兄様!」

「ん?どうしたシャロ?」

「シャロはお兄様が周りの人達に、自分が努力している姿を見せるのを嫌っているのは知っています。キール王子は置いておいて、婚約者であるユウリちゃんには教えてもいいんじゃないですか?」

「ん?ああ、そうだな……」


何を?え?待ってくれ俺ってシャロからそんな風に見られてたのか?

そら魔法の練習は周りから見られない様に裏庭でやってるけど、アレは別に誰かに見せたくないからじゃなくて、普通に空いてる場所があそこだったから何だけど……


「お兄様から許可を貰ったのでシャロがお話ししますが、お兄様はあまりこの事を広めたくないと思っているので、他の人に言いふらさないでください」

「わかった約束しよう」

「私も約束します」

「ここに居る皆様ならシャロ達がホワイト家が、家系的に魔法が殆ど使えないのは知ってますよね?」

「ああ」

「その事にお兄様は誰から教わるでも無く、小さい頃に自分で気づき、何とかしようとよくお父様の書斎に入ってはそこにある書物を読み漁っていたのです。そしてお兄様が、7歳の頃にキール王子は行った事がありますよね?うちの中庭でお兄様は1人魔法の練習をし始めたのです。ですが一般的に魔法が使える様になるのは12歳頃から、シャロ達の家系なら魔法を使える様になるまではもっと遅くなるのです。それを聞いた時のお兄様は悔しさから涙を、流しそれ以降中庭には行かなくなり、その代わりに今まで以上に知識を得る事に集中し始めたのです。」

「なるほどな……それならば納得だな。アクトは普段はふざけた様な奴だが、偶に俺と同じ歳とは思えない思考をする時があるとは思っていたが、そう言う事だったのか」

「アクト様……」


………………やめ…やめ……やめてくれ!

シャロすまん!今めちゃくちゃ美談かの様に話してくれた奴な、アレ実は美談でも何でもなくてただの黒歴史だから!

魔法が使える様になるのが12歳からって聞いて泣いた?

アレは単に恥ずかしさのあまり泣いちゃっただけだよ!

よく本を読んでいた?

暇だったからね……


と言うか2人も納得しないでくれる?恥ずかしいんだけど?

やめてよ!

お前ら3人俺の黒歴史に涙すんじゃねぇ!


※因みにお兄様ことアクトくんは、ホワイト家の中でも魔力量が極端に少なく、実は生まれた頃は一生魔法が使えないと思われていたんだよ!

そしてそのアクトの分の魔力が全部シャーロットの方に行ったから、シャーロットの魔力量はめっちゃ多いよ!

そんなシャロちゃん実はユウリちゃんより早い、6歳の段階で魔法使える様になってました!

けど自分のせいで大好きなお兄様が魔法を使えない事を知っちゃったから、お兄様が使える様になる日まで使えないって嘘をついてたよ!

きゃー!何て兄思いでいい子なんでしょう!

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