第23話 実行委員は


 お祭りに行った後の、部活練習日。


 いつものように体育館で練習し終え、帰り支度をして部室に行こうとしていると、ニヤケ顔の西野に話しかけられる。


「先日はお楽しみでしたね?」

「は?」

「ふふふ…」


 ま、まさか……


「まったくもう。こっちが照れますよ?」


 なんだと……見られた…のか?


 楽しげに微笑む西野に、俺が何も言えず狼狽えていると、


「あ、たぶん気付いたの私だけだと思うから大丈夫ですよ。でも、今度からは気を付けて下さいね?」

「あ、はい……」


 すみません…


「ところで、私、神代キャプテンの事は、やっぱり部活の中でのいい先輩として接していくことにします」

「え?」


 え?急にどうした?


「神代先輩は優しいしカッコいいです。もちろん好きです。でも、私には無理だなって。やっぱり私のこと、女の子として見てもらえる自信がないなーって」

「…そっか」

「たぶん、私以外の女子もこういう風に思っちゃう子が多いんでしょうね。あ、でも、嫌いになったとかじゃないですから」

「ああ、もちろん分かってるよ」

「まだ中学入ったばかりだし、まだまだいろんな人と会えるわけだし、私ももっと可愛くなって告られるようになってやります!」


 こいつのドヤ顔で胸を張る姿ももう見慣れたな。いい子なのは間違いないし、いい男が現れるといいなと本当に思う。


「でも、先輩になんでこんなにベラベラと話しちゃってるんでしょうね。謎です」

「はは、確かにな」

「東雲先輩は見た目普通なのに、なんか妙に大人びてるんですよ」

「は?」

「うん。なんででしょうね。なんか親戚のおじさん的な?」


 こらこら。誰かと同じようなこと言ってるんじゃない。でも、確かに中身はおじさんだからなんとも…




 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 無事、夏休みも終わり二学期へ。


 新学期恒例の席替えや、なんやかんやも無事終わり、廊下側から2列目の後ろから4番目という、可もなく不可もなくな普通の席をゲットした俺。


 実際これまで、俺は総司のようなクラスの中心になるようなキャラでも、立ち位置でもなかった。

 基本的に地味な俺は、前世でも今回も波風立てないよう、目立たないよう振舞ってきた。その方が、クラスで変に仕事を押し付けられないで済むし、楽だからそれがいいと思ってた。


 え?ずるい?いや、みんなそうでしょ。


 涼花と付き合うようになり、多少目立つことはあっても、基本的にはクラスの中の、その他大勢の一人だと俺は思っていた。


 そう思っていたのだが、今回はどうやら違ったらしい。



 一番の理由はテストの成績だったようだ。

 1年の時までは中の上くらいの成績だった俺が、2年生になって急に一桁台となった。

 これはもちろん俺がタイムリープしたおかげで、前世の記憶も残っているからこそなのだが、そんなことは誰も知らないわけで。


 あともう一つ。これは先日西野にも言われたことでもあるんだけど、雰囲気が妙に大人っぽいらしい。

 涼花にも「友達がよく「東雲くんって大人っぽいよね」って言うんだけど」と言われる。

 そんな時、彼女は決まって頬を少し膨らませていたりして、「ああ、可愛いなあ」なんて思ったりするけど、それはまあ今はどうでもいい。



 というわけで、


「体育祭の実行委員、クラス役員は東雲くんがいいと思います」



 なんでそうなる……





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